ネパール評論

ネパール研究会

ラマ大佐無罪判決,英裁判所(2)

1.ラマ裁判への期待:国際法律家委員会
英国におけるクマール・ラナ裁判については,普遍的裁判管轄権の拡充を求める国際法律家委員会(IJC)が,その意義を高く評価している。サム・ザリフィIJCアジア局長は,2016年6月の裁判再開のころ,こう述べている(*)。

「この裁判は,ネパールで与党が協定[9項目合意*2]を結び,ネパール内戦において不法な殺害,強制失踪,拷問および他の重大な犯罪を計画しまた実行した人々を免罪とするのではないかと危惧されている状況の下で,始まった。」

「この裁判は,ネパールにおける紛争期人権侵害に対する組織的免罪を問題にし異議を申し立てる重要な,長く待ち望まれてきた機会である。」

「この裁判は,世界的に見てとまではいわないが,少なくとも英国においては,普遍的裁判管轄権が裁判に適用される極めてまれな事例だ。判決は,この事件の被害者だけでなく,裁判による正義実現を求めている世界中の拷問や他の重大な権力乱用の犠牲者たちすべてにとって,大きな意味をもつことになるであろう。」

160910■サム・ザリフィTwitter(2月17日)

*1 “Torture Trial in the UK: ICJ paper explains case against Nepalese Colonel Lama,” IJC, June 22, 2016
*2 戦争犯罪免責と移転土地登記:ネパール与党の「9項目合意」2016/05/13

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/10 @ 19:42