ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

倉吉の趣のある町並みと震災

鳥取県の倉吉は,2016年10月21日の「鳥取中部地震」で震度6弱の揺れに襲われ,大きな被害を受けた。その倉吉に「鳥取復興割」を利用して行ってきた。

倉吉は初めて。なかなかユニークな町で,こんな壁画が表通りにドーンと描かれている。

この近くには,白壁土蔵の並ぶ「重要伝統的建造物群保存地区」があり,趣がある。古い建物が多いため,白壁などにかなりの地震被害が出ていた。

また寺院でも,山門や墓所など被害は大きい。民家や事業所ビルなどは,地域や建物により被害状況は大きく異なる。地盤や建物の構造によるのだろう。

倉吉の震災復興は,豪雪の冬が終わるこれから本格化するのであろう。ユニークで趣のある町,倉吉。一日も早い復興を願っている。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/03/11 at 20:38

カテゴリー: 旅行

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地方を744地区に区割り

プラチャンダ内閣は3月5日,地方再構築委員会(LLRC)提出の地方区割(local unit)案を修正のうえ採択した。

LLRCは当初,地方を719地区に区割する案を提出したが,マデシ諸党がこれに激しく反発,5月地方選挙ボイコットを宣言したため,プラチャンダ内閣は,第2州を中心にさらに25地区を追加して全国を744地区に区割することにした。この閣議決定は公報掲載をもって施行される。([3月15日追記]マハ・ナガル4,ウパ・ナガル13,ナガル246,ガウン481,計744)

▼閣議決定された地方区割(区割追加郡のみ)
  郡  LLRC案⇒閣議決定
 サプタリ 12⇒17
 シラハ 12⇒17
 ダヌサ 13⇒17
 マホタリ 14⇒15
 サルラヒ 16⇒17
 ラウタハト 15⇒16
 バラ 13⇒15
 カトマンズ 9⇒11
 マナン 3⇒4
 バジャン 11⇒12

5月14日投票のための区割追加とはいえ,いかにも泥縄。しかも,線引きの基準として人口を第一にすることにはそれなりの根拠がある半面,人為的設計主義となるおそれが多分にある。地域の伝統や文化は,この地方区割にどの程度反映されるのであろうか?

 ■WIKIより(2017-03-10)

*1 “Govt okays taskforce proposal for 744 local units,” Republica, 5 Mar, 2017
*2 “Govt brings bill for delineation of electoral constituencies,” Republica, 9 Mar, 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/03/10 at 15:15

カテゴリー: 選挙, 行政, 議会, 憲法

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監視カメラの警察使用,朝日が肯定的に報道(2)

朝日新聞は,大阪版夕刊に前述の記事を掲載した3日後の2月19日,今度は総合ページに大野博人編集委員のコラム「日曜に想う」を掲載した。タイトルは「『安全のため』奪われる自由」。これは,夕刊記事とは全く対照的な内容であり,その意味では,朝日新聞はバランスがとれている。

大野委員はこのコラムにおいて,オリバー・ストーン監督映画「スノーデン」や思想家ツベタン・トドロフ著『屈服しない者たち』を引照しつつ,「安全のため」という口実を認めることが,特に現代において,いかに危険かを鋭く指摘している。

≪[映画「スノーデン」において]「たいていの米国人は自由より安全を望んでいる」と米情報機関の幹部が話す。・・・・自分も監視されている,どこで何を見られているか分からない,丸裸にされている――。・・・・テロ対策という当初の目的からはみ出して,政治権力の監視活動はどこまでも暴走する。「安全のため」という口実を人々が受け入れ続ける限り。≫

≪トドロフ氏によると,政治権力が市民監視にのめり込むのは「すべてを知ることは,すべての権力を握ることにつながる」と考えるから。また,だれかが自分を監視しているとつねに意識する社会では,人と人との間の信頼が消滅するとも指摘する。人々が連帯しない社会。それこそ権力が思いどおりにしやすい社会である。」≫

