ネパール評論

ネパール研究会

ジリ貧新聞の校正不足

部数減でジリ貧の新聞に,このところ木材パルプ浪費・自然環境破壊の巨大全面広告が増加しているのに加え,伝統的な言語文化環境の破壊と思われるような記事も目立ち始めた。

たとえば,この新聞の1面トップ記事。これを目にしたとたん,どこか居心地の悪いような,むずかゆいような,感じがするのを禁じえない。政官財界の英語帝国主義拝跪の時流に棹さすなら,いっそのこと,こう校正すべきではないか?

むろん,以上は,あくまでも日本語表記の問題であって,記事内容にかかわることでは一切ない。念のため。(参照:英語帝国主義

追補】3月25日付朝日新聞朝刊の場合,大阪本社兵庫版は,全28頁のうち8頁が全面広告。これらに加え,紙面下部1/3~1/5程度の広告もほぼ全頁に掲載されている。まるで広告を購読しているみたいだ。
ちなみに,東京本社ネットビューアー版では,全24頁のうち全面広告は4頁のみ。環境保護と精神衛生のため,宅配新聞はやめ,ネット版に切り替えた方がよいかもしれない。
ネット版は,PDFなので目に優しく,読みやすい。印刷すれば,紙面は宅配版とほぼ同じで,しかも広告面は自在にカットできる。
さらに加えて,購読料も,宅配より,実質的には,はるかに安い。宅配新聞は,存在意義を失いつつある。

【追補2】朝日4月1日朝刊は,全26頁のうち5頁が全面広告。特に,新聞広告としてスゴイのが,この見開き2頁全面広告。衝撃的!

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/03/21 at 10:20

ネパール憲法AI探訪(18): 国旗の図像学(5)

4.神秘の「3」と「3角形」
ネパールは,1990年以降の2回の人民運動(民主革命)により専制君主制を連邦民主共和制に変え,国歌も変えてしまったのに,国旗だけは変えなかった。なぜか?

理由はいくつか考えられるが,最も根本的なのは,ネパール国旗それ自体の持つ特異な魅力と,それに象徴される独立国家ネパールへの誇りであろう。ネパール国民は,立場を超え,3角形国旗の神秘的シンボリズムに魅了され,それを掲げることに誇りを感じてきたのだ。

(1)数「3」の神秘
ネパール国旗の根幹をなすのは,「3」と「3角形」。古来,この数と図形は,他には無い特別な意味を持つものと考えられてきた。ここでは,まず数「3」から見ていくことにしよう。

数の「3」は,敬愛する『新明解国語辞典』によると,「2より1つだけ多い数」とのこと。あれあれ,それだけ! たしかにそうには違いないが,これでは実質的な語釈にはなっていない。親切・明解な辞典だが,「3」については,語釈に手を付け「神秘」の深みに引き込まれるのを恐れたのかもしれない。ことさほどに,「3」は神秘的な数なのだ。

この「3」という数は,いうまでもなく1,2の次に来る正の自然数。これは,ごく素朴に考えるならば,まず初めに「1」が現れ,次にそれとは別の「2」が現れ――あるいは,それに別の何かが加わって「2」となり――,そして最後に,これら「1」と「2」が総合されて「3」となる,ということである。

この「1」,「2」,「3」の組み合わせや,「3」特別視の事例は,古今東西,無数にある。たとえば――
キリスト教:三位一体(父・子・精霊)
ヒンドゥー教:三神一体(ブラフマ・ヴィシュヌ・シヴァ)
仏教:三宝(仏・法・僧),釈迦三尊
中国:三才(天・地・人)
日本:三貴神(アマテラス・スサノオ・ツクヨミ)
プラトン:魂3分説(理性・気概・欲望)
ヘーゲル・正反合(定立・反定立・総合)
時間:過去・現在・未来,朝・昼・夜
空間:縦・横・高さ
自然:物質三態(個体・液体・気体),光3原色(赤・緑・青)
統治:3権(立法・行政・司法),3審制
社会:三が日,三々九度,3本の矢,三役,日本三景

