ネパール評論

ネパール研究会

Archive for 6月 2013

京都の米軍基地(9):周縁からの発信

米軍Xバンドレーダー基地予定地の経ヶ岬は,周縁の周縁である。経ヶ岬は丹後の周縁,丹後は日本の周縁。かつては,そのような周縁からの発信は難しかったが,技術革新により,それが可能となり始めた。

私は,これまでユーチューブを使ったことがなかったのだが,昨日,アクセスしてみると,実に簡単,これならサルにでもできる。さっそく,京丹後市議会でのXバンドレーダー審議の様子をアップロードした。

▼京丹後市議会Xバンドレーダー審議(3月13日)
▼京丹後市議会Xバンドレーダー審議(3月22日)
▼京丹後市議会Xバンドレーダー審議(5月20日)

サルと技術的には大差ない私のようなIT素人にも,周縁地の議会審議を全世界に向け発信できる。これは革命的なことだ。

京丹後市の議員諸氏は,おそらくまだ意識してはいないであろうが,いまや発言の一つ一つが世界市民の前で行われる。当然,その厳しい批判に耐えられるものでなければならない。

一方,京丹後市議会での各議員の発言は,日本やアメリカの情報機関(NSA,CIAなど)は無論のこと,北方の某国や某々国の軍や情報機関にも,当然,記録保存され,分析評価されている。某国が,Xバンドレーダー配備阻止,あるいは配備後であればその破壊のため,工作船や工作員を送り込むとき,あるいは日米情報機関がその対策を練るとき,収集された各議員や地域住民の情報を最大限活用することは,いうまでもない。

周縁からの情報発信は,丹後半島に多数棲息する野猿程度のチエさえあれば,十分に可能だ。図らずもユーチューブがそれを実証した。国家安全保障局(NSA)に個人情報監視が許されるなら,生存を脅かされる経ヶ岬の野猿に,空自分屯基地=米軍Xバンドレーダー基地の監視が許されないわけがない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/06/19 at 09:42

京都の米軍基地(8):基地反対集会

1.「6・15丹後集会」
「京都に米軍基地はいらない! 6・15丹後集会」に参加した。雨天にもかかわらず,参加者約500名。

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▼集会次第
13時30分~ 司会 丹後連絡会事務局長 近江裕之
      主催者あいさつ 丹後連絡会副代表 三野みつる
      会の代表などを紹介、メッセージの紹介
13時38分~ 経ケ岬米軍基地設置 徹底質問 軍事と法律の専門家に聞く
      質問者 府民の会 小林さん
      回答者
       府民の会事務局長・京都平和委員会理事長 戸田昌基
       自由法曹団京都支部事務局長・弁護士   渡辺輝人
      京丹後市議会、京都府議会での質疑・協議について
      会場のみなさんからの質問時間もとります
      カンパの訴え
14時10分~ 私も一言
      集会アピール
      閉会あいさつ 府民の会代表 京都総評・吉岡徹議長
14時35分閉会

▼京都に米軍基地いらない6・15丹後集会アピール
日米両政府は、京丹後市経ケ岬に米軍基地を設置しようとしています。

私たちは丹後の美しい自然を生かした地域の振興を願っており、米軍基地の設置は、このことを真っ向からふみにじるものです。米軍基地の設置をやめるよう、私たちは強く求めます。

新たにつくられようとしている米軍基地は、アメリカ本土のミサイル防衛のための「目」となるXバンドレーダーを設置するものです。これは、核戦争の最前線基地が京丹後市につくられるということです。米軍基地の設置は、この地域の軍事的な危険を高め、住民のくらしと自然を脅かします。

Xバンドレーダーは、住宅地から数百メートルしか離れていないところに置かれます。日本政府は安全だと主張していますが、強力な電磁波を出すため、レーダー周辺は150メートルの立ち入り禁止区域と半径6キロ、高度6キロの飛行禁止区域が設定されます。海難事故の救援や、ドクターヘリの運行にも支障が出ます。そのため住民は強い不安を抱いています。

今、全国に132の米軍基地があります。どこでも米軍と軍属による犯罪、不祥事、交通事故が問題となっています。そして、安保条約にもとづく取り決めによって、米軍と軍属が日本で問題を起こしても、日本の警察が調査・逮捕できない事例が、あいかわらず多発しています。経ケ岬には米兵と軍属が160名配備されようとしています。この不安も拭い去ることはできません。

京都に米軍基地はいりません!

