ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

マオイスト=UML,7項目密約

マオイストが土壇場で首相選挙を降りUMLカナル議長支持に回ったのは,両党(ないしプラチャンダ派とカナル派)の間で政権担当の密約(取引)が成立したからである。秘密協定だから内容ははっきりしないが,どうやら次のような取り決めらしい(ekantipur, Feb7)。

■マオイスト=UML7項目合意
 1.包摂民主主義により社会主義を実現。
 2.新憲法を制定し,共和制・連邦制を実現。
 3.マオイスト戦闘員からなる独立の部隊を設立。
 4.権力分有。諸政党代表からなる高レベル諮問会議の設立。
 5.共同綱領の制定。
 6.マオイストとUMLが交代で政権運営。
 7.以上に合意し,マオイストはUML首相候補に投票する。

この7項目合意が事実だとすると,プラチャンダ議長の圧勝ということになる。

第一に,社会主義ということは,人民民主主義を目指すということ。多党制とは相容れない。それをカナル首相は呑んだ。

第二に,マオイスト戦闘員だけの部隊を設置することは,マオイストが強く要求してきたこと。実質的に国内2軍隊となり,プラチャンダ議長の権力はむしろ強化される。

第三に,マオイストとUMLが交代で政権を運営すること(政権たらい回し)になれば,実際にはマオイスト優位の体制が出来てしまう。

もしこの密約が維持されれば,カナル首相は形だけで,実権はプラチャンダ議長が握り,マオイスト体制になっていく。しかし,もしUML内反カナル派が抵抗し,そこにNCやマデシ諸派が加勢することになれば,アナーキー状態になってしまう。

いずれにせよ,今後の流れを決するのは,マオイスト戦闘員(人民解放軍)だけの,あるいは彼ら主力の国軍部隊を設置できるかどうかである。減員され1万人前後となっても,それだけの精鋭部隊の実質的指揮権を保有することになれば,プラチャンダ議長の実権は揺るぎないものになるであろう。

もう一つ気になるのが,見え隠れする中国の動き。われらが「人民評論」によると,「新政権は中国の贈り物」だという(People’s Review, Feb8)。マオイストやUML幹部が足繁く訪中していたことは周知の事実。もともと同じイデオロギーを持ち,親中・反印も共通の二大共産党の連立政権であり,中国接近は自然な成り行きである。これをインドや国軍がどこまで許容するか? これも難しい問題である。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/02/09 @ 09:31