ネパール評論

ネパール研究会

生成AIの日英格差

インターネットを介して使用する生成AIの日英格差が,拡大している。これは由々しき事態だ。

1.量的格差
英語版AIは,日本語版に比べ,情報源が圧倒的に多い。そのため,分析結果としての回答も,より充実した適切なものになっている。これは常識。

しかし,この量的格差は,AIによる英文翻訳学習や日本語資料学習が進んでいけば,徐々にではあれ,解消されていく。期待したい。

2.質的格差
これに比べ,はるかに深刻なのが,日英AIそれぞれの回答の質的格差。日本語回答が量的に拡大しても,その質が劣っていれば,これは一大事だ。

いま政財官界を中心に,妙ちくりんなカタカナ英語交じりの日本語が激増している。また,学界では,英語による研究成果発表が推奨され,日本語表記の論文は二流とみなされ,減少してきている。

このようにして,政財官学みな横並びで日本語蔑視・英語崇拝が拡大していけば,日本語で表現される日本文化そのものが劣化することは避けられない。

そうなれば,その劣化した日本文化を生成AIがいくら学習し,情報量を拡大しても,質的には回答は何ら向上しないことになる。日本文化の劣化⇒AI回答の質的劣化⇒AI使用日本文化の更なる劣化。

これは,円暴落以上に,日本にとっては深刻な事態だ。

3「日英AI格差」に関するAI回答
日英AI格差について,代表的な無料公開AIに尋ねてみた。4つのソフトのうち,この問につき最も正直に答えてくれたのは,Gemini。以下,回答。

【問】日本語版AIの回答は,英語版AIの回答よりも劣っていますか?
【Gemini回答】
一概に日本語版AIの回答が英語版AIの回答よりも劣っているとは言えません。どちらにも長所と短所があり、状況によってどちらの方が適しているかが変わってきます。
**日本語版AIの長所
 *日本語のニュアンスや文脈をよりよく理解できる
 *日本語特有の表現や慣用句を正しく使用できる
 *日本の文化や社会に関する知識に基づいた回答ができる
**日本語版AIの短所
 *英語版AIに比べて学習データ量が少ない
 *専門性の高い分野の情報が不足している場合がある
 *最新の技術情報にアクセスできない場合がある
**英語版AIの長所
 *日本語版AIに比べて学習データ量が多い
 *専門性の高い分野の情報が豊富
 *最新の技術情報にアクセスしやすい
**英語版AIの短所
 *日本語のニュアンスや文脈を誤解することがある
 *日本語特有の表現や慣用句を誤用することがある
 *日本の文化や社会に関する知識が不足している場合がある
 ・・・・<以下,略>

【参照】*英語帝国主義 *文化災害:朝のシェイクアウトで右往左往 *環境破壊の環境省広告 *「使える英語」とカタカナ英語:リスキリングのリスク * 安倍首相の国連演説とカタカナ英語の綾 * 愛国者必読: 施光恒『英語化は愚民化』 * 書評:水村美苗『日本語が亡びるとき』

240625

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2024/06/25 @ 15:23