ネパール評論

ネパール研究会

停電20時間:省エネ超先進国ネパール

ネパールは,現在,停電7時間/日。地区割りし,スケジュール表を作り,ちゃんと停電を実施している。多少不便だが,特にどうということはない。庶民は冷静に対応している。

政府発表では,乾期になると,停電は20時間/日になる予定。やはりスケジュール表を作り,粛々と実施し変わりなく暮らす。

ネパールはヒマラヤの国であり,水力発電が中心。ダム計画はいくつもあるが,かつては環境保護団体(電力浪費三昧先進国NGO)の妨害により,次にマオイスト紛争により,そして現在は紛争後混乱により,ほとんどが頓挫,電力需要急増に追いつかない。目下期待は西セティ(750MW)の中国と,上部トリスリ(250MW)の韓国。日本はお呼びじゃないようだ。

(Nepali Times,24-30 Aug)

いずれにせよ,電力はまったく足りないので,急場しのぎにインドからの電力輸入とディーゼル発電機稼働の予定だが,焼け石に水,どうにもならない。かくて,20時間/日の革命的停電が実施されるわけだ。

この窮状を見て,このところ冴えているネパリタイムズが,社説でこんな皮肉をかましている。

首相の党にとって,パワーは銃口から生まれる。とすれば,次は発電水車からパワーを生みだすべきだろう。(Nepali Times,24-30 Aug)

ネパリタイムズの立腹はよく分かるが,それはそれとして,20時間/日停電は革命的にすごい。強いられた省エネであるにせよ,それに耐えられる社会は強靱であり,真の意味で健全である。

日本だって,敗戦後しばらくは,裸電球のほの明かりの下で夕食,一家団欒を楽しんでいた。停電は常識,TVもグルメもなかったが,時間と会話と近隣交際はふんだんにあった。

このような形で「省エネ超先進国ネパール」を紹介すると,現場第一主義者からは,安全圏からの無責任放言と非難されるかもしれないが,厳密に言えば,本人以外は多かれ少なかれ部外者,そんなことをいわれたら歴史研究も外国研究も,一切できなくなってしまう。

実感主義,クソ実証主義は,決して「事実」を見ることにはならない。20時間/日停電が「超先進的」であることこともまた,もう一つの「事実」なのである。

風力発電も原発もイヤだな
停電16時間の革命的意義
電力神話からの脱却,ネパールから学べ

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/08/27 @ 17:31

カテゴリー: 社会, 経済, 文化

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