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ネパールの職種別給与と経済成長率・インフレ率・預金金利
1.経済成長率とインフレ率
アジア開発銀行によれば,今年のネパールの経済成長は4.5%,インフレは10%になるという(Republica, 7 Mar)。インフレの主要因は食糧。
2.預金金利
一方,銀行の預金金利は以下の通り(定期,3月9日現在)
Nepal Bank
3か月=3.50%,6か月=4.00%,1年=5.00%,1-5年=5.50%
Nepal SBI Bank
1-3か月=3.50%,3-6か月=4.50%,6か月-1年=5.50%,1-2年=6.00%,2-3年=6.25%,3-10年=6.25%
Himalayan Bank
3か月=3.00%,6か月=3.75%,1年=4.50%,2年以上=5.50%
3.職種別給与(1ルピー=1.06円/3月9日)
▼公務員以外の職種=給与(ルピー/月,2014年3月9日現在)
Food /Hospitality / Tourism / Catering=8,000
Construction / Building / Installation=12,000
Banking=18,333
Legal=19,424
Human Resources=20,000
Administration / Reception / Secretarial=21,583
Customer Service and Call Center=25,000
Marketing=30,000
Engineering=33,333
Electrical and Electronics Trades=34,800R
Information Technology=35,933
Sales Retail and Wholesale=37,833
Accounting and Finance=39,688
Executive and Management=44,050
Architecture=50,000
Health and Medical=50,000
(http://www.salaryexplorer.com/salary-survey.php?&loctype=1&loc=151)
▼公務員職種=給与(ルピー/月,2013/14年度)
President= 109,410
Vice President=78,560
Prime Minister=56,200
Chief Justice=53,580
Speaker of the House=48,950
Deputy prime minister=47,410
Supreme Court justice=44,330
Minister=44,330
Deputy Speaker=44,330
Chief of opposition=44,330
Chief Whips=44,330
State Minister=42,010
Head of Constitutional body=42,010
NPC Vice-chairman=42,010
Assistant Minister=41,080
Parliamentarian=40,160
Chief Secretary=39,700
Secretary=37,390
Joint Secretary=31,730
Under Secretary=27,610
Section Officer=24,900
Peon (first)=12,120
Chief of Army Staff=39,700
Lieutenant General=38,540
Major General=37,390
Brigadier General=33,259
Colonel=31,040
Lieutenant Colonel=28,535
Boys=8,370
IGP(Nepal Police)=37,390
AIG=37,390
DIG=32,340
SSP=30,580
SP=28,535
Recruit=11,800
IGP(APF)=37,390
AIG=37,390
DIG=32,340
SSP=30,580
SP=28,535
Recruit=11,800
Secondary I(Teachers)=31,730
Secondary teachers II=27,610
Secondary teachers III=24,900
L Secondary I=25, 890
L Secondary II =24,900
L Secondary III=19,370
Primary I=24,900
Primary II=19,370
Primary III=17,980
Primary IV=15,030
Primary V=14,020
(注)公務員総数:約37万人[国軍95,000;武装警察31,000;警察67,000;教員88,000;上記以外の公務員89,000](ekantipur, 2013-08-03)
▼生活費(カトマンズとその近郊:単位ルピー)
石油類(3月9日現在,http://www.nepaloil.com.np/Selling-Price/13/):
ガソリン125/L;ディーゼル100/L;灯油100/L;プロパンガス・ボンベ1本1470
コメ: 68/Kg
ミルク: 51/L
タマゴ: 111/12個
リンゴ: 140/Kg
トマト: 44/Kg
アパート(寝室1):市内8527/月,市外4175/月