≪政治家が声高に「安全のため」を語るとき,本当は自らの権力強化のためではないのか。「安全のため」なら仕方がないと思ったとたん,からめ取られているのかもしれない。なぜなら,あなたも私も普通の市民の大半は監視する側ではなく,監視される側になるのだから。≫

ここで大野委員は,権力による監視への警戒を訴えている。たしかに,それはそのとおりであり,その重要性はいくら強調しても強調のし過ぎではない。しかし,現代における行動監視の恐ろしさは,権力による監視が万人による監視とあい手を携えて進行し始めたところにあるのではないか? 

いまでは,情報技術の革命的進歩により,行動監視は一般市民でも容易に実行できるようになった。小学生程度の知識と技術があれば,お小遣い程度の費用で,いつでも,どこでも他人の行動を簡単に監視できる。万人による万人の監視社会――その夢が今まさに実現しつつあるのだ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/03/08 at 15:40

カテゴリー: 社会, 情報 IT, 人権

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監視カメラの警察使用,朝日が肯定的に報道(1)

朝日新聞(大阪版夕刊2月16日)が,監視カメラ記録映像の警察捜査利用に好意的な記事を1面に大きく掲載している。見出しは次の通り。
 防犯カメラ 捜査の目に
 大阪府警,自治体と異例の協定
 映像入手 事前連絡は不要
 夜間の初動に効果的

これらの見出しだけで,記事の趣旨は明確だ。記事によれば,大阪府内の自治体設置または設置補助の監視カメラは1万9944台(2016年3月末)。その記録映像を,大阪府警は,必要な時には事前連絡なしに自由に引き出し,見ることが出来るのだそうだ。

この記事には,専門家2氏のコメントも付されているが,いずれもごく短く,検証の仕組みや法整備を求めてはいても,警察による自治体設置・補助監視カメラの使用そのものを否定するものではない。朝日お得意の,公平のみせかけためのエクスキューズのようにみえる。

大阪圏の街頭監視カメラは,これまで幾度か指摘してきたように,急速に増大している。その記録映像を警察が,事実上,自由に使えるとなれば,市民は可能的には常に警察に監視されていることになる。しかも,顔(身体)自動識別技術の革命的進歩により,映像の個々人を瞬時に特定し,その行動を記録し追跡できるのだ。

むろん大部分の人は「善良な市民」であり,警察が彼らすべてを常時監視することはない。しかし,問題はむしろ,この「可能的監視」そのものにある。警察が事前連絡すらなく監視カメラ映像を利用できるとなれば,市民すべてが,警察により,いつ,どこで見られ,記録され,追跡されているか分からない,という状況に置かれる。

ここには,もはやプライバシーはなく,プライバシーを前提とする個人の自由も権利もない。われわれは,自分たちの自由や権利を守るため国家をつくり,個々人の安全保障のための権力行使を国家諸機関に信託した。ところが,いまや国家諸機関が「国民の安全」のために個々人のプライバシーを奪い,自由や権利を否定しようとしているのだ。

ブラックユーモアのようだが,いまや大朝日ですら,大真面目に,万人監視カメラの効用を一面トップで大々的に報道するに至った。もはや「隠れて生きる自由」は取り戻せないのではないか?

 170304■朝日大阪版夕刊2月16日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/03/04 at 12:07

憲法改正案,審議開始

ネパール議会は2月23日,マデシ諸党を中心とする諸要求に応えるための憲法改正案の審議に入った。
 ▼内閣提出改憲案の要旨⇒⇒憲法改正案,審議入りか

この改憲案は,すでに2016年11月29日に議会に提出されていたが,マデシ諸党は要求が反映されていないとして,また最大野党UMLは反立憲的で国益に反するとして,議会審議に反対してきた。しかし,プラチャンダ内閣が地方選を5月14日投票と決め発表したため,議会としても,その大前提としての憲法改正に着手せざるを得なくなったのである。

