Archive for 3月 2014
未完議会で重要審議見切り発車
第2次制憲議会は,まだ内閣指名26議席が決まっていない。各種集団が包摂参加を要求し圧力をかけているが,主要政党は,談合により,とりあえず下記の配分を決めてしまったらしい。第4党の国民民主党(RPP)は排除されている。
・コングレス党(NC)——— 9
・統一共産党(OPN-UML)–7
・マオイスト(UCPN-M)—– 5
・その他———————- 5
しかも,制憲議会は厳密にはまだ未成立にもかかわらず,主要3党は,見切り発車で重要事項を次々と決定している。
・第1次制憲議会の審議結果の継承
・憲法起草委員会(68議員)など,各種委員会の構成・発足
・高等政治委員会(HLPC)の再開
■LGBT指名議席を要求しているBLue Diamond Society
谷川昌幸(C)
後進国への後退とシャネル広告
シャネルが,朝日新聞朝刊(3月29日)に,全面広告を6頁(!!)も出している。日本人を見くびり,自然や人類をバカにした,許されざる所業だ。
後進国が「途上国」と改称される以前の後進国にいって真っ先に驚いたのが,高級ブランド店の超豪華仕様。後進国住民の大半はその日暮らしさえままならない惨状なのに,ごくわずかの特権階級相手に,目玉の飛び出そうな高価な贅沢品を売っていた。最近はめでたく「途上国」に発展したので,以前ほど酷くはなくなったが,それでも庶民生活と高級ブランド店との落差は大きい。
高級ブランド店は,少数の特権階級に寄生し,格差拡大とともに厚かましくも派手になり,格差を商品化し,繁栄する。
シャネルが高級紙に6頁もの全面広告を出したのは,日本が後進国へと後退し,宿主が生まれ生長し始めたからだ。特権階級は,むろん大多数の庶民を搾取して太っていく。日本は,搾取が構造化された後進国型階級社会に転落し始めたのだ。マルクス万歳!
そもそも6頁全面広告は,日本人見くびり以前に,自然浪費だ。この空疎な広告のため,山や森の木が何本切り倒されたのか? 石油が何ガロン燃やされたのか? 川の水や地下水が何万KL汚染されたのか? 反自然的・反人類的と断罪せざるをえない。
こんな反倫理的・反社会的広告を掲載した朝日も,むろん同罪だ。高級紙なら,貧すれども鈍せず,高級紙としての品格を堅持すべきだろう。
[参照]シャネルの新聞広告
谷川昌幸(C)
英語帝国主義にひれ伏す公立学校
先住民族の尊厳や母語教育の権利を高らかに宣言しているネパールだが,建て前と本音は,教育においても別らしい。私立学校に続き公立学校も,母語どころかネパール語さえ放棄し,続々と英語帝国主義の軍門に降りつつある。そうした学校では,生徒は英語で挨拶し,歌い,勉強する。家でも英語で話す。
「英語が公立学校を魅了している」(Republica, 25 Mar)によれば,チトワンのある公立小中学校では,全教科を英語で教え始めた。
「3年生クラス成績3番のサンジタは,良い本を読むには英語学習は必須だと確信している。友人のカマルも同じで,英語が分かれば多くのことを学ぶことができるし,旅行者とも話すことができる,と考えている。『姉は家でも英語で話してくれるので,とても助かる』という。」
「政府は,ネパール語記述の教科書を英訳し始めた。学校は,これらの英訳された教科書を使い,授業をしている。」
ネパールは,教育でも,日本のはるか先を行っている。ネパールの教育は日本のお手本(格差大だが)。文科省はネパールに視察団を送り,謙虚に教えを請い,最先端の英語教育を学ぶべきだろう。
[参照]水村美苗『日本語が亡びるとき』
谷川昌幸(C)
チベット難民に警告,ゴータム内相
ゴータム副首相兼内相は3月22日(土),「全国人権基金(HURFON)」年次大会において,チベット難民に対し,反中国活動をしないよう強く警告した(Nepalnews, 22 Mar)。
この3月10日は「チベット蜂起」55周年記念日であった。ネパール警察は,約900人の制服・私服警官を動員し,ボダナートなど重点地区を中心に警戒してきた。焼身抗議に備え,毛布と消化器を準備しているという。