住民のくらしと自然を守るため、「京都に米軍基地はいらない」の声を一層大きくしましょう。

2013年6月15日

京都に米軍基地いらない6・15丹後集会参加者一同

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1時間あまりの集会では,米軍Xバンドレーダー基地の概要が説明され,いくつもの危険性が厳しく指摘された。現地で,現場を前にした説明は,やはりリアリティがある。とくに,地元の平と袖志の方,そして「宇川有志の会」の方の発言は,具体的であり,地元の切実さがひしひしと感じられた。

2.組織主導と運動の広がり
この集会には500人ほど参加しており成功と言えなくはないが,私のように横から参加した者から見ると,労組など団体が目立ち,やや広がりに欠けるように見えた。運動には,それを担う様々な実行組織が不可欠であり,労組などが重要な役割を果たすのは当然だ。しかし,それが前面に出すぎると,運動は一般へと拡大しにくくなるのではないだろうか。

米軍基地は,地元の人びとの日常生活を大きく変えてしまう恐れがある。米軍の事故・犯罪,電磁波被害,騒音,水不足などから,攻撃目標にされる不安と恐怖,そして軍事機密とそれにつきものの住民の思想・信条・行動監視。まさに平穏な日常生活の破壊である。その現実の危険を,地域の人びとに,どう説明し訴えていくのか? これは難しい課題だが,その危険の十分な理解なくして,地元の反対運動は広がらないだろう。

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 ■丹後集会(6/15)

3.平の海岸美と公害被害
ところで,「6・15丹後集会」が開かれたのは,米軍基地予定地の西方,平海岸駐車場においてである。平は,白砂青松の美しい海岸で,夏には多くの海水浴客でにぎわう。そのため,広い駐車場もつくられている。

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 ■平海岸(6/15) 

しかし,この海岸にもプラスチックなど,廃棄物が無数流れついている。特に驚いたのが,砂浜の可憐な野草の上に黄色い網がかかっていたこと。はじめ遠くから見たときは,てっきり黄色い花が一面に咲いているのだと思った。ところが,浜に出てみると,それは花ではなく,捨てられ流れ着いた黄色の網だった。これはヒドイ。無残だ。

米軍基地問題とは無関係と思われるかもしれないが,決してそうではない。このような自然破壊についても,真剣に取り組み,漁業,観光など,地元産業を守り発展させていかないと,基地依存経済への誘惑を断ち切れないだろう。

130616d ■平海岸:野草を覆う廃棄網(6/15)

4.廃校と道路建設
平の半島内陸側は,急峻な山地で平地はほとんどない。しかも日本有数の豪雪地帯。かつては小さな集落が点々とあったが,離村で無人となったところも少なくない。

平から車で20~30分登った三山地区もそのような集落。家や畑の世話はされているが,住んでいる人はいないようだ。谷間にひっそりとカトリック教会の集会所とマリア像があった。信者が多かったのだろう。別の険しい山道をさらに登ると,ごく小さな集落があったが,ここは完全な廃村となっていた。

このように,丹後半島の内陸部の生活は厳しい。当然,道路建設への要望は切実だ。そうした強い要望もあり,いま丹後半島の各地で大規模な道路建設が始まっている。

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 ■三山のカトリック教会/深山の廃屋(6/15)

130616a ■山村のバイパス工事(6/15)

