ネパール評論

ネパール研究会

Archive for 4月 2015

学校の地震被害

地震では,各地の学校が甚大な被害を受けていると思われる。地方の状況はまだわからないが,たとえばカトマンズ市内ディリバザールのスリョダヤ校

三十年ほど前,初めて訪問した時は,他の学校と同様,電気もない小さな小屋のような学校だった。幸い,校長が根からの子供好き,世話好き,教育熱心だったので,徐々に拡大し,やがて下図のような格調のある文化財級の古い建物を借りて校舎とし,子供たちを教え始めた。

この校舎が,今回の地震で大きな被害を受けた。幸い土曜休日だったので,校内での子供たちや先生方の被害はなかったようだ。

しかし,校舎は,倒壊はまぬかれたものの,各所に亀裂が入り,構造部分に大きなダメージを受けたため,このままではもはや授業再開は無理のようだ。

こうした校舎被害は,他にも多いに違いない。教育分野での被害の拡大も心配される。

▼震災以前の校舎(2004年度学校カレンダー)
150430a

震災直後:校舎と校庭避難テント
150430d150430b
150430c

Written by Tanigawa

2015/04/30 at 13:04

カテゴリー: ネパール, 国際協力, 教育

Tagged with ,

ネパール救援初動態勢,世界と日本

下図は,ニューヨーク大学アイアン・ブレマー教授(ユーラシア・グループ代表)がツイッターに掲載し,広くリツイートされ世界中に広まっているもの。右下にAFPとあるが,元の記事は見つけられなかった。

かつて,自衛隊を非軍事的な「国際救援隊」に改組し,どの国にも,どの地域の人々にも警戒されず,世界で最も期待され信頼される救援・支援組織とすべきだという提案がなされ,かなり広く支持されていた。ネパール救援の初動状況を見ると,いま一度,検討されてよい提案である。

Who’s Helping Nepal(ブレマー教授ツイッター)[□印追加]
150429a

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/29 at 10:59

カテゴリー: ネパール, 国際協力, 情報 IT

Tagged with , ,

震源地ゴルカの被害状況

ゴルカは震源地であり,前述のように,村や町の被害が心配されている。ゴルカ出身のバブラム・バタライ元首相(マオイスト)がヘリで緊急視察したところ,全壊に近い村もあるようだ。

ネパールの村々は,急峻な山腹にへばりつくように点在したり,ナイフの刃先のような狭い稜線上に位置するものが多く,素人目にも,揺れや地滑りには極めて弱そうだ。。

それらの村々への道路も,山腹を切り開いただけの山道が多く,各所で不通となっていると思われる。ヘリなどの支援はできないのだろうか?

▼ゴルカの村と町(バタライ元首相FBより)
150427f150427g

▼ゴルカ(2009年3月)

[参照]ゴルカ関連記事
ゴルカの落差と格差:美少女の不幸
血みどろのゴルカ王宮

[追加]ゴルカ郡だけで,死者375人,不明多数(Republica, 28 Apr)。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/28 at 11:24

ネパール震災救援支援

ネパール震災被害救援を支援するための募金活動が始まった。以下は,ネットで情報提供されている主な活動(4月27日現在)。

150427a ネパール:大規模地震の被災地に緊急援助チームを派遣
ネパールで25日に発生した大規模地震をうけ、国境なき医師団(MSF)は4編成からなる緊急医療援助チームを派遣する。・・・・さらに、MSFは医療物資など緊急援助物資3000セットを送る予定。・・・・
http://www.msf.or.jp/news/detail/headline_2127.html

150427b ネパール 地震被害緊急支援募金
2015年4月25日に発生した地震により、ネパールおよび周辺国での死傷者は6500人超となり、建物や文化財も多数倒壊するなど甚大な被害がでています。・・・・Yahoo!基金では、これらの被害状況を受けて緊急支援募金の実施をいたします。
http://donation.yahoo.co.jp/detail/1630016/

150427c ネパール地震緊急募金
日本ユニセフ協会は、ネパール地震の被害を受けた子どもたちを支援するための「ネパール地震緊急募金」の受付を開始しました。・・・・
http://www.unicef.or.jp/?utm_source=yahoo&utm_medium=cpc&utm_campaign=nepal

日本ネパール協会 ネパール地震被害義捐金の募集
日本ネパール協会は、ネパール国民及び政府、被害を受けられた皆様に対し心からのお見舞いを申し上げますと共に、海外在住ネパール人協会(NRNA)などと連携して、義捐金を募集致します・・・・。
http://nichine.or.jp/JNS/?p=7771

150427d  救援調整のため職員を派遣~ネパール地震災害
国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)は、各国赤十字社に対して緊急支援を要請する準備を進めています。
http://www.jrc.or.jp/press/150426_003566.html