それでも,3月10日には,小規模ながら,「自由チベット」デモが行われた。拘束されたのは,中国大使館付近5人,スワヤンブー付近4人,ポカラ1人など,10数人。チベット難民の抗議活動は,例年よりも少なかった(Republica & Ekantipur, 10 Mar)。
■中ネ航空協定改定:カトマンズ2014年2月24日(中国大使館HP)
谷川昌幸(C)
韓国取材班,罰金支払い釈放
パシュパテ寺院地区を撮影し逮捕されていた韓国TV取材班の韓国人4人とネパール人1人が,3月21日,罰金1人9500ルピーを支払い,釈放された。
韓国TV取材班は,リモコン小型ヘリを使い,ポカラやビルガンジを空撮し,最後にパシュパテ寺院の空撮をしたらしい。容疑は,公安法(Public Offense Act)違反であり,2年以下の禁固または1万ルピー以下の罰金。
当初,彼らの容疑は,空軍施設の無断撮影であり,これが認定されれば,公安法違反に留まらず,重大な事態となる危険性があった。韓国大使館は,おそらくこれを危惧したからであろうが,迅速な手を打ったようだ。その結果,5人は,パシュパテ寺院聖域の無許可撮影の罪だけを認定され,罰金の支払いで釈放された。
今回は大事に至ることなく決着してよかったが,ネパールの軍施設は人民戦争により急増しており,また中印関係も緊張してきた。ネパールは,観光客にとっても,いまやかなり危険な国だといわざるをえない。
*Himalayan, 21 Mar; Yonhap News, 20 Mar; 新華社,3月20日
谷川昌幸(C)
軍施設撮影で韓国人逮捕
カトマンズの軍施設撮影容疑で,3月18日,韓国人4人が逮捕された。
逮捕されたのは韓国放送局のスタッフ4人とネパール人ガイド1人。パシュパティ寺院を無人ヘリで空撮していた。この寺院はトリブバン国際空港の西隣にあり,空港内空軍施設に近接している。そのため,空撮に軍施設が写ってしまったらしい。
最近,ネパールは善良な観光客にとって,ますます危険な国になってきた。カトマンズのど真ん中,アメリカンクラブ付近のことについては,何度か報告した。今度は,空港やパシュパティ寺院だ。
それにしても,この情報化時代,このような秘密主義はアナクロではないか。たとえば,グーグルでも,トリブバン空港内軍施設はよく見える。隠しようもない。それでも隠そうとするのが,軍の抜きがたい習性。軍事機密,防衛秘密,特定秘密などの恐ろしさは,そこにある。
これからネパールに行く人には,カメラにくれぐれもご用心いただきたい。最近のカメラは高性能だ。私の初心者用ズーム(55~250mm)付カメラでも,スワヤンブーあたりから市内の軍関係施設を撮ることは十分に可能だ。一つ上の400~800mmレンズをつけ,市内の高台かビル上層階に行けば,どの軍施設であれ,丸見えだろう。
ネパールに行って無邪気にバシャバシャ写真を撮っていると,いつしょっ引かれるか分からない。たまたま軍施設が写っていようものなら,面倒なことになる。桑原くわばら。
■パシュパティ寺院(P)とトリブバン空港(TIA)/空港内軍施設付近(Google)
谷川昌幸(C)
ガソリン値上げ,1リットル140ルピー
牛乳に続き,ガソリンも値上げされた。ネパール石油公社(NOC)によれば,以下の通り。
▼カトマンズ価格
・ガソリン: 130ルピー → 140ルピー/L
・ディーゼル・灯油: 103ルピー →109ルピー/L
・LPガス: 1470ルピー/ボンベ(価格据え置き)
▼日本の価格
・ガソリン: 148~160円/L
・ディーゼル: 132~148円/L
・灯油: 98~110円/L
■石油類価格推移(Economic Survey 2011/12)/NOCロゴ/NOC出資比率(政府98%)
先にも述べたように,ガソリンや灯油の価格は,日本とほぼ同等。それでも,NOCは,価格補填のため,1億7千万ルピー/月の赤字となっている。価格据え置きのLPガスは,ボンベ1本当たり860ルピーの赤字という。
こんなことは,いつまでも続かない。LPガスは,家庭用と業務用のボンベを色分けし,業務用は市場価格とする方針のようだが,価格統制は複雑となりがちで,公正な運用は難しいのではないか。