米軍基地反対運動が難しいのは,一つには,こうした地域開発への切実な要望があること。アメリカは日本を,日本の都市部は地方を,地方は僻地を,文字通り「周縁化」し,搾取してきた。しかも,この問題は,ひとり1票の多数決民主主義では解決できない。

このような構造的暴力を温存し,そこから利益を得ている限り,都市住民には地方開発を云々する資格はない。原発と同様,地域住民は危険覚悟で米軍基地を受け入れるつもりかもしれないからだ。背に腹はかえられない。

これも難しい問題だが,目を背けていては,反対運動は地域への広がりを期待できないであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/06/17 at 14:16

「第三の性」パスポート,最高裁作成命令

ネパール最高裁は6月11日,DK. Buduja氏の訴えを認め,「第三の性」パスポートの作成を政府に命令した(ekantipur, Jan11)。市民証はすでに「第三の性」用が発行されている。

パスポートへの男女以外の性の記載を認めている国は,ネパール以外にもいくつかある。たとえば,インドは「M,F,E」であった。「E」は”Eunuch”。意味は調べていただきたい(*)。これに比べて,ネパールははるかに先進的であり,「M,F,X」としているオーストラリアやニュージーランドなどと並び,世界最先端を行くといってもよい(**)。
  * 最近,「M,F,Others」に変更されたようだ。
 ** Bochenek, M. & K. Knight, Establishing a Third Gender Category in Nepal, Emory International Law Review, Vol.26, 2012.

いまではネパールは,法制度や政治制度のいくつかの点で,日本のはるか先を行っている。最新制度を学ぶためネパール留学が必要になり始めた。古色蒼然たる「美しい国」日本,安倍「復古調」日本は,「第三の性」パスポート所持のネパール人を,どう扱うのだろうか?

130613c ■日本旅券発給申請書(部分)

ネパールでは,2007年12月27日,「ブルーダイヤモンド・ソサエティ(BDS)」SB.パント会長が,性的少数派の権利保障を求め訴えた裁判の最高裁判決において,「第三の性」の権利が認められた。「第三の性」とは,LGBTI,つまりレスビアン,ゲイ,バイセクシャル,トランスジェンダー,インターセックスなどの総称である。

この最高裁判決により,2008年11月以降,「第三の性」市民証が発行されはじめ,2010年からは「第三の性」での有権者登録も始まった。また,2011年の中央統計局(CBS)全国人口調査では,初めて「第三の性」カテゴリーが追加された。そして,今回,最高裁はパスポートにも「第三の性」を記入できるようにせよ,と政府に命令した。ネパールは,「ジョグジャカルタ原則」(2006/2007)制度化の優等生と言ってもよいだろう。

しかも,ネパールの「第三の性」は,本人の申請による。本人が,自分がそうだと思う性アイデンティティを申告する。これは,人権理念に忠実なラディカルな考え方である。

人権は,人は人として尊重されるべきだという理念。しかし,裸のヒトとして尊重されるだけでは,日常生活においては実際にはあまり意味はない。人を人として尊重するとは,人をその人の人格において,つまりその人固有のアイデンティティにおいて,尊重するということだ。もしこれが人権本来の理念だとすると,ネパールの「第三の性」の権利尊重は,その人権理念のストレートな制度化といってもよい。

「ネパールの性的少数派権利要求運動――特に2007年最高裁判決の獲得――は,世界中で,効果的な草の根人権運動の一つの範例と見られている。」(Sharma, Preeti, Historical Background and Legal Status of Third Gender in Indian Society, International journal of Research in Economics & Social Sciences, Vol.2,Issue 12, 2012, p.68 )

