ネパール評論

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ミス&ミセス・ネパール,日本開催

ネパールは,ミス・コンテストが大好きな国だ。人民戦争の残り火がくすぶっているころですら,華やかなミスコンが開催されていたほどだ。
 [参照]赤と桃色のネパールミスコンか被抑圧女性解放かミスコン

その世界に冠たるネパール・ミスコン文化が,いよいよ日本上陸となる。ネパール女性がきわめて有能で魅力的であることは,周知のとおり。そのネパール女性を「ミスコン」において,どう審査するか。西洋ミスコンや日本ミスコンと同じか? それとも,女性解放世界最先進国のひとつ,ネパール(少なくとも制度的には)にふさわしい新たな基準による審査となるのか?

まったくの門外漢ながら,興味津々。続報を待ちたい。

ミス&ミセス・ネパール 2018(Himalayan Times, 3 Jan 2018)
 ・開催日:2月18日
 ・会場:グリーンホール,板橋
 ・主催(共催):Pearl Entertainment[印イベント会社?]; Sinjau Co.[社名原文通り]
 ・目的:ネパールの芸術・文化の保存。ネパール女性の知性と隠された能力の発掘。
 ・応募資格:日本在住の既婚・未婚ネパール女性
 ・審査日:2月1日(第一次)~18日(最終)
 ・選考委員:ネパールから招聘の専門家,在日ネパール機関の代表者
 ・表彰等:優勝者と準優勝者には賞を授与し,音楽ビデオ等への出演機会を提供。

 2008年ミスコン激励,プラチャンダ首相

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2018/01/10 at 15:14

カテゴリー: 社会, 文化

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因襲の衣服とミスコン

ネパールは,いまやジェンダー解放超先進国,日本など足下にも及ばない。ミスコンでは女性が,政治では「第三の性」が,はばかることなく自由と権利を謳歌している。

1.ミスネパール2014
ネパールは,これまで幾度か紹介してきたように,ミスコン大国。今年も,にぎにぎしく「ミスネパール2014」が開催される。わがホンダも,ベスト・ポジションに広告を出している。主要スポンサーの一つだろう。

140218

2.因襲の衣服とミスコン
ミスコンでは,多かれ少なかれ,衣服を脱ぐ。ミスネパールも例外ではなく,ネットにはミスネパールの裸同然のビキニ姿があふれている。たとえミスコン本番ではそれほど露骨ではなくても,選ばれた「ミス」には裸が期待され,その期待に多くの「ミス」がこたえているのだろう。

衣服は,たしかに因襲的拘束の象徴であり,それを脱ぎ捨て自然に帰るのは,女の解放である。原始,女は裸であった。古くさい因襲は,そこにはない。

3.脱がせるミスコン
しかし,どうも胡散臭い。ミスコンの目的は,建前としては,たとえば「諸々の因襲から女性を解放し,若い女性の潜在能力を引き出し,彼女らの未来を切り開くこと」とされている(The Hidden Treasure 会長挨拶)。

たしかに,十重二十重に着せられた因襲の衣服を脱ぐのだから,ミスコンは女の解放にはちがいないが,もし「脱ぐ」のではなく「脱がせる」のであれば,どこかいやらしく,ヒワイだ。

4.女性搾取の近代化
ミスコンは,いかに建前がご立派でも,ヒワイを隠しきれないのは,それが女性搾取の近代化に他ならないからだ。女性搾取の手段が経済外強制から経済的強制に替わっただけ。ミスコンで女の品定めをしているのは,結局,男たちである。女の「美しさ」は,経済的強者たる勝ち組男たちのもつ女性評価基準にすぎない。

5.ミスコンの「不都合な真実」
このミスコンの「不都合な真実」は,ネパールでは,初期マオイストが,はっきり見抜いていた。だから彼らは,女性解放のためミスコン粉砕を叫び,ミスコンを開かせなかった。初期マオイストは,純粋であった。

ところが,いまでは伝統社会の側も「革命」の側も,ミスコン反対の声をあげようとはしない。ネパールは,いまやミスコン天国。因襲の衣服が厚ければ厚いほど,男にとっては,脱がせがいがあろうというものだ。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/02/18 at 17:23

ミス・ネパール: コーラ帝国主義の完勝

ネパールのミス好きは,世界に冠たるもの。ミス,ミスだらけといってよいが,それらの中でも最も有名な,ミス中のミスは,おそらくTHT(The Hidden Treasure)主催の「ミスネパール」であろう。(ミスコンについては下欄タグ「ミスコン」クリック)