以上は,「3」特別視のほんの一部にすぎないが,これらを見ただけでも,「3」が,古来,いたるところで神秘的にして神聖な数と見られてきたことは,明らかである。

(2)3角形の神秘
この「3」を最も直截的に図形化したのが,3点を3直線で結ぶ「3角形」であり,これも,古来,いたるところで神秘的にして神聖な図形として使用されてきた。たとえば――
エジプト:ギザの三大ピラミッド
古代ギリシャ:ピタゴラスの3角形
ユダヤ教:ダビデの星(二重3角形)
キリスト教:三位一体象徴としての様々な3角形図形
ヒンドゥー教:寺院の3角旗,スリヤントラ(9個の3角形)
フランス:ナポレオンの3角形,ルーブル美術館ピラミッド
日本:神社3柱鳥居,寺院3角破風,「麻の葉」模様

たしかに,「三角形について不思議なことは山ほどある」(細谷治夫『三角形の七不思議』講談社,2013,p.3)。

 ■Hindu symbols triangle (Google)
 ■Christian symbols triangle (Google)

(3)象徴としての3角旗へ
「3」や「3角形」にこのような神秘的な魅力があるとすれば,個人や集団などを象徴する旗として3角旗が多用されるようになったのも当然といえる。たとえば――
南アジア:ヒンドゥー教寺院や仏教寺院の3角旗,植民地化以前の諸王国の3角形国旗
ヨーロッパ:騎士や船舶が3角旗(ペナン,ペナント)多用
中国:春節3角旗,墓参用3角形白紙・白布
日本:寺院の3角旗,葬儀での三角形白紙・白布
現代:野球などのペナントレースで争奪される3角旗(ペナント)
*参照:井本英一「三角表象の前史(1)」大阪外大論集,No.7;須田武郎『騎士団』新紀元社,2007

【本頁,AI不使用】

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/03/18 at 14:49

「無としての死」の疑似体験

全身麻酔を,先日,初めて体験した。

生来,小柄・痩身ながらも健康で大病知らず,麻酔とは無縁であったが,昨年,喜寿を過ぎたころから,身体に故障が出始めた。耐用年数を超えたらしい。

先日も,胃腸の調子が悪くなった。やむなく病院に行くと,内視鏡検査が必要といわれ,麻酔をかけられてしまった。初の全身麻酔!

この全身麻酔は,不思議な体験であった。これまで麻酔は,夜,眠るようなものだと,なんとなく思っていた。睡眠であれば,眠くなり,時々は夢を見たりしながら寝入り,やがて目が覚める。このような睡眠であれば,「夢現(ゆめうつつ)」のときがあるからか,多かれ少なかれ覚えており,後から思い出すことができる。

ところが,先日の全身麻酔では,突然,何の予兆もなくスパッと意識が消え,「ハイッ,終わりましたよ!」という看護師さんの声で目が覚めた。その間のことは,まったく何一つ記憶にない。完全な無,「絶対無」なのだ!

これはいったい何だろう? 全くの「無」ーーもし目覚めなければ,永遠に,そのままだったはずだ。このようなもの,いや,この「無」こそが人の「死」ではないのか?

人の死については,生死の間にあるとされる「臨死体験」などを根拠として,身体は滅しても,魂は天に昇ったり輪廻転生したりして何らかの形で永続するのだから,決して人の「死」は「無」となることではないと,古来,多くの人々が信じてきた。

が,本当だろうか? 魂ではなく,身体の方であれば,死後,有機分解されて自然に帰り,再び,他の生物へと再生する。巡り巡って他の人の身体となるかもしれない。その意味では,身体は死によって「無」にはならない。これは明白。

これに対し,「私」という自己意識や魂の方は,残念ながら,「身体」の場合のような形では,残らないはずだ。

むろん,人の様々な行動の成果が,文化・文明の一部として,あるいは子孫として,死後も後世に残ることは確かである。しかしながら,それは,自分を自分として意識する当の「私」,自己意識としての「自我」そのものが,自分の死後も残ったり再生したりすることを,決して意味しはしない。

「私」,すなわち「私」という自己意識ないし魂そのものは,麻酔でスパッと意識が消えてしまったように,死により消滅し「無」となってしまう。人は,誰であれ,「1回限りの自己」を,宿命として,生きざるをえない。それは奇跡であり,だからこそ無限に尊いのだ。

先日の全身麻酔は,私にとって,死の疑似体験であった。もし本物の死であったならば,それについては,もはや永遠に何も語ることは出来なかったはずだ。死は,本人にとっては,何もなくなる「絶対無」だから・・・・

 ■「死」直視を迫る墓じまい(2023)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/02/24 at 18:26

