ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

ゴビンダ医師のハンスト闘争(15)

5.オリ共産党政権成立とその医学教育政策
(3)医学教育法案批判
 ①ガガン・タパ(コングレス党議員,元保健大臣)
 ②ディレンドラ・P・バドゥ(コングレス党議員)
 ③スシラ・カルキ(元最高裁長官)
 ④KB・マテマ(元「医学教育政策に関する上級委員会」代表,元トリブバン大学副学長,元駐日大使)
 ⑤ビシュヌ・P・アルヤル(ジャーナリスト)(以上前出
⑥カトマンズ・ポスト社説
ネパールの有力紙の一つ『カトマンズ・ポスト』は,7月16日付社説「悪しき処方箋:オリ首相公約は万人の繁栄保障だが,医学法案は一握りの人々の暴利をもたらすだけだ」において,政府案を完膚なきまでに批判している。少々長いが,重要部分を抜き書きしておく(“Wrong prescription: PM Oli’s stated goal is to ensure prosperity to all but medical bill will profiteer only a tiny section,” Kathmandu Post, Jul 16, 2018)。

「この法案[医学教育法案]がネパール全体の医学教育改善ではなく,少数の事業家や彼らとコネのある政党政治家に利益をもたらすことを第一の目的に起草されたことは,いまや周知の事実である。反対派を特に怒らせたのは,この法案が前回のKC医師ハンスト時に政府がすでに決めたことの撤回に他ならないからである。」

「政府がなすべきは,この法案を撤回し,各方面の意見を広く聴取し,それを修正することである。以前には,保健医療教育法案に関する意見聴取のためマテマ委員会が組織された。今回も,医学界の優れた人々を委員とする同様の委員会を組織すべきであろう。今の法案は致命的な損傷を受けている。政府と社会の間で合意を形成し信頼を回復するには,多大な努力が必要である。」

「オリ首相は,かつてネパール全人民の繁栄こそが第一の目標だと述べた。が,現在の法案は,ほんの一握りのネパール人が大多数の人々を犠牲にして利益を得るようなネパールを目指しているように見える。この法案が可決され法律となれば,貧弱な教育環境にもかかわらず多額の授業料を学生からとる医大の開設が可能となる。医大は首都や他の大都市にだけ開設され,貧しい地域には何の便益ももたらさないだろう。」

「オリは良い統治の確立を目指すとも言った。しかし,この法案はコネ資本主義と結託した法による支配の蔓延をもたらす恐れのあるものであり,悪しき統治の典型にほかならない。この法案が可決されれば,人々は政府への信頼を失い,公約の諸目標を実現する意思が政府にあるのか疑うであろう。この法案は撤回し,これ以上の先送りをせず,意見を広く聴き,改めて法案を起草しなおすべきである。」

参照ネパール医学士(MBBS)取得こそ,インド学生にとって最善の選択
なぜネパール医学士取得がお勧めなのか?
 ⇒提出書類準備が容易,ビザ不要,授業料が印・米・英・加などより安い,カリキュラムが印に近く高水準,TOEFL不要
ネパール有名医大の最低必要学費(2018年)
   医科大学[認可提携元大学]: 最低必要学費(1 Lakh=10万ルピー)
1 Nobel Medical College, Biratnagar [Kathmandu Univ] : 50 Lakh
2 Universal College of Medical Sciences [Tribhuvan Univ]: 55 Lakh
3 KIST Medical College, Imadol, Lalitpur [Tribhuvan Univ]: 46 Lakh
4 National Medical College, Birganj [Tribhuvan Univ]: 60 Lakh
5 Devdaha Medical College, Devdaha [Kathmandu Univ]: 45 Lakh
6 Nepal Ganj Medical College, Nepalganj [Kathmandu Univ]: 50 Lakh
7 Chitawan Medical College, Chitawan [Tribhuvan Univ)] : 52 Lakh
8 Birat Medical College & Teaching Hospital, Biratnagar [Kathmandu Univ]: 46 Lakh
9 Manipal College of Medical Sciences, Pokhara [Kathmandu Univ]: 50 Lakh
10 Lumbini Medical College & Research Cente, Palpa [Kathmandu Univ]: 45 Lakh

