Posts Tagged ‘温暖化’
紹介:安倍泰夫『ネパールで木を植える』(3)
3 植林事業の大切さ
著者は,ネパールの山々の乱伐による荒廃と,それに起因する水不足・下痢蔓延を目にし,植林による森林再生事業に取り組んでこられた。30年にも及ぶ事業で,100万本もの苗木が植えられ,55万本が活着,森林が広がっていった。地域住民の生活・健康はむろんのこと,大きくは地球温暖化防止の観点からも,その業績は高く評価される。
私がネパール山地の荒廃を目にしたのは,1980年代半ばのこと。何の予備知識もないまま,初めてネパールを訪れた私にとって,ネパールはまるで神秘の国,驚きは想像をはるかに超えていた。
その一つが,山地の風景。文字通り「耕して天に至る」。日本の比ではない。丘や山は極限まで開墾され,田や畑になっていた。しかもなお,いたるところで伐採,開墾が行われている。
その結果,たとえば,どこに行っても急峻な山腹にはたいてい山崩れが見られたし,村々では女性たち―少女から老婆まで―が真鍮製の大きな水瓶を抱え,遠くの水場から休み休み水を運び上げているのに出会った。ヒマラヤをバックに絵にはなるが,見るに忍びない村の生活の現実であった。
こうした山地の開墾・荒廃はいたるところで見られたが,強く印象に残っている地域の一つが,著者の植林事業地トゥプチェ(トリスリバザール北方)の手前の「カカニの丘」周辺。
カカニは標高2030m,カトマンズから北へ25km位。そこへ出かけたのは四半世紀前。道はまだ狭くデコボコ,車はオンボロだったが,それでも首都から遠くはない。そのカカニに向けカトマンズから出て目にした丘や山は,下からほぼ頂上まで見事に開墾され,田畑や住居地になっていた。しかも,わずかに残った森林でさえ,あちこちで伐採され開墾が進められていた。いまいけば,丸裸になっているに違いない。
カカニ~トゥプチェ地域の現状は,グーグル映像―乾季撮影であろうが―を見ると,おおよそ見当がつく。茶色の山地が大きく広がっている。
■カカニ~トゥプチェ地域。山地も開墾(グーグル地図2022/02/06)
谷川昌幸(c)
「陽春」の丹後:天橋立とネパール料理店
新年早々,所用で丹後の村に行ってきた。以前だと,この時期,厳寒で積雪も多かったが,地球温暖化のせいか,最近は,そのようなことはほとんどなくなった。この正月も暖かく,村の田畑に積雪なし。驚いたことに,民家の石垣に生えたユリらしき植物が満開の花をつけていた。
■石垣のユリ(?)
陽気に誘われ村の名所「大内峠」に行き,「股のぞき」をすると,日本三景の一つ「天橋立」が,まるで春霞に包まれたかのように,ぼんやりと中空に浮かんでいるのが望まれた。右手の高峰,鬼の住む大江山(832m)にさえ積雪なし。
5日には,近くの町のインド・ネパール料理店に行ってきた。小さな町だが,メニューを工夫し頑張っている。丹後の文化も,大きく変わりつつあるようだ。
谷川昌幸(C)
干し柿全滅,異常高温のため
柿大豊作で喜び,干し柿をつくろうとしたが,カビが生え,ハエがたかり,全滅! 高温続きのためらしい。
■カビが生えハエがたかる/ハチもくる/まだ数珠なりの柿(11月17日)
私のようなド素人の日曜農家だけでなく,村の専門農家が熱湯殺菌,アルコール消毒,硫黄蒸し,その他それぞれの秘伝を駆使して干した柿も,ほぼ全滅だそうだ。異常気象と言わざるをえない。
今日,11月17日も,20度以上。柿はまだまだたくさん木に残っている。山も豊作なのか,サルもクマもカラスも里には下りてこない。残った柿は,もったいないが,熟して落ちるに任せるしかない。
今年がこれでは,来年は凶作だろう。異常気象に苦しめられるのは,人間よりもむしろ,野の草木や動物たちだ。
【参照】柿、未曾有の大豊作の不気味
谷川昌幸(C)
GDP9.9%喪失,地球温暖化により
アジア開発銀行「南アジア気候変動コスト評価」(2014)によれば,南アジア諸国は,2100年までに,地球温暖化によりGDPの8.8%を毎年失うようになる。最悪の場合は,24%に達する。
ネパールは損失GDP9.9%で,モルディブ(12.6%)の次に被害が大きい。温暖化で,米生産は16%程度増えるそうだが,洪水や土砂崩れなど,被害の方がはるかに大きいことにかわりはない。
ここ関西でも,地球温暖化は,日々実感するところだ。丹後のわが村では,かつては冬には1m以上の積雪があったが,近年は降ってもすぐ消える。雨も少ない。「うらにし(北西季節風曇天)」だ,「弁当忘れても傘忘れるな」と自虐的に言い交わすのが慣例だったのに,最近は,よそで降っていても,丹後では降らない。信じられない激変。
地球温暖化は,どこまで人為的要因によるのか分からないが,素人でも感じられるほどだから,危険レベルに達していることはまちがいない。
といっても,無限の高度経済成長や,贅沢三昧,資源浪費生活は,やめられない。結局,天罰にまたざるをえまい。因果なものだ。
谷川昌幸(C)
コメントを投稿するにはログインしてください。