この値上げに対しては,ANNISU-Uなど学生団体が,さっそく反対デモを始めたが,NOCの赤字は,結局,誰かが負担せざるをえないことは分かっているらしく,報道の限りでは,抗議の矛先は値上げそのものというよりは,むしろNOCの横流しなど腐敗に向けられているようだ。ネパールの学生も,自由市場主義の洗礼を受け,ずいぶん大人になったものだ。
(Republica, Ekantipur & Nepalnews, 14 Mar)
谷川昌幸(C)
牛乳値上げ,1リットル68ルピー
ネパールで牛乳がまた値上げされる。市場占有率40%の国有企業「乳業開発公社(Dairy Development Co.)」が発表した。1割以上の大幅値上げ(以下,1リットル当たり価格)。
・非スキム牛乳:60ルピー → 68ルピー
・スキム牛乳: 50ルピー → 56ルピー
*農家からの買い取り価格:35~38ルピー (Republica, 12 Mar)
値上げ理由は,(1)生産・加工・流通の経費増大。(2)供給不足(ekantipur, 27 Jan)。
・牛乳需要:80万トン/日
・国内生産:60万トン/日
・輸 入:6万トン/日(インドより輸入,ネパール産より高価)
牛乳1リットル68ルピー(約70円)は,かなり高い。アメリカでは約100円。保護政策により割高の日本でも,ほんの数ヶ月前までは,140~200円であった。アベノミックス物価上昇により,現在は,180~270円。ネパールの68ルピーは,酪農国にしては,高いといわざるをえない。
これが深刻なのは,このインフレが今後も進行しそうなこと。牛乳需要は,世界的に,特に中国で増大しており,しかもグローバル化(世界市場化)により,それは直接ネパール国内市場にも影響を与える。ネパール国内での需要増もあって,牛乳価格の値上がりは避けられないだろう。
日本でも,生活必需品価格は,食糧を中心に急騰している。「狂乱物価」の前兆といっても過言ではない。私のような年金生活者や非正規労働者など,インフレ弱者は,お先真っ暗,生活を切り詰める以外に対策はない。
日本にしてそうだとするなら,ネパール,特に現金収入の少ない地方は,比較にならないほど深刻だ。自由市場社会化は,結局,世界中の相対的弱者から自由に搾取するための,強国の強者の巧妙な奸計といわざるをえない。
谷川昌幸(C)
京都の米軍基地(33):ヤラセ環境影響調査と市長の無責任
防衛省が2月25日,Xバンドレーダー配備のための環境影響調査を開始した。電波(電磁波),騒音,排水の3項目。
この調査は,いうまでもなくヤラセ。そもそもレーダーの出力が「特別防衛秘密」ないし「特定秘密」だから,防衛省調査員らには,それはおそらく知らされてはいないであろう。
肝心要のレーダー出力も分からないのに,どうやって環境への影響を調査するのか? あるいは,調査後,調査結果の根拠や妥当性を問われたとき,どのように説明するのか? 全くもってナンセンス。バカらしくて,小学生ですら失笑するに違いない。
ところが,いったん「国益」のための「特別防衛秘密」や「特定秘密」が大前提とされると,そのような根拠なしの荒唐無稽な説明が,堂々とまかり通ることになってしまう。
調査など形だけでよい。数値はサイコロの出目でも記入しておけば十分。住民はすでに「国益」呪文,「特定秘密」呪文の暗示にかけてしまった。何を言っても疑いはしない。
この状態での環境影響調査など,もはやヤラセ。完全な”under-control”だ。もはや,何を言っても,地元住民は怒りはしない。たとえば,京丹後市の中山市長は,京都新聞の取材に――記事が正確だとするなら――こう答えている。
「住民の安全安心が守れない場合は,直ちに停波を求める。どうしても安全性の回復がなければ撤退を求めることもありえる」(京都新聞2月26日)
誰が見ても,山陰の小さな地方自治体の市長に,そんなことをする力はない。相手は世界最強の米国。国際法違反の戦争だろうが暗殺だろうが,国益のため必要と判断したら,平然と冷酷に実行してしまう。その冷徹アメリカに,アジア辺境の小さな自治体の市長が,「停波を求める」,「撤退を求める」というのだ!!