 

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/01/07 at 16:15

ゴビンダ医師のハンスト闘争(14)

5.オリ共産党政権成立とその医学教育政策
 (1)医学教育政策後退とゴビンダ医師の抵抗
 (2)オリ政権の医学教育法案(以上前出)

(3)医学教育法案批判
この政府提出「医学教育法案」に対し,ゴビンダ医師はむろんのこと,野党や市民社会の多くも猛反発した。
ガガン・タパ(コングレス党議員,元保健大臣)
共産党政府は,半年もあったのに,医学教育令を法律として制定することをしなかった。そして,「[医学教育令代替]法案を議会に提出してのはよいが,その法案では,医学教育令の重要規定が特定利益諸集団の都合の良いように改変されてしまっていた。コングレス党は,このような法案は認めない。」「もし新しい医学教育法案が従来の医学教育令に規定されていた諸規定を持たないのであれば,われわれは,それに反対するため再び立ち上がらざるをえないだろう。」(*1)

「政府は,共産党系実業家のために,現行政令の定める諸規定を改変した。法案の中のそれらの改変は,これまでの取り決めに反するものであり,わが党(NC)は議会において,それらに断固反対するであろう。」(*2)

ディレンドラ・P・バドゥ(コングレス党議員)
下院に7月6日,政府案修正動議を提出し,こう述べた。「医学教育令は,政府とKC医師との合意に基づき制定された。この政令に沿う法案を要求し,KC医師は決死のハンストをしているのだ。」(*3)

スシラ・カルキ(元最高裁長官)
「公的弁護制度連盟」集会において,スシラ・カルキ元最高裁長官は「現政府がKC医師の諸要求を葬り去ることを考えているのなら,それは専制主義者,封建主義者,そしてマフィアの作る政府である」と述べ,オリ政府を厳しく批判した。この集会には,KB・マテマも出席している。カルキは,こう続けている。

「[KCには妻子はない。]KC医師は,この国に利用可能で軽負担の保健サービスと医学教育を実現することをもっぱら訴えている。彼の要求は,個人的なものではなく,人民の要求である。KC医師が人民のために闘うのは犯罪だろうか? 何かと人民を引き合いに出す政府だが,一般の人々や地方・遠隔地の貧しい人々の福祉については,政府は特にこれといったことは何もしてこなかった。」(*4)

KB・マテマ(元医学教育政策に関する上級委員会代表,元トリブバン大学副学長,元駐日大使)
マテマは,「マテマ委員会」が勧告しゴビンダ医師がその実施を強く要求しているカトマンズ盆地内医大新設10年間禁止を政府が医学教育法案から削除したことを厳しく批判し,こう述べている。

「この規定は,他の地域での医大および附属病院の開設を促進するためのものだった。全国に18ある医大のうちカトマンズ盆地にはすでに11の医大がある。中部は人口80万人に対し医大は1,極西部は250万人に対し医大はゼロ。だから,われわれは地方の一般の人々にも良好な保健医療が受けられるようにするため,首都盆地以外の地域での医大開設を勧告したのだ。」(*5)

ビシュヌ・P・アルヤル(ジャーナリスト)
ビシュヌ・P・アルヤルは,その記事「共産党有力者の経済的利益が医学教育法案問題の核心」(『リパブリカ』7月5日)において,政府提出「医学教育法案」は共産党幹部の金儲けのためのものにすぎないと一刀両断のもとに切り捨てた。下記イラストを見ると,利害関係は一目瞭然(*5)。

▼共産党有力者と医学教育法案
『リパブリカ』7月5日

*1 “Legal void likely in medical education after Wednesday,” Republica, July 3, 2018
*2 “Replacement medical education bill draws flak,” Republica, July 1, 2018
*3 “NC blocks House over issue of Dr KC,” Republica, July 7, 2018
*4 “This is a govt of tyrants, feudalists and mafia: Ex-CJ Karki,” Republica, July 4, 2018
*5 Bishnu Prasad Aryal, “Business stake of CPN bigwigs at heart of medical education bill tussle,” Republica, July 5, 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/01/06 at 14:42