130613 ■BDSフェイスブック

このように,ネパールの「第三の性」権利要求運動の評価は高い。しかしながら,これがいわゆる「アイデンティティ政治」の一種であり,それ特有の難しさを免れえないのもまた事実だ。アイデンティティは,本質的に主観的なものであり,覚醒を訴えれば訴えるほど他との違いが際立ち,多様化し,共通利害を見いだしにくくなる。そして,多様化し個々の権利要求が高まれば高まるほど,それに対応すべき制度が複雑化し,運用が難しくなり,経費もかさむ。崇高な理念に水をかけるような興ざめな話だが,この現実を見ようとしないアイデンティティ政治は,必ず行き詰まる。

個人がその固有のアイデンティティにおいて,そしてマイノリティがその集団固有のアイデンティティにおいて,尊重されるべきことは言うまでもない。それを当然の前提とした上で,諸個人間,諸集団間の利害対立をどう調整していくか? これは難しい課題だ。ネパールが,この難問にどう取り組んでいくか,見守っていたい。

なお,蛇足ながら,性的少数派の権利要求運動も,西洋NGOや国連機関(UNDPなど)が,物心両面で,強力に支援していることはいうまでもない。

谷川昌幸(C)

京都の米軍基地(7):議会審議

京丹後市議会が,米軍Xバンドレーダー基地設置について,審議している。ユーチューブに転載し,全世界にばらまこうと思ったが,IT素人の悲しさ,ファイルのダウンロードができなかった。とりあえず,市議会HPへリンクしておく。無断ダウンロード・世界配布以前に消去されないことを願っている。(▼クリック,再生) [追加6月19日:音声のみユーチューブに掲載しました。]

▼2013年3月13日議員全員協議会 議会HP ユーチューブ
130611a

▼2013年3月22日議員全員協議会 議会HP ユーチューブ
130611b

▼2013年5月20日議員全員協議会 議会HP ユーチューブ
130611c

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[参考] 金田琮仁議員(清風クラブ)「Xバンドレーダー」に対しての私の考えです(2013年04月17日)

「日本の平和と安心、安全については隣国による不安定な行動に危惧される今、我が国の防衛のあり方に、国民として、京丹後市民として、あらためて考える時がきたのではないか。・・・・」

「・・・・こちら側の質問事項に対して、電磁波に対する健康面や、米国人への治安に対する安全面、地域との関わりと交流、情報交換や事件事故へ対応する連絡会、などについては、予測以上の答弁であり不安はない。」

「・・・・地域の経済的効果を求めるならば、むしろ京丹後市は、積極的に関与し、市内の経済対策としての効果が見込める様、促すべきだ。」

「今回のXバンドレーダー配備計画において、京丹後市民としては、今こそ日本の防衛と平和、さらに東南アジアと世界の平和のために、少しでも貢献する、との思いを込めて、推進すべきだと考える。」

【全文はブログ参照 金田そうじんのフルスイングレポート
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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/06/11 at 18:42

京都の米軍基地(6):廃校と高速道路と基地

1.少子高齢化と米軍基地
京都・経ヶ岬への米軍Xバンドレーダー基地新設が,丹後の過疎化・少子高齢化を背景にしていることは,いうまでもない。村々では,子供や青年が減り,サルやシカやイノシシやクマやタヌキやイタチなどが激増した。田畑はすべて,周囲をぐるりと網や電気柵で囲っているが,それでも防ぎきれない。高齢農民にとって,たいへんな作業だし,経費もかさむ。また,沿岸の漁業も老齢化とともに継続が困難になってきている。丹後の農村・漁村は,崩壊の危機にある。

そこに米軍基地だ。当然,補助金がついてくる。京丹後市は2004年4月,広域合併し,豪華な庁舎や会館など様々な施設を造ってきた。首が回らないはずだ。そこに米軍基地。関係自治体は,はや何を,どれだけ分捕るか,条件闘争に入った感がある。

130610j 130610k ■丹後半島のバス停と時刻表: 冬期は1往復(5/31)

2.森本ICと大宮第三小学校
丹後半島の道路建設ラッシュについては,すでに紹介した。これと関係すると思われるのが,京都縦貫自動車道の建設。計画そのものは,かなり前からあり,京都市から府北部に延伸されてきてはいたが,その先端がいま,京丹後市森本まで達している。地理的には,丹後半島の真ん中の入口だ。