そのミスネパール最終審査が,この3月20日,権威ある「ネパール学芸会館」において華々しく開催され,美事,イシャニ・シュレスタさんが「2013年度ミスネパール」の栄冠を獲得された。もちろん,それにつづく「ミスネパール地球2013」も「ミスネパール国際」も,そして他の諸々の「ミス○○」も,みな文句なしに美しい。

130322 ■ミスネパール表彰式(THT-HPより)

今年のミスネパール・コンテストは,ファンタがメーン・スポンサー。コカコーラ社は,他にも「コカコーラ・フットボールカップ」など,多くのイベントを協賛している。大攻勢といってもよい。むろんコカコーラは営利目的の私企業であり宣伝活動をするのは当然だが,それにしても,最近は少々度が過ぎるのではないか。特に露骨な「女」の利用は,あまりにも品がない。

いまや,時代は激変した。マオイストは,かつて人民の友たりし頃,コーラを帝国主義の先兵とみなし,ネパール事業所を攻撃した。ところが,少し優勢になるとコーラ帝国主義批判は沙汰やみとなり,いまではコーラ片手にミスコンを観ていても,性搾取者とも帝国主義者とも非難される恐れはなくなった。マオイストも,コーラを飲んで,スカッと爽やかになったのだろうか?

「ファンタTHTミスネパール2013」は,コーラ帝国主義完勝の象徴といってもよいだろう。

130322a ■ファンタに飲まれる3美女(THT-HPより)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/03/22 at 14:10

赤色と桃色の競艶

おなじみの『赤星』。今日はトップにミスワールド写真を大きく掲載している。今年の世界大会は,中国内モンゴル自治区で開催され,中国女性が「ミスワールド2012」に選ばれた。

開催国,開催地,報道国,報道メディア――ぜ~んぶ,興味深い。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/08/21 at 20:30

カテゴリー: 社会, 文化

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ミスコン不正非難の的外れ

ネパールでは,ミスコンテスト(ミスコン)がますます盛んになってきた。ミス・ネパールを筆頭に,ミス・ライ,ミス・ネワ,ミス・モンゴル,ミス中西部,ミス10代,ミスSLCなど,無数にあるそうだ。

ところが,Pramila Rai, “Ugly face of a beauty pagent”(Republica, 30 Jul)によると,ミスコンでは,参加費不正,コネ・買収による不公平選考,セクハラ,参加者いじめなどが横行しているという。

こうしたミスコン批判は他にも少なくないが,それらに共通するのは,ミスコンの不正・不公平はけしからん,公平・合理的に運営・選考せよ,という主張だ。

しかし,これはミスコンの本質を問わない,的外れな議論だ。正式憲法も議会もなく,政党は離合集散,政争に明け暮れ,まともな統治は望むべくもない。経済はガタガタ,地方農村は疲弊し飢餓さえ心配されている。先進国のミスコンをアナクロとするなら,ネパールのミスコンはグロテスクだ。

ミスコンは女の商品化であり,その選考を「合理化」すればするほど,客観性の外観が強化され,差別化が進行する。ミスコンなど,選考が不公平・不合理であればあるほど,社会に与える害は少ない。

ネパールにおいて,公平さ,合理性が求められるべきは,ミスコンではなく,統治においてである。

ミスコン関連記事

■ミスコン事例(一部)
ミスSLC  ミス10代  ミス中西部
ミス・ライ2012  ミス・モンゴル2012  ミス観光2011

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/08/01 at 14:28

カテゴリー: 社会, 文化, 人権

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ミスコン批判社説、「美の商人」粉砕!

本格的なミスコン批判が、ようやくネパールにも現れた。ekantipur, “Beautiful and damned,” Apr20. めでたい。

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そもそもマオイスト政権下のミスコン熱が異常だ。王制下なら、王制そのものが美の権威だから、ミスコンもあり得るし、また、万物を商品化する資本主義なら、女を競りにかけ、最高の値札のついた女に「ミス」の品質証明を与えるのは原理適合的であり、理にかなっている。

しかし、マオイストは王制も資本主義も否定しているのであり、したがってミスコンも当然認められないはずだ。また、ミスコンは、人権や民主主義の観点から見ても、理念に反し、許容できない。

ところが、ネパールでは、マオイストも他の人権主義者・民主主義者もミスコンを許容している。ミス・ネパールを筆頭に、ミス・タマン、ミス・ライ、ミス・ルンビニ、ミス・チェットリ、ミス幼稚園、ミス・カレッジ・・・・。ミスの競演であり、狂演だ。まったくもって、バカげている。