ゴビンダ医師のハンスト闘争(13)

1.民主的専制とサティヤグラハ:ネパールから学ぶ
2.ゴビンダ医師ハンスト略年表
3.マテマ委員会報告
4.医学教育令制定と医学教育問題調査委員会報告
5.オリ共産党政権成立とその医学教育政策
 (1)医学教育政策後退とゴビンダ医師の抵抗(以上前出)

(2)オリ政権の医学教育法案
オリ政府は「医学教育令2074(2017)年」の期限切れ(2018年7月4日)を前に,6月末,議会に「医学教育法案」を提出した。この法案は,ゴビンダ医師が危惧していたように,「医学教育令の主要22規定を削除したもの」(*1)であった。主要変更部分は以下の通り。
 ・カトマンズ盆地内の医大新設申請許可
 ・既存大学提携開設医大を5校以内とする制限の撤廃
 ・奨学金付き学生定員を50%に引き下げ
 ・病院開設後すぐ医大新設申請可能(医学教育令では3年後)
 ・実業家の医療分野参入促進(*2,3,4)

しかも,この政府法案には,「迅速審議(fast truck)」が付帯されていた。これにはコングレス党など野党が反対,政府は提出済みの法案をいったん取り下げ,7月6日,「迅速審議」抜きの法案を再提出した。しかし,法案の内容そのものには大きな変更はなかった。

▼参照:「ネパール・メディカル・ショー2017」会場風景
Nepal Medical Show

*1 “Govt unwilling to meet Dr KC’s demands: Talks team,” Republica, July 26, 2018
*2 “Replacement medical education bill draws flak,” Republica, July 1, 2018
*3 Bishnu Prasad Aryal, “Business stake of CPN bigwigs at heart of medical education bill tussle,” Republica, July 5, 2018
*4 Ashok Dahal, “Medical education bill with disputed provisions back in parliament,” Republica, July 7, 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/01/05 at 17:09

謹賀新年

新年あけまして,おめでとうございます。
2019年が世界の平和・人権・民主主義実現への飛躍の年となりますように。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2019/01/01 at 06:51

カテゴリー: 平和

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ゴビンダ医師のハンスト闘争(12)

1.民主的専制とサティヤグラハ:ネパールから学ぶ
2.ゴビンダ医師ハンスト略年表
3.マテマ委員会報告
4.医学教育令制定と医学教育問題調査委員会報告(以上前出)

5.オリ共産党政権成立とその医学教育政策
(1)医学教育政策後退とゴビンダ医師の抵抗
2018年2月15日,オリ共産党政権が発足した。ゴビンダ・KC医師の要求する医学教育改革については,コングレス党前政権も積極的とは言えなかったが,それでも前年秋,ゴビンダ医師の要求をほぼのみ「医学教育令2074(2017)年」を制定した。ところが,同政令発布直後の総選挙で大勝し政権を奪取した共産党(NCP)は,ゴビンダ医師の要求するような医学教育改革には強硬に反対してきた。ゴビンダ医師の改革要求闘争は,オリ政権発足により,これまでの成果ですら根こそぎ反故にされかねない状況となった。

事実,オリ政府は,「医学教育令2074年」の施行にも,それを法律として制定することにも否定的であった。また,医学教育問題調査委員会(MEPC)報告の公表や,そこで勧告されている腐敗・権力乱用責任者処罰にも着手しようとはしなかった(*1)。

これに対しゴビンダ医師は,改革要求が容れられなければハンストに入る,と繰り返しオリ政府に警告した。そして,このゴビンダ医師の不屈の戦いに,市民・学生・保健医療関係者らの支持も拡大し,政府はついにシンハダーバー(政庁地区)南西角交通要所のマイティガル・マンダラでの集会を禁止する強権発動に出た(集会参加者一斉逮捕は6月30日開始)。政府が力で医学教育改革を抑え込もうとしていたことは明らかである。

■マイティガル・マンダラ(赤丸印,Google)

しかしながら,それでもゴビンダ医師への支持拡大は止められず,「医学教育令2074年」の次の期限(7月4日)までに何らかの具体策をとらざるを得ない状況に,オリ政府は追い詰められていった。この間の経過の概略は以下の通り。