森本は,戸数わずかの小さな村。そこに「森本インターチェンジ」が造られている。しかも,そのほんの数キロ先には,「与謝IC」がある。あまりにも不自然。決して認めないだろうが,米軍基地を想定しているとしか思えない。

130610a ■森本IC工事(5/30)

この付近の少子高齢化がいかにすさまじいかは,建設中の「森本IC」から1,2キロ先の「大宮第三小学校」をみると,よくわかる。

この学校は,1980年,周辺のいくつかの小学校を統合し,新設された。何クラスあったのか分からないが,大きな校舎であり,広いグラウンドとプール,それにスキーゲレンデさえも備えていた。校舎はまだピカピカ。登校口には,生徒の「人権標語」ポスターが掲げられている。それなのに,今年3月,廃校にされてしまった。大きな美しい校舎を見ると,廃校の「哀愁」よりも,むしろ「無惨」の感を禁じ得ない。

たった33年。合併前の大宮町は,わずか1世代後の生徒数すら予測できなかったのか? すさまじい少子化。そして,それ故の,この莫大な無駄遣い。

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 ■校門と校舎正面(5/30) / 閉校記念碑(5/30)

130610c ■校舎と校庭(5/30)

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 ■プールとスキーゲレンデ(5/30) / 児童標語の掲示(5/30)

3.朝妻小学校
このようなことは,他にもある。たまたま目にしたのは,伊根の「朝妻小学校」。これも大きな立派な校舎だが,2005年3月に廃校。何年竣工か掲示は見あたらなかったが,まだ新しく,生徒さえいれば何十年後,いや百年後でも十分に使える。それなのに,廃校とされ,ほとんど使用されない状態で放置されている。無惨。廃校のロマンは,みじんもない。これも莫大な無駄づかい。

130610i ■校舎正面(5/31) 

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 ■校庭と校舎(5/31) / 閉校記念碑(5/31)

4.地域エゴに徹する
米軍基地は,この少子高齢化,廃校,耕作放棄,動物天国の丹後に造られる。関連事業,補助金がゾロゾロついてくる。呼び水だけで,もう地元は浮き足立っている。関連自治体・議会が,早々と受け入れ条件闘争に入ったのは,その限りでは当然といえよう。

都市住民は,原発も公害企業も地方に押しつけ,ときたまファッションとして,豪華バスを仕立て,地方に反原発・反公害デモに繰り出すだけ。米軍基地反対も同じこと。気楽なもんだ。

私も都市住民の一人であり,こうした地域住民からの批判は免れない。どうしたらよいのか? 名案はない。が,おそらくは,可能な限り当事者自身の立場に立ってみること,それ以外にはあるまい。

日本「国民」や日本「国家」の利益(国益)を引き合いに出し,ごまかすべきではない。米軍Xバンドレーダー基地が,そこに住む人々に何をもたらすのか,その損得計算を冷静かつ厳密に行い,結果を分かりやすく説明する努力をする以外に方法はない。

丹後の人々にとって,東京や大阪や京都,ましてやアメリカの安全など,とりあえずは無視してもよい。ミサイルが東京に落ちようがニューヨークに落ちようが,丹後が無事であれば,それでよい。半農半漁の丹後は,その気になれば,自分たちだけで自立して生きていくことが出来る。他人の身代わり,捨て石にならねばならぬ義理も道理もない

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/06/10 at 15:27

フェイスブックもスカイプも情報筒抜け

ワシントンポスト(朝日6月8日朝刊)やガーディアン(6月7日)によれば,アメリカ政府(国家安全保障局,FBIなど)が,フェイスブック,スカイプ,マイクロソフト(ホットメール),グーグル(Gメール),ヤフー,ユーチューブ,アップルなどの情報を,会社側から提供され,あるいは他の方法で,収集していることが明らかになった。