こうして憲法改正案の議会審議が強引に開始されたので,それに不満の諸党派が15の修正案を議会に提出した。主なものは,第2州を中心とする諸州の区画変更,上院議員の比例制選出,母語の憲法明文規定など。

これらは,民族,カースト,ジェンダー,地域など様々な利害が複雑に絡む問題であり,しかも憲法が包摂原理を採用しているため,現行憲法でもすでに十二分に複雑で長大な規定になっている。そのため,この問題に関する議論の理解は容易ではない。また,憲法改正には議会での三分の二の賛成が必要であり,改正案が通るかどうかも定かではない。

そこで,ここでは改正問題の詳細に立ち入ることは控え,議会審議の行方を見守ることにしたい。

 170301■ネパール政府HPより

*1 “Constitution Amendment Bill gets 15 amendment proposals,” Himalayan Times, February 26, 2017

谷川昌幸(C)

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2017/03/01 at 11:58

カテゴリー: 選挙, 議会, 憲法, 民族

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地方選,5月14日投票

プラチャンダ内閣は2月20日,地方選挙(ナガル[市町]ガウン「村」議会選挙)の5月14日実施を決定した。
[地方選日程]
  4月29日:立候補受付開始
  4月30日:立候補への異議申立受付開始
  5月1日:立候補者仮名簿発表
  5月2日:立候補者確定名簿発表。選挙シンボル配布。選挙運動開始。
  5月12日: 選挙運動終了
  5月14日:投票
 (注)
  *地方自治体総数 旧制度3334(ナガル217+ガウン3117)/新制度714
   旧制度から新制度への移行が可能かどうか不明(参照:地方選,5月実施?
  *議席総数:約3万4千 投票ブース:約2万1千
  *選挙実施要員:約26万人

この発表通り地方選が実施されれば,20年ぶりとなる。前回選挙は1997年5月に実施され,任期は2002年まで。その後,ギャネンドラ国王が2005年選挙実施を試みたが,国王親政に反対する諸政党がボイコットし,事実上,実施できなかった。

現行2015年憲法で現議会の任期が2018年1月21日までと限定されているので,それまでに市町村,州,連邦の3レベルの議会選挙を実施せざるをえない。地方選挙の5月14日実施は,切羽詰まったギリギリの日程である。

政府は2月20日,選管に地方選実施予算103億ルピーを割り当て,さらに必要な予算は追加支出することを決めた。ちなみに,リパブリカ記事(2月25日)によると,2013年制憲議会選挙の総経費は46億ルピー,そのうちネパール政府支出は12億6千万ルピー,外国援助が30億ルピーだったという。(他に日本が投票箱5万個,印が車輌48台,UNDPが有権者ID票作成など,諸外国が様々な選挙支援を行った。)

このように2013年制憲議会選挙ではネパールは諸外国に多くの選挙支援を仰いだが,今回は,外国支援は受けないことを決め,選管が2月23日,内外の関係諸機関にその旨通知した。選管筋によれば,諸外国はそれほどカネを出さないのに,援助宣伝の方は熱心にやるという。選挙は,国家の重要任務だから,国家予算で実施する,というのである。

選挙支援の過度の宣伝利用の真偽は別として,主権国家の選挙への外国支援は,あまり好ましいことではない。自分たちの代表を自分たちだけでは選出できないという事態は,国民として情けなく自尊心を著しく傷つけられる。選挙は,やはり自分たちで実施すべきだ。

たしかに,それはそうだが,この地方選のあとには,州議会選挙と連邦議会選挙が控えている。外国援助なしで,本当に実施できるのだろうか?

