ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ラマ大佐無罪判決,英裁判所(3)

2.逮捕・起訴・無罪判決
[裁判の経過]
 ・2013年1月3日:クマール・ラマ大佐,休暇滞在先の英国イーストサセックスで逮捕
  容疑は,(1)ジャナク・バハドゥル・ラウトの拷問(2005年4月15日~5月1日),(2)カラム・フサインの拷問(2005年4月15日~10月3日)。(参照:ラマ大佐逮捕で主権喪失
 ・2015年2月24日:ロンドン中央刑事裁判所で裁判開始
 ・2015年3月09日:検察,証拠提出
 ・2015年3月18日:「ネパール語通訳不足」のため裁判延期
 ・2016年6月初旬:裁判再開
 ・2016年8月02日:K・フサイン拷問容疑につき,陪審団が無罪評決。JB・ラウト拷問容疑については,証拠不十分で評決せず。
 ・2016年9月06日:検察,JB・ラウト拷問に関する追加証拠提出を断念。裁判打ち切り(証拠不十分で無罪)。

こうして,ラマ大佐に対する裁判は,証拠不十分による無罪判決をもって終了した。しかし,情報不足で確かなことは言えないが,この裁判には不可解なところがある。

とりわけ不可解なのは,裁判長期化の理由。イギリスの刑事裁判は平均7か月くらいだという。ところが,ラマ対裁判には3年半もかかった。しかも,その大きな理由は,適切なネパール語通訳が見つけられなかったことだという。

REDRESS「この裁判は難しかった。告発された拷問は,何千マイルもの遠方で,10年余りまえに行われた。被害を申し立てた人々の言語は英語であり,裁判中の通訳に問題があった。」(*1)
  
まさか? 英ネ関係は,日ネ関係とは比較にならないほど,長くて深い。ネパール語に堪能な人は,英国には少なくないはずだ。また,在英ネパール人も多い。ラマ大佐自身,英国永住権を持ち,家族は英国在住。その英国において,ネパール語法廷通訳を見つけられないとは,到底信じがたい。

この裁判において,拷問被害者が有罪判決を強く願っていたことは間違いないが,英国政府や裁判支援諸団体は必ずしもそうではなかったのではないだろうか?

160911a

*1 “COLONEL KUMAR LAMA’S ACQUITTAL: PROSECUTING TORTURE SUSPECTS SHOULD REMAIN A PRIORITY OF THE UK,” 6 September 2016 (http://www.redress.org/)
*2 “Questions and Answers – Colonel Kumar Lama Case,” ICJ(http://icj.wpengine.netdna-cdn.com/)
*3 “KUMAR LAMA,” (https://trialinternational.org/latest-post/kumar-lama/)
*4 “Kumar Lama trial – cost of interpreters,” (https://www.whatdotheyknow.com/request/kumar_lama_trial_cost_of_interpr)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/09/11 @ 19:31