朝日6月8日夕刊によれば,オバマ大統領も,議会の承認を得ているとして,これを認めた。携帯通信情報も収集している。メールは読んでいないと大統領は釈明しているが,本当だろうか? これは対外情報監視法(FISA)に基づくPRISMプログラム。つまり合法だからだ。ワシントンポストの下図参照。

画像
■Washington Post, June 6,2013

しかし,こんなことは,まぁ常識。ネット情報,携帯情報など,すべてのデジタル情報が官民どこかに収集・保存され,政治的に,あるいは金儲けや他の目的のために,利用されていることは,明白だ。それがわかった上で,どこまで利用するか,ということにつきる。

で,つい先ほど,デスクトップ・パソコンが突然こわれた。警告ビープ音が出て,全く起動しない。一大事。私のことを私以上によく知っているはずのネット世界のどなたか,そちらに蓄積されている私の情報により,パソコン内情報を回復していただけないだろうか? プライバシー侵害などと,野暮なことはいいませんから。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/06/09 at 11:13

京都の米軍基地(5):開発利権

米軍Xバンドレーダー基地が計画されている丹後半島は,かつては日本三大秘境の一つとされていた。数十年前,中学生だった頃,悪友2人とバイクで丹後半島一周を試みたが,丸一日がかりの大冒険,海岸や谷底に転落したらどうしよう,人里離れた未舗装悪路で故障したら遭難するかも,などとヒヤヒヤ,ドキドキしながら,それでも何とか無事完走できた。古き良き時代の懐かしい思い出だ。(その頃は,中学生でも免許が取れた。)

130607f ■美しく平和な伊根湾(5/31)

それも今は昔。おそらく米軍基地新設と直接・間接に関わりがあるにちがいない大工事が,丹後半島のあちこちで進められ,もはや秘境の面影はない。

130607e ■道路建設:伊根付近(google)

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 ■蒲入海岸道路建設(5/31)  /  工事車両:蒲入付近(5/31)

もちろん,まだ自然は豊かだ。野生動物もたくさんいて,野猿などがピカピカの新設道路を走り回っている。走行には注意したいが,いずれひき殺され,激減するだろう。

130607c 130607d
■野猿:経ヶ岬隧道付近(5/31) / 野猿:経ヶ岬道路(5/31)

米軍基地は,人心を荒廃させ,自然を破壊し,そして丹後をミサイル攻撃の標的としてしまう。精度が高ければ,米軍基地直撃で済むが(といっても袖志や尾和は甚大な被害が予想される),某国ミサイルに高精度は期待できないので,どこに落ちるか分からない。天橋立か高浜原発あたりに落ちるかもしれない。

あるいは,超高速ミサイルを迎撃ミサイルで撃ち落とすことなど実際にはできはしないので,結局,花火か何かをミサイル発射と誤認し,先制攻撃を仕掛けるのが落ちだ。ローテク原発ですら使いこなせないのに,ハイテク迎撃ミサイルなど,使えるはずがない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/06/07 at 14:31

債務奉公少女,カムラリ

元カムラリが,ダン郡やカトマンズで激しい抗議活動を始めた。ダン郡庁舎前では,6月3日,50人以上が逮捕され,カトマンズではシンハダルバール(政府庁舎)前で抗議していた約70人を警官隊が攻撃し,10名が重傷を負った。
 [参照]年3000円で売られる少女,カムラリ

カムラリ(kamlari)とは,債務奉公少女のことであり,カマイヤ(債務労働者)の少女版。西部のダン,バンケ,バルディヤ,カイラリ,カンチャンプルのタルー族が多く,たいていチョーダリ姓。カマイヤは,「カマイヤ労働禁止法(2002年)」で禁止されたが,元カマイヤ,あるいはカマイヤでなくても地方農民は貧しく,娘を育てられない。そのため,娘が5~7歳になると,借金のカタとして,あるいは食い扶持を減らすため,地主や都市富裕家族の家に奉公に出す。