カンチプール社説は、「美女」は社会的に構成された概念だという、C.ダーウィン以降の常識の確認から始める。かつて「豊満」が美女とされたのは、それが富を象徴していたから。現在、「痩身」が美女とされるのは、ダイエットに時間と金を浪費した結果だから。

この社会的構成としての「美」を熟知しているのが、企業。「美女」はビールから車まで、あらゆるところで商売に利用されている。

そのお先棒担ぎが「美の商人」。ミスコンにより、「美女」概念をでっち上げ、世間に広め、認めさせる。

ミスコンで「美女」概念が確立すると、大多数の女性は「ブス(醜女)」を自覚させられ、劣等感にさいなまれる。そして「ミス」のようになるため、化粧品や健康用品を買い、ジムに通い、あるいは美容整形に走る。身体的・精神的に有害なことを自ら選択して実行させられ、拒食症や神経衰弱に陥り、はては病死や自殺に追い込まれる。

カンチプール社説は、論旨を要約すれば、こう断罪している――ミスコンの主催者や審査員はいうまでもなく、参加女性自身も、そうした社会悪への加担者である。ミスコンはビジネスであり、弱者から搾取するためのイベントだ。この事実を冷静に見据え、「美の商人の専制」から女性を解放せよ。

まったくもって、正論。マオイストや他の時流迎合人権主義者・民主主義者よりも、カンチプールの方がはるかにまともであり、ラジカルだ。長い目で見ると、「死の商人」よりも「美の商人」の方が、ネパールにとっては危険かもしれない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/04/24 at 08:15

カテゴリー: 社会, 文化, 人権

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赤い国のミスコン熱

共産党議員が国会の過半を占める赤色革命国ネパールは,また女大好きのミスコン大国でもある。2011年ミス・ワールド授賞式(11月6日)の映像も,さっそく大手メディアHPに掲載され,好評を博している(らしい)。

ミスコン本家イギリスは,遊び大国,何でも賭けのタネにし,紳士らしく上品に遊ぶ。女も大好きで,大切な遊びのタネ。競馬場で馬を品定めするように,女を裸にして品定め,紳士らしく上品に,まじめに遊ぶ。いかにも英国的で,ほほえましい。
 2011ミス・ワールド水着審査

しかし,そうした優雅な封建貴族や有閑紳士の遊びに,世界に冠たる共産党統治国ネパールが熱中することはあるまい。資本主義国であっても,紳士的遊び心のない拝金主義のアメリカや日本では,もはやミスコンなど見向きもされない。

しかも,品定めの結果が,意味深だ。(最近はほぼ同じ傾向)
  ■世界美女 第1位 ベネズエラ  第2位 フィリピン  第3位 プエルトリコ

これが何を意味するか? よ~く考えてみよう。

ここで,公平のため,わが日本国の状況についても,紹介しておこう。わが日本国では,外務省が「国際文化協会」を「外務省所管特例民法法人」として認可している。この「協会」は,「ミス・インターナショナル世界大会」を開催し,半裸女性をHPで世界に公開,日本文化の振興に貢献している。
 国際文化協会HPより

さすが外務省,紳士の国イギリス(のお遊び)と,ミスコンで競っているわけだ。で,ミス・ワールドとミス・インターナショナル,どっちがより美しいの?

[参考]
外務省所管特例民法法人一覧(外務省HP)
社団法人 国際文化協会
目的の概要: 世界の文化、芸術及び民族芸能の交流を図り、海外諸国との友好親善に寄与すること
事業:日本文化に関する展覧会の開催,ミス・インターナショナル世界大会開催
主管課: 広報文化交流部文化交流課

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/11/20 at 12:04

カテゴリー: 文化, 人権

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インドラ祭よりミスコン祭

9月11日午後、仕事帰りにインドラ祭をのぞいてみた。人出はそこそこだったが、盛り上がりに欠け、途中で退散した。

理由は通俗化。社会の資本主義化・世俗化で、祭りの「聖性」が失われ、「非日常性」が減退した。

いまでは、クマリにせよ神々にせよ、要するに見世物。非日常的聖性への怖れなど、どこにもない。報道カメラが傍若無人に神々を追いかける。儀仗兵はだらけ、まるでやる気がない。観衆も、来てはみたものの、これならテレビの方が面白いなといった感じで、しらけきっている。