カテゴリー: 健康, 宗教, 文化

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文化災害:朝のシェイクアウトで右往左往

今朝,スマホがケタタマシク鳴ったので,何事かと驚き画面を見ると,「シェイクアウト」緊急警報であった。えっ!!, シェイクアウト・・・・⁇

驚いて,手元の電子辞書(十数年前購入)を引いてみると,「大辞林」には,この語は無し。「ウィズダム英和」では―

shakeout = 株価暴落大改変

そうか,株暴落の緊急警報か,これは大変だ,とビックリし,あわててネットを見ると,株など,暴落してはいない。むしろ,バブル以来の高値,絶好調だ。

変だなぁと思って,スマホ画面をよく見ると,この緊急警報は,阪神淡路大震災記念日(1月17日)に合わせた防災訓練の一環であった。

むろん,震災記念日に避難訓練をするのは,効果的だ。が,避難訓練であれば,誰でもスグ,それと判るような,平易な言葉で警報を出すべきではないか? それなのに,少しばかり古いとはいえ,辞書にも載っていないようなカタカナ用語でーー

シェイクアウト! シェイクアウト!

と絶叫する。が,こんな,わけが分からん舶来カタカナ語では,訓練にも何にもならない。このような「人為的な文化劣化による文化災害」を防止しなければ,人為では如何ともしがたい多くの自然災害に効果的に備えることもまた難しくなる。

文化災害を防止し,自然災害に備えよ!

宝塚市総合防災課

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/01/17 at 18:40

ネパール憲法AI探訪(17): 国旗の図像学(4)

3.ネパール国旗の数学的魅力(2)
ネパール国旗は,数学教育教材としても,あるいはまた旗愛好家たちの話のタネとしても,興味深い図形として盛んに取り上げられている。以下,いくつか紹介する。

①最もよく見られていると思われるのは,ケンブリッジ大学のジェームズ・グリム博士のユーチューブ動画。「憲法付則1」の記述を読みながら,定規とコンパスを使い,国旗が描かれていく。

時間経過を示すためか,時々,教室正面の壁時計が映される。博士の作図は極めて要領がよく全く無駄がないのに,所要時間は,何と30分以上! ユーチューブでは,もちろん早送りで時間短縮してある。ぜひご覧いただきたい。

The Most Mathematical Flag(YouTube)

②「付則1」の記述を左欄に示しながら,それに従い,詳細かつ明快に作図しているのは,次のYouTube動画。

■Nigu, How to Construct Nepal’s Flag

③初等・中等教育向けとして興味深いのは,「House of Math 5」。ネパール国旗は,「最も数学的な国旗」の中の非対称的デザインの代表とされ,「すごくカッコイイ(so cool)」と絶賛されている。

House of Math 5

④幾何,代数,解析を1つに結びつけた動的数学ソフトウェアGeoGebraを用いてネパール国旗を描いたものとしては,次の2つが興味深い。作図完成まで1時間以上もかかるらしい。お急ぎの方は,早送り版をどうぞ。

■Ismy, Nepal Flag Construction with Geogebra(早送り2分)
■APH Tutoring, Flag of Nepal | Geogebra Construction(1時間)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/01/12 at 13:15

カテゴリー: ネパール, 情報, 憲法, 教育, 文化, 歴史

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ネパール憲法AI探訪(16): 国旗の図像学(3)

2.ネパール国旗の数学的魅力(1)
ネパール国旗は,その特殊な図形の故に数学者たちに注目され,数学的に厳密な説明を競わせている。が,誠に遺憾ながら,彼らが数学的説明を尽くせば尽くすほど,文科系人間の私には,訳が分からなくなってしまう。たとえば――

ダートマス大学のパワン・ダカール氏/ピーター・ドイル教授によれば,ネパール国旗は,数学的には――Mathematicaを使用して――次のような手順で描くことができるそうだ。が,私には全くもってチンプンカンプン,ネパール国旗は神秘的との思いが募るばかりだ。

 ■Construction of the Flag of Nepal in the Conjugate Coordinate System using Mathematica

あるいはまた,公開プログラミングサイトCodeGolfへの投稿(2023/08/06)によれば,ネパール国旗の縦横比は無理数であり,その値は次の計算式で算出できるとのことだが,これまた私にとっては理解不能,正誤の見当さえまるでつかない。

 ■Calculate the aspect ratio of the Nepal flag

さらにネパールからは,TUで数学や工学を学ばれたBikal Baral氏が,国旗の数学的作図手順をYouTubeで懇切丁寧に解説されているが,これも,とてもじゃないが,素人には理解できない。もう,お手上げ!