130606 ■バンケ,バルディヤ,カイラリ,カンチャンプル

カムラリは,奉公先に恵まれれば,実の子に準ずる扱いを受けるが,実際には,そのようなことはまれだ。たいてい酷使され,しかも女の子だから,性的虐待を受けることも少なくない。
 ・食事は,後回し
 ・寝るのは台所か小部屋
 ・休みなし。掃除,洗濯,子守,家畜の世話など
 ・学校へは,多くの場合,行けない
 ・雇用主家族の男性による性的虐待
 ・レイプで妊娠したら,親元へ戻すか強制堕胎
 ・殺害
全体の人数ははっきりしないが,元カマイヤは2万家族,5~18歳の子供は5万7千人位だそうだ(2001年)。この数字からして,カムラリもかなりいると見るべきだろう。

カムラリは,明白な人権侵害であり,禁止する法律はある。「カマイヤ労働禁止法(2002年)」,「児童労働禁止法(2000年)」,「人身売買禁止法(2007年)」など。また,最高裁も,2006年,カムラリ違法判決を出している。しかし,他の場合と同様,これらの法律や判決は名のみで,カムラリは事実上,放置され,表沙汰になっただけでも,この5年間で次のような事件が起きている(Republica,Jun4)。
 ・カムラリの不審死 5
 ・カムラリの妊娠 11
 ・カムラリの失踪 22
警察は,これらの事件についてほとんど捜査せず,家族への補償もない。

このような背景があるところに,この3月27日,ラリトプルのユバラジ・ポウデルの家でカムラリとして働いていたスリジャナ・チョーダリ(12歳)が,台所で焼死した。台所には外から鍵がかけられていたという証言もあるが,警察はきちんと捜査しようとせず,「自殺」で済ませようとした。そのため,元カムラリが怒り,捜査と犯人処罰そして損害賠償,さらには教育,職業訓練など,積極的なカムラリ救済策の実行を要求する抗議運動を始めたのである。

カマイヤやカムラリ,あるいはそれに準ずる奉公労働は,雇用主家族の在り方にも深甚な影響を与える。そのような家族では,主人一家と奉公人は,身分が全く異なるからである。

ネパールの中・上流階級の人々を見て驚くのは,使用人や目下の人々の扱いがごく自然で,うまいことである。「平等社会」の日本人は,頼み事や命令をするとき,おどおどしがちだが,ネパール人の多くは男性であれ女性であれ,そんな気配はみじんも見せない。平常心で,堂々と指図する。初めは,どうしてかなと不思議だったが,いくつかの家族を見て,その謎が解けた。奉公人を使っている家では,たとえ幼児でも,奉公人とは身分が違い,最初から命令し使う立場にある。幼児の頃から,上下の身分関係になれ,日本人のように身構えることなく,ごく自然に目下の者を使う習慣が体得されるのだ。

これは,ネパール社会の基底にある文化の一つだが,カムラリの要求がもっともだとすれば,こうした身分関係を当然の前提とする文化の維持は,もはや困難となるであろう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/06/06 at 22:12

京都の米軍基地(4):俯瞰スポット「山頂展望所」

経ヶ岬航空自衛隊分屯基地とその周辺の米軍基地用地を上から覗き見る最適スポットが,経ヶ岬山頂展望所だ。

国道178号線から分岐し経ヶ岬灯台道路を少し上ると,駐車場がある。物騒な米軍基地の話など影も形もなかった頃,観光客を当て込み造成された,だだっ広い駐車場だ。

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 ■経ヶ岬バス停前(5/31) / 経ヶ岬バス停と分屯基地(5/31)

この経ヶ岬駐車場から急な山道を三分の二ほど登り,分岐点から日本海側に回ると,経ヶ岬灯台(明治31年開設)がある。灯台はどこでもそうだが,どことなく哀愁がありロマンチック。丹後の秘境デートスポットだ。

