ネパール評論

ネパール研究会

タメルの中国書店、尖閣特集号平積み特売

タメル繁華街のど真ん中に、数年前、中国書店が開店した。以前にも紹介したが、不思議な書店で、店員さんはネパール人だが、商売気はまるでない。かつての中国公営売店そっくりの雰囲気。

そのタメルの中国書店に、11月中旬に行ってみたら、釣魚島(魚釣島)問題を特集した『Beijing Review(北京週報)』が入口の棚に大量に平積みされていた。8月30日号だから、かなり前のものだが、特別扱いである。一冊購入した。

釣魚島特集を読んでみると、思いの外、記事は「冷静」であり論理的だ。中国以外の人々でも、この記事を読めば、中国の主張の方に理があると感じるかもしれない。それほど一見「客観的」に記述されている。

しかし、それはそれとして、この『北京週報』が外人観光客でごった返すタメルのど真ん中の書店に平積みされ販売されているのは、政治的に見て、なかなか興味深い事実である。タメル滞在外人は、日本人を除き、たいてい暇人である。暇をもてあましている。その外人が、日中領土紛争の表紙につられ、この週刊誌を買い、暇つぶしに読む可能性は大いにある。そして、読めば、その多くが、大日本帝国のおぞましい中国侵略を思い起こし、中国の釣魚島返還要求にも共感するであろう。

中国は超大国であり、情報戦略にも長けている。対照的に、 日本の国粋主義者らは昔も今も内弁慶であり、国外で日本への支持を広げる地道な努力をしようともしないし、できもしない。ただただ国内向けに勇ましいことを言いつのるのみ。自家中毒だ。そして、彼らが 内弁慶国粋主義に傾けば傾くほど、中国や韓国、あるいはロシアにも、世界の同情は向かう。

国内にむけ「固有の領土」を叫ぶ暇があったら、たとえばネパールの書店に商売抜きで英語版日本週刊誌でも並べる努力をしてみてはいかがであろうか。ただし、記事は少なくとも『北京週報』レベルの水準のものでなければ、逆効果であろうが。

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 ■8月30日号表紙/特集内掲載地図(12頁)

中国書店

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/12/11 @ 23:28

カテゴリー: 外交, 中国

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