 ■https://www.youtube.com/watch?v=APXaq6i_3hs

ネパール国旗の数学は,私にとっては,残念ながら,神秘の帳の奥の奥なのだ。

  ・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・ ・・・・・  

▼無茶苦茶AI回答
この問題はあまりにも難解なのでAIに質問してみたが,全くダメ,無茶苦茶だ。ご参考までに,Bardとの質疑を掲載しておく。
質問】ネパール国旗の数学的分析?
Bard回答(2024/01/09)】
「ネパール国旗は、世界で最も複雑な国旗として知られています。その形状は、2つの三角形が重なり合ったもので、上部は赤、下部は青で塗られています。また、三角形の頂点には、黄色の太陽と白の月が描かれています。・・・・
形状の幾何学的分析:・・・・ネパール国旗の2つの三角形は、頂点が重なる部分で合成されています。この合成によって、ネパール国旗は、1つの三角形が2つの三角形に分割されたような形状になります。この形状の特徴は、以下の2つが挙げられます。
 ・頂点が重なる部分で、三角形の辺が直交する
 ・2つの三角形の頂点は、正三角形の中心と重なる
この特徴から、ネパール国旗は、幾何学的に非常に美しい形状であると評価されています。」

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/01/09 at 16:19

カテゴリー: ネパール, 情報, 憲法, 教育, 文化

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ネパール憲法AI探訪(15): 国旗の図像学(2)

1.「付則1」:数学的に厳密にして神秘的な国旗
ネパール国旗は,世界唯一,三角形の形をしているが,この図形は単に珍しいだけでなく,旗としては他に例を見ないほど数学的に厳密に構成され,神秘的とすら感じられるほどだ。

そもそも,国旗の作成(作図)方法を,「付則」とはいえ憲法そのもので,これほど詳細に明文規定している国は,ネパール以外には無いのではないか? ネパールは,ことさほどに国旗を特別視し,大切にしているのだ。

このことは,「付則1」を見れば,一目瞭然,誰しも驚きを禁じ得ないだろう。なぜネパールは,これほどまでに国旗デザインにこだわり,憲法にこまごまと書き込んだのか?

この疑問について考える前に,ここではまず,長く,込み入った文章ではあるが,「付則1」そのものを見ておこう。

なお,下記和訳では,意訳を多用した。「付則1」は,国旗の技術的に正確な作図そのものが目的。おそらく,そのためであろうが,公定英訳憲法も,この部分は多くが大幅な意訳となっている。その英訳に,ここでは習うことにした。


【ネパール憲法】付則1(第8条(2)関係)

ネパール国旗

ネパール国旗の作成方法
(a)縁取り内側の作成方法
(1)深紅の布の下部の点Aから,右に向け,所要の長さの直線ABを引く。
(2)Aから,上方に向けABに垂直な直線ACを引き,ACの長さが,ABにABの3分の1を加えたものと等しくする。AC上に点Dをとり,ADをABと等しくする。BとDを結ぶ。
(3)BD上に点Eをとり,BEをABと等しくする。
(4)AC上の点Fから,ABと並行に右に向け,Eを通りABと等しい長さの直線FGを引く。
(5)CとGを結ぶ。

(b)月の作成方法
(6)AB上に,点AからABの4分の1の長さとなる点Hをとり,HからACに平行な直線を上に向けて引き,CGと交わる点をIとする。
(7)CFの中間に点Jをとり,JからABと平行な直線を引き,CGと交わる点をKとする。
(8)JKとHIとの交点をLとする。
(9)JとGを結ぶ。
(10)JGとHIとの交点をMとする。
(11)Mの下方のHI線上に点Nをとり,MNを,Mから直線BDまでの最短距離と等しくする。
(12)点Mを通る直線をAC上の点Oから右方向へ,ABと平行に引く。
(13)中心をL,半径をLNとする半円を下方に描き,それが直線OMと接する点をそれぞれP,Qとする。
(14)中心をM,半径をMQとして,PとQに接する半円を下方に描く。
(15)中心をN,半径をNMとして上方に円弧を描き,それと円弧PNQとの両端の接点をR,Sとする。RとSを直線で結ぶ。RSとHIとの交点をTとする。
(16)中心をT,半径をTSとして,円弧PNQに2点で接する半円を上方に描く。
(17)中心をT,半径をTMとして,円弧PNQの上方に,それと2点で接する円弧を描く。
(18)この付則の(16)で描かれた半円の内側と(17)で描かれた円弧の外側との間にあるスペースに,相似の月光三角形を8つ描く。