これは――記事が正確だとするなら――何の根拠もない無責任な空手形。リアリティのかけらもない。ウソだと思うなら,沖縄を見てみよ。
谷川昌幸(C)
ネパールの職種別給与と経済成長率・インフレ率・預金金利
1.経済成長率とインフレ率
アジア開発銀行によれば,今年のネパールの経済成長は4.5%,インフレは10%になるという(Republica, 7 Mar)。インフレの主要因は食糧。
2.預金金利
一方,銀行の預金金利は以下の通り(定期,3月9日現在)
Nepal Bank
3か月=3.50%,6か月=4.00%,1年=5.00%,1-5年=5.50%
Nepal SBI Bank
1-3か月=3.50%,3-6か月=4.50%,6か月-1年=5.50%,1-2年=6.00%,2-3年=6.25%,3-10年=6.25%
Himalayan Bank
3か月=3.00%,6か月=3.75%,1年=4.50%,2年以上=5.50%
3.職種別給与(1ルピー=1.06円/3月9日)
▼公務員以外の職種=給与(ルピー/月,2014年3月9日現在)
Food /Hospitality / Tourism / Catering=8,000
Construction / Building / Installation=12,000
Banking=18,333
Legal=19,424
Human Resources=20,000
Administration / Reception / Secretarial=21,583
Customer Service and Call Center=25,000
Marketing=30,000
Engineering=33,333
Electrical and Electronics Trades=34,800R
Information Technology=35,933
Sales Retail and Wholesale=37,833
Accounting and Finance=39,688
Executive and Management=44,050
Architecture=50,000
Health and Medical=50,000
(http://www.salaryexplorer.com/salary-survey.php?&loctype=1&loc=151)
▼公務員職種=給与(ルピー/月,2013/14年度)
President= 109,410
Vice President=78,560
Prime Minister=56,200
Chief Justice=53,580
Speaker of the House=48,950
Deputy prime minister=47,410
Supreme Court justice=44,330
Minister=44,330
Deputy Speaker=44,330
Chief of opposition=44,330
Chief Whips=44,330
State Minister=42,010
Head of Constitutional body=42,010
NPC Vice-chairman=42,010
Assistant Minister=41,080
Parliamentarian=40,160
Chief Secretary=39,700
Secretary=37,390
Joint Secretary=31,730
Under Secretary=27,610
Section Officer=24,900
Peon (first)=12,120
Chief of Army Staff=39,700
Lieutenant General=38,540
Major General=37,390
Brigadier General=33,259
Colonel=31,040
Lieutenant Colonel=28,535
Boys=8,370
IGP(Nepal Police)=37,390
AIG=37,390
DIG=32,340
SSP=30,580
SP=28,535
Recruit=11,800
IGP(APF)=37,390
AIG=37,390
DIG=32,340
SSP=30,580
SP=28,535
Recruit=11,800
Secondary I(Teachers)=31,730
Secondary teachers II=27,610
Secondary teachers III=24,900
L Secondary I=25, 890
L Secondary II =24,900
L Secondary III=19,370
Primary I=24,900
Primary II=19,370
Primary III=17,980
Primary IV=15,030
Primary V=14,020
(注)公務員総数:約37万人[国軍95,000;武装警察31,000;警察67,000;教員88,000;上記以外の公務員89,000](ekantipur, 2013-08-03)
▼生活費(カトマンズとその近郊:単位ルピー)
石油類(3月9日現在,http://www.nepaloil.com.np/Selling-Price/13/):
ガソリン125/L;ディーゼル100/L;灯油100/L;プロパンガス・ボンベ1本1470
コメ: 68/Kg
ミルク: 51/L
タマゴ: 111/12個
リンゴ: 140/Kg
トマト: 44/Kg
アパート(寝室1):市内8527/月,市外4175/月
(http://www.numbeo.com/cost-of-living/country_result.jsp?country=Nepal)
4.悪性インフレと共産党の責務
以上の経済指標を見ると,名目所得はかなり上昇しているが,高インフレで食糧を中心に物価上昇が続き,庶民の生活は苦しくなってきていると思われる。
ネパールは,最近はカトマンズとその周辺にしか行っていないが,すでにガソリンやホテル代は日本と同等以上,私学授業料,本代など教育費も急上昇している。食糧など生活必需品が値上がりしており,大多数の庶民にとっては低成長と高インフレの最悪シナリオだ。
これは,ネパール共産主義にとっては,真価が問われる事態だ。このところネパールの共産主義諸党は,目先の「民族」感情利用に走り,人民分断に加担してきた。が,このような戦略では先がない。
ネパールの共産主義は,国内の力関係という点で評価すれば,議会制民主主義国のなかでは世界最強といっても過言ではない。いまこそ原点に立ち戻り,「万国の」とはいわないまでも,少なくとも「ネパールの労働者・農民よ,団結せよ!」と檄を飛ばすべきではないだろうか。
谷川昌幸(C)
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