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 ■駐車場内の案内看板(5/31) / 灯台・展望所分岐点(5/31)

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 ■経ヶ岬灯台(5/31) / 展望所東屋(5/31)    

しかし,このコースは,途中からも灯台からも,米軍基地用地はまったく見えない。米軍基地用地を覗くには,分岐点から山頂展望所へのコースをとり,岬の頂上まで登る。

頂上には,俗趣味な東屋がある。周囲を高い樹木に囲まれているが,1カ所だけ切り払われている。おそらく日本有数の美しい海岸,「丹後松島」が展望できるよう,邪魔な樹木を切り倒したのだろう。

米軍基地は,この国定公園の景勝地「丹後松島」の一角につくられる。したがって,「丹後松島」展望名所は,自動的に,米軍基地監視の名所となるわけだ。私が登った5月31日は,梅雨の曇天でかすんでいたが,普段なら,スミズミまでバッチリ俯瞰できるはずだ。

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 ■山頂展望所から望む分屯基地[1](5/31)

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 ■山頂展望所から望む分屯基地[2](5/31)

しかし,こんな監視最適地を,米軍が放置するわけがない。軍事機密の塊のようなXバンドレーダーの秘密を「某国」スパイや協力者から守るため,山頂展望所はおそらく立ち入り禁止にされてしまうであろう。あるいは,そこまでエゲツナイことはできないとしても,切り払ったところに木を植え,あるいは自然生育を放置し,米軍基地を見えなくしてしまうにちがいない。

それでも見てやろうと山頂に登る人は,Xバンドレーダー稼働後は,決死の覚悟が求められる。このレーダーは超強力電磁波を放射しており,上方に位置する山頂展望所は,下手をすると電子レンジ庫内状態となる。「人間の丸焼き」だ。

防衛省や「専門家」は,Xバンドレーダーの電磁波は人体に危険なレベルではない,と繰り返し説明している。しかし,こんな説明には,確たる根拠はない。なぜなら,データはすべて米軍が握っており,彼らには肝心なことは何も知らされていないから。原子力村のいわゆる「専門家」より,信用がならない。

Xバンドレーダーが稼働したら,何かのハズミで,近辺の誰かが「人間の丸焼き」になる危険性があると考えても,決して警戒のしすぎではない。いくら非科学的といわれようとも,大げさ,騒ぎすぎといわれようとも,分からないものについては最大限の警戒をするのが,人間の合理的な態度だからである。

経ヶ岬山頂展望所に登るのは,今のうち。山頂から国定公園「丹後松島」の軍事基地を,ぜひご覧いただきたい。

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 ■袖志海岸と分屯基地(5/31)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/06/05 at 13:52

京都の米軍基地(3):反対と反対の反対と

京都・経ヶ岬への米軍Xバンドレーダー基地新設には,当然,反対はある。地元にとって,米軍基地は治外法権の得体の知れない危険物であり,こんなものをスンナリ受け入れられるはずがない。

ところが,道路沿いに,ちらほら立ち始めた「米軍基地反対」の立て看板が,あちこちで壊れている。強風か何かで壊れたのかもしれないが,不自然な壊れ方であり,何者かに壊された可能性の方が高い。もしそうなら,始まったばかりの反対運動に対し,早くも反対(反対の反対)の動きが出ていると考えざるをえない。

原発と同様,米軍基地の設置も,地元の人間関係の分断から着手される。分割統治は,権力行使の鉄則であり,常套手段だ。

丹後も,おそらく他の米軍基地や原発の地元と同様,賛否両論に二分され,骨肉相争う陰湿な紛争の地とされてしまうのだろう。何の因果か,まったくもって理不尽な話だ。

130604b ■基地反対立て看板(2013.5.31)

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 ■壊れた立て看板。道路の北,日本海側は米軍基地予定用地(2013.5.31)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/06/04 at 13:15