(c)太陽の作成方法
(19)直線AFを2等分する点Uから,ABと平行な直線をBEと交わる点Vまで引く。
(20)HIとUVが交わる点Wを中心とし,半径をMNとする円を描く。
(21)中心をW,半径をLNとする円を描く。
(22)(20)の円と(21)の円の間の空間に,等しく相似な12個の太陽光三角形を描き,それらのうちの2つの三角形の頂点各1が,直線HIに接するようにする。

(d)縁取りの作成方法
(23)縁取りの幅は直線TNの長さと等しくする。縁取りは濃青色で,旗の全周をこれで囲む。ただし,旗の5つの角の部分については,[幅ではなく]外側の角と対応する内側の角がそれぞれ等しくなるようにする。
(24)旗に綱をつけて使用する場合は,上記の縁取り部分をそれに供する。また,竿に通して掲げる場合は,AC側の縁取り部分に設けられる筒穴を所要の大きさにすることができる。

説明:直線HI,RS,FE,ED,JG,OQ,JK,UVは補助線。同様に,太陽の外円と内円,および三日月を除く他の円弧も補助線。これらは国旗には表示されない。

注:ネパール国旗の大きさは,ネパール政府により決定されるものとする。


谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/01/07 at 10:28

ネパール憲法AI探訪(14): 国旗の図像学(1)

ネパール憲法は,第8条で国旗(राष्ट्रिय झण्डा)について規定している。

ネパール国旗は,世界唯一の三角形の国旗とされており,図像学的に見ても,それ自体,歴史的・文化的・政治的に大変興味深い国旗である(参照:国旗一覧)。

ネパールがこのような特徴的な旗を憲法で国旗と定め,国民として敬意を払い,保持してきたのは,なぜか? 憲法理解の観点から,ごく基本的な国旗図像解釈の要点をいくつか見ていくことにする。

ネパール憲法
第8条 ネパール国旗(राष्ट्रिय झण्डा)
(1)ネパール国旗は,濃青色で縁取られた深紅色の2つの三角形を一部重ね,上部[の三角形部分]には16の光線のうちの8光線を放つ白い三日月紋章が,また下部[の三角形部分]には12の光線を放つ白い太陽の紋章が付されているものとする。
(2)国旗の作成方法その他の関連事項は,付則1の通りとする。

■ネパール国旗(憲法付則1)

[追補]AI:大混乱からやや回復
昨秋のAIは大混乱,デタラメ回答乱発で,ほとんど使い物にならなかった。たとえば――
Bard回答(2023/12/11)
「国旗の色は、上部が赤、下部が青です。・・・・また、国旗の上部には金色の太陽、下部には金色の月が描かれています。太陽は王室、月は宰相一家を表しています。」
ChatGPT回答(2023/12/11)
「ネパールの国旗は・・・・二つの三角形が組み合わさった特異な形状をしています。・・・・これは、両側が三角形で構成され、中央が二重の三角形であることを意味します。・・・・中央の三角形は、国旗の中央に大きく配置されており、その中にさらに小さな白い三角形が描かれています。・・・・白い三角形の中には、太陽と月が描かれています。」

どうしてこんなデタラメ回答になったのか? しかとは分かりかねるが,おそらく昨夏ころからAIによる著作権やプライバシーの侵害が欧米で大問題となり,AI側が情報の収集・分析を自粛したことが,主な原因の一つではなかったかと推測している。とにかく,メチャクチャ,AI回答の相当数がそのままでは使い物にならなかった。

ところが,ありがたいことに,年末・年始を過ぎると,AIは急速に平静を回復し始め,回答も安定してきた。このまま改善されていけば,AIは,誤り多き人間の有能不可欠の助手として大いに活躍してくれるにちがいない。大いに期待している。