もはや、インドラ祭は二流の退屈な見世物に過ぎない。非日常的聖性を失ったクマリは、到底、世俗の生き神様ミス・ネパールの敵ではない。


魂を抜かれたクマリ広告

クマリ・神々を見世物にする記者たち

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/09/12 at 10:42

赤と桃色のネパール

マオイスト政権の赤色ネパールは,また「女」大好きの桃色ネパールでもある。「ネパール共産党-毛沢東派」や「ネパール共産党-統一マルクス・レーニン主義派」が街頭やキャンパスを赤旗で埋め尽くせば,資本主義は,負けてはならじと,半裸女性を繰り出し,メディアや催事場をピンクに染め上げる。赤か桃色か,面白い国だ。
マオイスト・メーデー(eKantipur)

先日,ネパールは,マオイストのバタライ副議長を首相に選出し,国政を赤化した。これに対し,資本主義は「ミスネパール」を押し立て,ピンクの泡で共産主義を包み込み,取り込もうとする。

ミスコンテスト(ミスコン)が,女性の商品化であり,ケシカランものであることは,先進資本主義国ではもはや常識となっている。資本主義は,この先進諸国では使い古し役立たずとなったピンク兵器を,後発途上国ネパールに輸出し,赤色革命と戦わせようとしている。途上国に旧式戦車やミサイルを売りつけ,代理戦争をさせるのと同じ戦略。資本主義はなかなかしたたかだ。
中央がジョシさん(Republica, Aug31)

「ミスネパール2011」は,8月30日,カトマンズの「将校クラブ」で賑々しく開催され,ジョシ女史がめでたくネパールNo1美女の栄冠を獲得,いまは没落した資本主義本家,大英帝国の帝都ロンドンで開催される「ミスワールド」大会に出席することになった。

「ミスネパール」の正式名称は「ラックス・ミスネパール」であり,スポンサーは「女」をメシのタネとする世界企業ユニリーバ。しかも「ネパール・ユニリーバ」はインド企業の子会社だ。つまり――

ユニリーバ本社(英蘭帝国主義)→インド系列企業(印大国主義)→ネパール・ユニリーバ(半植民地的買弁資本主義)→ネパール女性

という,国際資本による途上国女性搾取構造になっているわけだ。
昨年度ミスネパール(ミスネパールHP)

ネパール・マオイストは,なぜ怒らないのだ! 政権を奪取し,世界最高峰エベレストに赤旗を立て,世界革命を先導すると,バブラム・バタライ同志は繰り返し高らかに宣言してきたではないか。

マオイスト人民解放軍は,女性解放の世界モデル。女性兵士が40%を占め,男性兵士と同等以上に勇敢に戦い,半封建的・半植民地的旧体制をみごと打倒した。女性なくしてマオイストはなく,人民戦争勝利はなかった。そのマオイスト女性兵士たちは,「女」を売り物とする「ミスコン」のために解放戦争を戦ってきたのか!

ネパール・マオイストは,「ミスコン」などといった中古武器で懐柔されるほど柔ではないはずだ。

マオイスト女性のトップ・リーダーは,いうまでもなくヒシラ・ヤミ同志。そう,バラタイ首相の妻だ。

ヤミ同志は,かつて「ミスコン」粉砕の急先鋒だったはずだ。それなのに,革命に勝利し首相閣下夫人に収まり,ラックスを使い始めたら,ピンクのバブルに包まれ、うっとり夢見心地となり,「やっぱり,女はラックスね」ということになってしまったのだろうか?

ヒシラ・ヤミ同志よ,夫バブラム・バタライ同志とともに,いまこそ「ミスネパール」粉砕に立ち上がるべき秋ではないのか!

■2010/08/09 ミスコンに籠絡されたマオイスト
■2008/02/19 エベレスト山頂の赤旗
■2011/05/03 エベレストに赤旗,プラチャンダ議長ご令息

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/08/31 at 11:48

カテゴリー: マオイスト, 文化, 人権

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ミスコンか被抑圧女性解放か

谷川昌幸(C)

 カゲンドラ・N・シャルマ博士が,ミスコン反対の暇があるなら悲惨なチャウパディ廃止運動をやれ,とマオイストを批判している。もっともな正論で,おっしゃるとおりだが,それで? という思いがしないではない。しかも,よく考えてみると,この議論はちょっとズレている。 Dr Khagendra N. Sharma, Chhaupadi and Beauty Pagent, Kathmandu Post,22 Aug.