さらに,これに加えて,より難しいのが,マデシ諸勢力が要求している憲法改正。第2州を中心に,州や市町村の区画が不利だとして,彼らは選挙以前に憲法を改正することを要求している。もしこの要求が通らなければ,彼らは選挙をボイコットし,抗議行動を展開すると警告している。

この憲法改正は,選挙費用よりもはるかに難しい課題だ。またまたインドが介入するかもしれない。地方選挙までに,マデシ諸勢力を納得させられるような憲法改正が本当に出来るのであろうか?

 170227■選管HPより

*1 “Nepal to hold first local elections in 20 years,” AFP, Feb 21, 2017
*2 “NEPAL TO HOLD FIRST LOCAL ELECTIONS IN 20 YEARS,” REUTERS, 2/23/17
*3 “Nepal to hold elections in local bodies on May 14,” Himalayan Times, February 20, 2017
*4 “Local elections on 14 May,” Nepali Times, February 20th, 2017
*5 “EC releases 16-day schedule for local elections,” Kathmandu Post, Feb 22, 2017
*6 “EC not to accept foreign aid for local polls,” Republica, February 25, 2017
*7 “EC prefers local resources over external help for upcoming polls,” Himalayan Times, February 24, 2017

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/02/27 at 10:59

カテゴリー: 選挙, 憲法, 民族, 民主主義

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包摂民主主義の訴え,米大使(3)

テプリッツ駐ネ米大使が,こうした観点から,国交70周年メッセージにおいて厳しく批判しているのが,起草中の新しい「社会福祉開発法」。それは,民主主義に不可欠の市民社会諸組織(CSOs: Civil Society Organizations)の活動を不当に拘束するものであり,ネパール憲法にも国際法(結社の自由を保障する国際人権規約)にも違反するというのである。

テプリッツ大使は,国際法については違反するとだけしか述べていないが,憲法との関係についてはかなり詳しく説明し批判している。すなわち,ネパール憲法51(j)条は,社会的公正と包摂のための政策を政府に義務づけたうえで,それに不可欠のCSOsの透明で効率的な運営のための「単一窓口制(single door system)」の採用を規定している。ところが,起草中の新しい「社会福祉開発法」には,この「単一窓口制」に反する規定がある。もしこのまま制定されれば,CSOsは,設立・運営のため様々な役所の認可を得なければならないし,また外国援助事業には社会福祉委員会のややこしい認可が必要になる。

「単一窓口制は,適切に運用されるなら,CSO関係政府諸機関の間の軋轢や混乱を防止し,CSOsをしてその本来の役割を果たさせ,そして市民社会と国家の間の健全な関係を促進することになるだろう。ところが,起草中の新しい社会福祉開発法は,CSOsの活動に対し様々な機関から様々な認可を取得することを義務づけるものであり,これは憲法の定める『単一窓口制』に反する規定である。」

たしかに,ネパールの行政手続きは,「単一窓口制」が不可欠と思わせるに十分なほど不効率で,汚職腐敗も少なくないが,他方,ネパールにおけるCSOsの乱立,不正も目に余る。ネパール政府がCSOs,とりわけ外国支援CSOsの活動を把握し規制したいと考えるのは,独立国家の政府としては,当然のことだともいえる。圧倒的な超大国アメリカの駐ネ大使,テプリッツ氏のメッセージからは,独立国ネパールへのそのような配慮は全く感じ取れない。

テプリッツ大使は,国交70年メッセージをこう結んでいるが,この趣旨のことは,ネパール政府というよりはむしろ,本国アメリカのトランプ大統領にこそ向けて,まずは訴えられるべきではあるまいか。

「合衆国は,ネパールが人民の,人民による,人民のための民主国家として進歩することを支援するため,ネパールに関与し続ける。われわれは,すべてのネパール人が性,民族,宗教,カースト,居住地,そして経歴にかかわりなく,学習や健康や繁栄への平等な機会を共有するという国家理念を共有しているが,これは,米国のネパール支援継続により,単なる願望や夢ではなく,すべての人のために実現されるべき約束となるであろう。」

170224■在ネ米国大使館HPより

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/02/24 at 21:45