以下,本稿でも,誤りには十二分に用心しつつ,AIを最大限活用し,ネパール憲法の考察を進めていきたい。むろん,AI使用部分は,そのつど明記する。

【参照】国旗の変更 ヒンズー教王国象徴としてのネパール国旗

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/01/03 at 18:42

TwitterからXへ:改称の「神」秘への不安

「Twitter」が「X」に名称変更されたのは,2023年7月24日。この改称には当初から違和感があり,それが時とともに減少するどころか,逆にますます拡大してきた。「なぜだろう?」と不思議に思っていたのだが,クリスマスが近づいてきて,「あぁ,そうだったのか!」と,自分なりにその理由を得心させられるに到った。

■TwitterからX

「Twitter」は,「さえずる/さえずり」という意味で,140字の自由投稿アプリに相応しい命名であり,楽しく有意義に利用させていただいていた。ところが,これが「X」へと改称されると,もはや,そうはいかなくなった。

「Twitter」を買収したE・マスク氏は「X」への改称を,あらゆる情報のためのスーパーアプリ(everything app)とするため,と説明した。ドメイン「x.com」を所有し,「スペースX」を創設したマスク氏らしい。

が,小心臆病の私には,そのような万能スーパーアプリをめざす「X」は,当初から,どことなく薄気味悪く,怖気づかざるをえないようなものだった。「ニッポニカ」百科は,文字 “X” について,こう説明している―

「Xはキリストを表し,クリスマスはX’masと書くことがある。化学ではキセノンの元素記号であり,数学ではXは第一未知数(量)を表し,そこから転じて未知の人間や事物を示すのに用いられる」(斎藤公一)。

X」は,始原であり無限であり未知,そして(キリスト)である。

■ツイッター開始画面:暗黒=無から神の如く出現する「X」。[背景が白⇒黒と変化することもある]

マスク氏自身は,「X」アプリが宗教的意味を持つとは言っていないが,それが “あらゆる情報のためのアプリ” を目指すとすれば,そこに宗教的な意味が生じてくるのは自然であり必然ともいえよう。「X」が,アクセスのたびに,多かれ少なかれ「怖れ」を感じさせるのは,そのためなのだ。

クリスマスが近づき,巷にあふれる “mas” を目にするようになってはじめて,「あぁ,そうだったのか!」と気付かされた次第。いまさらながら。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/12/17 at 09:32

カテゴリー: 言語, 宗教, 情報, 文化

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丹後半島の晩秋

11月末,久しぶりに郷里に帰り,丹後半島を回ってきた。すでに晩秋とはいえ,温暖な好天続きだったせいか,紅葉がまだ残り,山や村を美しく彩っていた。

231203a 231203b■大内峠から望む天橋立 / 与謝野晶子歌碑

231203c■丹後町宇川

231203d■丹後町・弥栄町境界付近

丹後半島は,冬には数メートルもの雪が積もる豪雪地帯で,かつては日本三大秘境の一つとされていた。それでも日本海沿いに点在する漁村と内陸山地の村々との間には,山地を縫ってクネクネ上下する細い生活・交易路がいくつかあり,日常的使われていた。

ところが,高度成長が始まり,遠回りでも便利な車道が整備されていくと,古来の山道は敬遠され,ますます不便となった山道沿いの小集落からは住民が一家族また一家族と離れていった。

今回,たどってみた宇川沿いの山道もその一つ。山地の細いクネクネ道だが,数十年前までは,そこそこ整備され,道沿いには住居も何軒かはあった。

とりわけ感動的だったのは,その道から枝分かれした,さらに細い道の先の谷間に小集落があり,そこに小さなキリスト教会があったこと。まるでエデンの園

ところが,数年前,その山道を登り,分岐点まで行くと,枝道の方に「補修中につき通行止め」の看板が出ていた。その時は,一時的な通行止めで,先の谷間の集落はあるに違いないと思っていた。が,今回行ってみると,「通行止め」看板はそのまま。どうやら「エデンの園」のような谷間の小集落は教会ともども廃村となり,無くなってしまっていたらしい。

残念だが,仕方なく通行止めの枝道は諦め,まだ何とか通れる小川沿いの山道を登っていくと,道端に数件の廃屋がかろうじて残っていた。が,荒廃は無残なまでに進行。この冬の豪雪には,もはや,とうてい耐えられそうにはない。

その道端には,お地蔵さまがただ一人,笑みをたたえ,ひっそりとたたずんでおられた。

231203e ■丹後町小脇

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2023/12/03 at 17:33

カテゴリー: 社会, 自然, 文化, 旅行, 歴史

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