(http://www.numbeo.com/cost-of-living/country_result.jsp?country=Nepal)
4.悪性インフレと共産党の責務
以上の経済指標を見ると,名目所得はかなり上昇しているが,高インフレで食糧を中心に物価上昇が続き,庶民の生活は苦しくなってきていると思われる。
ネパールは,最近はカトマンズとその周辺にしか行っていないが,すでにガソリンやホテル代は日本と同等以上,私学授業料,本代など教育費も急上昇している。食糧など生活必需品が値上がりしており,大多数の庶民にとっては低成長と高インフレの最悪シナリオだ。
これは,ネパール共産主義にとっては,真価が問われる事態だ。このところネパールの共産主義諸党は,目先の「民族」感情利用に走り,人民分断に加担してきた。が,このような戦略では先がない。
ネパールの共産主義は,国内の力関係という点で評価すれば,議会制民主主義国のなかでは世界最強といっても過言ではない。いまこそ原点に立ち戻り,「万国の」とはいわないまでも,少なくとも「ネパールの労働者・農民よ,団結せよ!」と檄を飛ばすべきではないだろうか。
谷川昌幸(C)
非領域州は外国の謀略:マオイスト政治局員
国家再構築委員会(SRC)が非領域ダリット州の設置を含む連邦制案を提出したが,この革命的な連邦制案に対し,超革命的マオイスト急進派が猛反対している。ekantipur(Feb2)がインタビューしたのは,カドガバハドール・ビシュワカルマ議員(カリコット選出)。ダリット指導者であり,急進派のマオイスト政治局員。
ビシュワカルマ議員によると,州区分は地理によるべきであり,自決権・分離権も認められるべきだ――
1.民主主義の核心は分離権
「連邦制ネパールは,自決権を認めるべきだ。分離権(離脱権)の理論的承認こそ,民主主義の核心だ。国家が州に認めるべきは自治であり,これが認められてはじめて,プリトビナラヤン・シャハの征服に始まる周縁化された人々・少数派の抑圧を廃止できる。これこそ,新国家の果たすべき任務だ。もしこれが達成できたら,われわれは世界を政治的・イデオロギー的に指導することが出来るだろう。そして,自治さえあれば,実際には,諸州は分離する必要などなくなるはずだ。」
2.非領域州は外国の謀略
「党の政策によれば,ダリットには,新しい連邦共和国において特別の諸権利が保障される。非領域的な州は,突拍子もないもので,到底認められない。非領域州は,ブルジョアのスローガンでもなければ,修正主義者や革命派のスローガンでもない。修正主義者のスローガンは保留推進であり,革命派の要求は特別の諸権利の保障だ。議論されているのは,これらの問題だ。非領域州は,ダリット運動に関わる誰の要求でもない。ダリットは,いままさに諸権利を獲得しようとしている。非領域州は,そのダリットに対する,外から持ち込まれた謀略である。」
3.「民族」の泥沼
このビシュワカルマ議員の議論は,いまのネパールの連邦制論を純化したもので,劇画的にわかりやすく,面白い。
そもそもマルクス主義は,生産関係に基づく「階級」を前提にしており,「民族」本質主義とは相容れない。特に労働者は,普遍階級として国境を越えて連帯し,「万国の労働者」となるはずだ。
それなのに,ネパール・マオイストは,被抑圧カースト・民族を利用し革命に動員したがため,非科学的な「民族」の泥沼にはまってしまった。「民族」本質主義,「民族」原理主義だ。
まず第一に,分離権付与の論理。ビシュワカルマ議員によると,被抑圧カースト・民族の解放には分離権を認める連邦制が必要だが,各州は分離権を認められても,自治権があるので実際には分離はしないだろうという。
しかし,これは何の根拠もない単なる希望的観測であり,現にタライなどでは,つねに分離が策謀されている。そういう状況で,もし分離権が認められたら,議会決議や住民投票で分離する州が出るだろうし,たとえそこまで行かないにしても,分離運動が激化し大混乱になることは避けられない。分離権などという劇薬は,そう安易に処方されてはならない。
第二に,もっと面白いのが,非領域州否定の論理。ビシュワカルマ議員によれば,ダリット共同体はダリットとしての特権の要求でよく,非領域州は不必要だという。しかし,全国のダリットが,一つの社会共同体として諸特権を要求し享受するのは,そのダリット共同体を非領域州(ダリット州)として認めるのと,どこがどう違うのか? 議員は,いったい何を怖れているのか?
それはいうまでもあるまい。もしダリットを非領域的なカースト州として認めたら,全国に散在する他の民族集団,宗教集団,文化集団などが次々と非領域的な州としての自治を要求することになるからだ。たとえば,ムスリム州,チェットリ州等々。そうなれば,元の木阿弥,ダリットの特権も消滅する。
ビシュワカルマ議員は,一方で,ダリット以外の諸民族を領域州の州境の中に囲い込み,他方で,ダリットには州境を超えた被抑圧カーストとしての諸特権を認めさせようとしている。
これは劇画的に面白い議論だ。そして,この面白い論理を,マオイスト主流派もさかんに利用している。マオイスト幹部らは,被抑圧カースト・民族を人民戦争に動員し,勝利後,彼らを地理的に分割し,州に安堵する。他方,マオイスト幹部ら自身は,普遍的プロレタリアートの前衛として,州分割された諸民族を,一段高い国家(連邦)の高見から分割統治するわけだ。
しかし,本当にそんな面白いことが実行できるだろうか? 歴史を見ると,「民族」を利用したものは,例外なく非合理な民族情念の泥沼にはまりこみ,破滅することになるのだが。
谷川昌幸(C)
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