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人民解放軍解体,9月末完了

The Himalayan Times(27 Sep)によれば,マオイスト人民解放軍の解体手続きがほぼ完了し,9月末までには全国28駐屯地のすべてが国軍または武装警察隊への引き渡し,あるいは閉鎖とされることになった。

人民解放軍は,停戦当初は32,250人が登録され,各地の駐屯地に収容されたが,UNMIN審査の結果,19,602人が有資格戦闘員として認定された(2007年5月)。未成年者,後年参加者などの無資格者は2010年初までに駐屯地から退去。

駐屯地収容戦闘員の実数は,収容長期化とともに減少し,2012年初には17,076人となっていた。

この17,076人のうち,国軍統合委員会の審査により有資格と判定されたのは,最終的に,3,123人となった。残りの13,922人は給付一時金付き任意除隊,6人が社会復帰プログラム選択。(総計が合わないが,詳細不明。)

これで名実ともに,ネパール共産党毛沢東主義派(旧CPN-M)の人民戦争は終了する。今後,注視すべきは,プラチャンダ=バブラム派マオイストから,その本来の党名CPN-Mを継承したバイダ派マオイストが,人民戦争路線をも継承するかどうか,ということ。

戦闘経験豊富な人民解放軍兵士多数が帰郷し,生活苦に陥り,バイダ派マオイストに合流し,新人民戦争を開始することは十分に考えられる。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/09/29 at 11:01

人民銭争,勃発

人民解放軍(PLA)の社会復帰希望者7365人の除隊が始まったとたん,新たな戦い「人民銭争」が始まった。

いま除隊者には,1人当たり50~80万ルピーが支給されているが,マオイストは公式・非公式に除隊者から支給小切手と身分証明書を取り上げている。

第1の理由は,戦闘員資格非認定のPLAメンバー6500人の救済資金に回すため。彼らには,支給金の50%相当額を支払うとの約束があるという。また,人民戦争で戦ったYCLメンバー約1000人には,除隊者と同等の支給金が約束されているともいう。

第2は,PLAの傷痍軍人,妊産婦戦闘員,未成年者への扶助資金などに回すため。

以上は,もっともな理由ではあるが,しかし,除隊者からすれば,支給金の半分をピンハネされるわけで,たまったものではない。かくして,分け前をよこせという側と,拒否する除隊者との間で,激しい銭争が始まったのだ。

こんな事例さえある。あるPLA上官が,病欠中の保護を理由に,女性除隊者に225000ルピーの支払いを要求,彼女は保護を求めて警察署に逃げ込み,外に出られない状態だという。彼女は,かつて襲撃した警察に,いまは保護されているのだ。

もっとドロドロしているのが,毎月徴収されてきた積立金(上納金?)。マオイスト戦闘員は,月1人当たり1000ルピーを部隊指揮官に払ってきた。除隊にあたって,この積立金(上納金?)の払い戻しを求めたところ,拒否され,ここでも激しい銭争が始まっている。

このように,巨額の支給金や積立金をめぐる醜悪な銭争で,いまやマオイストは内戦状態だという。しかし,そこはネパールのこと,いずれ勝つべき者が勝ち,この銭争も遠からず終わるだろう。

マオイストは,人民戦争の勝利により,一番の大金持ち政党になった。党本部は高台の超豪華リゾート邸宅風。内部も,なかなかおしゃれ。そして,われらがプラチャンダ議長も,昨日紹介したように,市内の超豪華住宅に引っ越した。

 マオイスト本部御殿

それもこれも,すべて人民戦争を戦った愚直な人民兵士のおかげだ。ところが,マオイスト幹部らは,あれこれ理屈を付け,彼らへの給付金の上前をはねる。こうして,人民は勝利の成果の多くを横取りされ,今度は身内での仁義なき「銭争」に駆り立てられるのだ。

しかし,今度の「人民銭争」では,農民・労働者に勝ち目はない。悲しいことだが,彼らはいつも利用され,使い捨てにされる運命にあるのだ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/02/08 at 19:12

カテゴリー: マオイスト, 政党

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