ネパール評論

ネパール研究会

中国人がやってくる:ネパリ・タイムズ記事

中国の存在感がネパール各所で急拡大しているが,観光もまた例外ではない。そのことを写真と表を使い興味深く紹介しているのが,Claire Li Yingxue「中国人がやってくる」(『ネパリタイムズ』第739号)

記事によれば,タメル(カトマンズ)やポカラでは,漢字看板が急増。話し声は,英語よりも,いやネパール語よりも,中国語の方が多いほどだ。店員も観光ガイドも,まだ不十分とはいえ,どこでも中国語が通じるようになり始めた。

ジャタ~タメル付近は,中華料理店や中国系ホテルが続々と開業し,一帯は中華街へと変貌しつつある。たとえば,ある中国人ホテル経営者は,こう言っている。「ネパール政府が外国人に営業許可を出してくれるので,これらの仕事を始めるのは容易だ。」

が,中国人観光客のお好みは,カトマンズよりもむしろ,中国旅行書が「死ぬまでに見るべき世界の10名所」の一つにあげているポカラ。湖畔には中華料理店が続々開店し,パラグライダーなども中国語看板を出しサービスにこれつとめているという。

中国人向けの他のサービスも激増している。何といっても,まずは中国語。以前は中国語教師は少なかったのに,いまやいたるとこで中国語を学べる。観光案内HPや予約・決済サイトも中国語版が増えてた。「数年前まではアメリカ人客相手だったが,いまでは中国人がお客さんだ」(カシミヤ店主人)。
 ・訪ネ中国人(観光文化省):32,272(2009年)→113,173(2013年)
 ・「中国~カトマンズ」フライト:近く週70便以上となる予定

150105 ■訪ネ中国人数(ネパリ・タイムズ#739)

以上が,「ネパリ・タイムズ」記事の要旨だが,こうした中国進出は,教育分野ですら認められる。初等・中等学校の外国語授業や文化活動に中国が急進出,いまや日本は見る影もない。

中国のネパール進出は,各分野に広く及んでおり,もはや止めようもない。「新シルクロード経済圏」は拡大し,ネパールの姿も大きく変わっていくだろう。

[参照]
Claire Li Yingxue,”The Chinese are coming,” Nepali Times,#739,2-8 January 2015
谷川昌幸「中国・SAARC・ネパール
谷川昌幸「制憲議会選挙2013(10):中華街形成と中国プレゼンス
 ■タメル近くの中華街(谷川2013-11-14)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/01/05 @ 16:21