5月3日,ゴビンダ医師は,「次の議会で医学教育法が制定されることを期待している」とのべ,もし同法制定をはじめとする医学教育改革が実現されなければハンストに入る宣言した。主な改革要求:
・「医学教育法」の制定
 ・医学教育問題調査委員会報告で処分勧告された43人の処分実施
 ・規定以上の授業料を取る医大の処分
 ・マイティガル・マンダラでの集会禁止の撤回

これに対し,オリ内閣は5月9日,「医学教育令2074年」の継続を議会可決はしたが,それ以上の改革には手を付けようとはしなかった。そこでゴビンダ医師は6月7日,従来の改革要求に医療関係者脅迫禁止法の制定など新たな要求をいくつか加えた「6項目要求」を政府に突き付け,要求が容れられなければハンストに入る,と改めて宣言した。

ところが,議会で三分の二以上の絶対多数を握るオリ政権は,またもやゴビンダ医師の要求を無視した。オリ首相は,デウバ内閣がゴビンダ医師の諸要求をほぼ受け入れ制定した既存の「医学教育令2074年」を法律として継承発展させるのではなく,その精神に反する新たな“医学教育法”の制定(旧医学教育法への事実上の復帰)を目論んでいた。ゴビンダ医師は,こう非難している。

「この政府の方針は認められない。われわれは,一般の人々に利用可能な高度な医療と,妥当な負担で可能な高度医学教育を実現するために闘っているのだ。(*2)」

ことここに至って,ゴビンダ医師は,オリ政府には医学教育改革への意思なし,と判断せざるをえなくなった。そして,ついに6月29日,北西部カルナリ州のジュムラにおいて,彼は無期限ハンストに入ることになったのである。第15回目のハンストである(*2)。

■BBCのハンスト報道(ゴビンダ教授連帯FB)

*1 “Dr Govinda KC serves 15-day ultimation, warns of another hunger strike,” Onlinekabar, 3 May 2018
*2 “Dr KC to start 15th fast unto death from today, in Jumla,” Republica, 29 Jun 2018

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/12/29 at 16:21

師走の西播磨

兵庫県南西部,西播磨の龍野と赤穂に12月10日,行ってきた。宝塚からだと,中国道・山陽道経由で2時間強ほど。

高速道を降り海岸沿いの一般道に入ると,瀬戸内海には無数の小島が浮かび,くねくね入り組んだ小さな湾の奥には古い港が見られる。

陸側には,お椀を伏せたような独特の形をした小山が連なっている。ほとんどが落葉樹で,師走中旬というのに,ほぼ全山がまだ茶や黄色に彩られている。ところどころに,ウルシであろうか,真っ赤に紅葉した灌木も見られる。紅葉盛りや新緑の頃は,さぞかし華やかなことであろう。

龍野は,山際のこじんまりした城下町。月曜は,三木露風生家,矢野勘治記念館など,ほとんど休館で見学できなかったが,外からだけでも醤油醸造所など伝統的な落ち着いた町並みが十分楽しめた。

赤穂も城下町で,広大な城址が残っている。温泉のある赤穂御崎からは,瀬戸内海の景観,とくに夕日が見事だ。


 ■龍野城/旧地名図


 ■醤油醸造所(龍野)/はんこ屋さん

■室津港


 ■赤穂城址前/塩販売看板


 ■早朝の瀬戸内海(赤穂御崎より)


 ■夕陽の瀬戸内海(赤穂御崎より)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/12/16 at 11:30

カテゴリー: 自然, 文化, 旅行

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師走の丹後の村

わが「負動産」の片付けに,丹後の村に行ってきた。師走というのに異常に暖かく,まだ秋盛りのよう。付近の村は,2018年豪雪のせいか,荒廃が一段と進んだようだ。懐かしい山村風景が冬を越すたびに失われていく。


 ■紅葉の村/鉄橋を渡る気動車

 
 ■河原のススキと村/土蔵

■カヤ屋根の古民家


 ■カキとカン(空カンは鳥獣除け?)


 ■ゴールポスト?/廃屋

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/12/08 at 15:45

カテゴリー: 社会, 自然

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