 

1.土牢チャウパディ

チャウパディ(Chhaupadi)は西ネパールに広くあり,生理中の汚れた女性を閉じこめておくための土牢。実物も写真も見たことがないので,それがどのようなものか見当もつかないが,きわめて不健康なもので,女性にとっては拷問に近いという。

 

日本でもかつては自宅出産がほとんどで,わが村でも妊婦は北西の一番悪い部屋で出産した。つい数十年前まではそうだった。だから,ネパールに土牢のようなチャウパディがあることは,容易に想像がつく。

 

そのチャウパディで15歳のダリット少女が下痢のため死亡した。同様の悲惨な事件は多数報告されている。

 

2.売春,女性売買,性的虐待

一方,ネパール女性の性的搾取は拡大の一方だ。被抑圧階層の女性が売春を強要される一方,ミドル・クラス女性の「コールガール」も増え,市中や道路沿いには売春宿が続々とつくられている。また,ネパール女性はインド売春宿に売られ,海外出稼ぎ女性も性的虐待に苦しめられている。ダウリー(持参金)殺害もあれば,魔女虐待もある。ネパールには深刻な女性問題が山積しているのだ。

 

3.ミスコン

これに対し,ミスコンに応募する女性は,ミドルクラス出身で,教養もあり意識も高い。家族の同意も得て自分で応募してくる。

 

たしかにミスコンは女の裸が売りで,身体の5%を隠しているにすぎない。しかしシャルマ博士によると,これは一種の芸術である。肉体美を様々な形で競う。しかも,会話センスや知性も問われる。ミスコンは,ネパールが近代化し,世界文化がネパールにも波及してきた結果に他ならないという。

 

4.ミスコンは自己責任

したがって,いま取り組むべきはミスコンではなく,チャウパディに代表される様々なネパール女性差別だ,とシャルマ博士は主張する。

 

「ミスコン応募女性は,自分の行動を十分に自覚しており,社会において自分を守ることができる。」

 

「ミス・ネパールに出場する女性たちには,救出ロビー活動は不要だ。彼女らは,社会のなかで好ましい地位を得ることができる。延期されたミスコンを計画通りやらせよう。われらは,見捨てられ,差別され,搾取されている女性たちのためにロビー活動をしよう。まず,危険なチャウパディ廃止運動から始めよう。生理の大切さを知らない人々を教育し,非人間的差別を故意に強制する者たちを処罰しよう。」

 

ところが,シャルマ博士によると,世間ではチャウパディ反対運動は低調なのに,ミスコンについては,マオイスト「革命女性同盟(RWL)」を中心に35団体もが,活発に反対運動をしている。これはおかしいではないか,と博士は批判するのである。

 

.正論の平凡さ

このシャルマ博士の議論は,正論ではあるが,正直いって面白くないし,どこかズレている。

 

この議論が変なのは,前近代的女性搾取と近現代的搾取とを切り離し,前者を否定するため,後者を容認しているからである。

 

たしかに,政策課題としては前近代的女性差別が先だという議論はありうる。しかし,途上国ネパールでは,前近代的問題と近現代的問題が同時並行的に発生しているのであり,どちらがより深刻かは,一概にはいえない。

 

シャルマ博士は,ミスコンを世界文化へのネパールの参加として肯定しているが,ミスコンは資本主義的女性商品化文化である。女性搾取が,前近代的な直接的なものから近現代的な「自由意思」と貨幣を媒介としたものへと,変化してきたのだ。搾取の形態が高度化されたのであり,見方によれば,こちらの方がより深刻ともいえる。

 

そうした途上国における問題の二重性をシャルマ博士は見ていない。マオイストがどこまで問題を見抜いているかは分からないが,結果的には,マオイストのミスコン反対は正しく,従って,これについては先進諸国の女性団体からの支援も期待できるのである。

 

かつて「お茶くみ」程度で文句をいうな,と日本の男性たちは女性解放運動をバカにしていた。しかし,いまでは彼女らの方が正しく,いまごろ「お茶くみ」をさせようものなら,女性差別,セクハラで処罰されるし,そもそもそんなことをしている会社は生き残れない。

 

たかが「ミスコン」くらいで,などといっていると,マオイスト革命女性同盟の総攻撃を受けるであろう。

 

ミスネパールに喜悦満悦のプラチャンダ首相

  

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前ミスネパールと2008年出場予定者(Nepali Times, 22 Aug)

 

マオイスト「革命女性同盟」同志が,真っ先に糾弾すべきは,プラチャンダ同志ではないか?

 

Written by Tanigawa

2008/08/23 at 22:32