ネパール評論 Nepal Review

ネパール研究会

「ヒマール」休刊,体制右派の圧力か?

「南アジア財団(Southasia Foundation)」が8月22日,高級誌『ヒマール南アジア(Himal Southasian)』(1987年創刊)の発行を2016年11月をもって休止する,と発表した(*1)。理由は,同誌発行に必要な政府諸機関の協力が得られなくなったこと。

「通知も説明もないなまま,ヒマールへの送金が7か月前から許されず,外国人スタッフの労働許可が出されず,外国寄稿者への支払い手続きも著しく遅れている。スタッフを削減し,これらや他の障害を克服しようと努力してきたが,結局,休刊しか選択肢はなくなった。」(*1)

「ヒマールは,直接的な攻撃やあからさまな検閲で沈黙させられるのではなく,官僚機構を利用して出版活動を困難にすることによって沈黙させられるのだ。」(*1)

このように,「南アジア財団」は,体制内の有力な勢力が非公然と政府諸機関を動かし,同財団や,その中心メンバーたるカナク・マニ・デクシトを攻撃しているとして,関係者を厳しく批判している。たしかに,この数年,彼らの保有資産やバス事業との関係などについて「調査」や「捜査」が繰り返され,この4月にはカナク・デクシトが逮捕勾留され,死の瀬戸際まで追いやられた。体制内のある勢力が彼らを狙って攻撃していると疑われても仕方あるまい。(*4-7)

むろん,以上は,「南アジア財団」やカナク・デクシトの側の言い分である。これに対しては,政府関係諸機関の側にも,当然,反論があるはずである。ところが,不思議なことに,関係諸機関は,彼らの職権行使につき,まったく,あるいは不十分にしか,これまでのところ説明をしていない。職権乱用調査委員会は,どのような根拠に基づき「調査」を続けてきたのか? あるいは,政府諸機関は,なぜ「南アジア財団」の出版事業に必要不可欠の諸手続きを拒否したり,引き延ばしたりしているのか?

政府は,権力行使の際,合理的な説明をしなければならない。とりわけ言論機関に対しては,明確な説明が必要不可欠だ。それをしないまま言論機関への介入がなされるなら,それは不当な言論弾圧と見ざるをえないだろう。

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*1 “Himal Southasian to suspend publication,” Himal Southasian, 24 Aug 2016
*2 Yubaraj Ghimire, “Why Himal magazine was suspended in Nepal,” Indian Express, Aug 26, 2016
*3 GAURAV VIVEK BHATNAGAR, “Nepali State Agencies Force Himal Magazine to Suspend Operations,” The Wire, 25/08/2016
*4 カナク・デクシト氏逮捕の事実経過:ヒマールメディア (2016/04/28)
*5 デクシト氏釈放を首相に要請,世界新聞協会 (2016/04/27)
*6 カナク・デクシト氏逮捕報道について:CIAA報道官 (2016/04/26)
*7 カナク・ディグジト氏,CIAAが逮捕 (2016/04/24)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/08/27 @ 19:28