150427ePM DISASTER RELIEF FUND
The government has appealed to all to make contributions to the Prime Minister Disaster Relief Fund to help with the treatment, rescue and relief of those caught in the Saturday earthquake and to facilitate the unprecedented scale of disaster management.[…] Anyone wishing to make contributions can do so by making deposits to any of the Relief Fund bank accounts:
 00100105200270 and 00101102200012 at Everest Bank
 002-11-053313 at Nepal Bank
 0411010000005 at Global Bank
 18013243801 at Standard Chartered Bank
 035142 ‘C’ at Nepal Bangladesh Bank
http://www.myrepublica.com/politics/item/20014-govt-appeals-for-contributions-to-pm-disaster-relief-fund.html

【追加】
150427m ネパール中部地震被災者に対する緊急医療支援
AMDA街頭募金
ネパール中部地震被災者に対する緊急医療支援活動のための街頭募金
5月1日(金)12時00分~13時00分,岡山高島屋 正面玄関前あたり

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/27 at 07:57

カテゴリー: ネパール, 国際協力

Tagged with ,

中国と米国,震災救援に着手

中国と米国が,いち早く,ネパール震災被害救援に着手した。

中国は,26日,専門家65人からなる救援隊と救急支援用品一式を,特別機でネパールに送り,救援活動に着手する。また,米国大使館も,ただちに100万ドルの緊急支援を発表。USAIDの災害救援隊などが救援活動を始める。

地震の震源はゴルカ,マグニチュードは7.9。死者は約1400人。カトマンズだけで約500人に及ぶ。女性と子供の犠牲者が多い。(日本時間4月26日午前現在)

[参照]高層ビルの耐震性:モルタル塗り煉瓦壁

150426b ■米国大使館HP

150426a ■MBS・TV(4月26日)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/26 at 09:12

カテゴリー: ネパール, 社会, 自然

Tagged with ,

ネパールで大地震,死傷者多数

ネパールで,ラムジュン(カトマンズとポカラの中間付近)を震源とするマグニチュード7.9の大きな地震があり,Hindustan Times, The Hidu等のインド・メディアによると,400人以上が死亡した。建物多数が崩壊し,地滑り等も発生しているという。まだ情報がごく限られており,各地の被害は不明。震源に近いゴルカや観光地ポカラの被害が心配される。

地震は,午前11時56分に発生,以後余震が続き,The Hinduによれば,午後2時45分現在も続いている。

カトマンズ中心部のビムセン(ダラハラ)塔も完全に崩壊。休日で賑わっており,多数の死傷者が出ているのではないか。また,旧王宮付近も大きなダメージを受けているという。(日本時間20時23分記述)

150425a ■震源(BBC,25 Apr

【地震データ】USGS
Time: 2015-04-25 06:45:21 UTC
Nearby Cities:
49km E of Lamjung; 69km NW of Kirtipur; 70km NW of Kathmandu
70km NE of Bharatpur; 72km NW of Patan
150425b

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/25 at 20:27

カテゴリー: ネパール

Tagged with , , ,

京都の米軍基地(68):翼賛奉仕へ粛々と

経ヶ岬進駐米軍への翼賛奉仕体制づくりが,米軍主導で,粛々と進められている。権力もカネもあるから,住民は翼賛奉仕に加担した方が得策,反対派はじり貧,見る影もない。

150423f■「つかみ取られる日本(!?)」(米軍FB)

1.視察・宴会
米軍最前線最先端基地には,米日要人の視察が続々。4月13日には防衛大臣政務官ご一行が,はるばる秘境・経ヶ岬にまで,ご機嫌伺いにこられた。視察後は,もちろん宗主国のための宴会。視察団:防衛大臣政務官・石川博崇,防衛省地方協力局地方調整課長・藤代誠,航空幕僚監部総務部長・荒木文博,中部航空方面隊副司令官・金子真一,中部航空警戒管制団司令・山本祐一ほか(敬称略)。

その数日後(たぶん4月19日)には,京都府の山田知事が視察。日本のメディアはあまり報じないが,誠実な米軍は,ちゃんと報告してくれている。

150421b150421c
 ■防衛大臣政務官等の視察(米軍FB)/宴会(米軍FB)

150421a■山田知事視察(米軍FB)

2.日米友好協会
地元も盛り上がっている。4月16日には,特定非営利活動法人「京丹後市日米友好協会」が設立された。目的は,「京丹後市民と米国人をはじめとする基地関係者との相互理解と友好関係を増進し、地域社会の安心安全に寄与すること」。

米軍人・軍属およびその家族との交流なのに,なぜ「日米友好」なのか? 相手は,毎日のように世界のどこかで戦争をしている,世界最強の恐ろしい軍隊。目的と名称が一致していない。が,われらが京都府知事は,もちろん「国益」のため,法人設立を認可した。

150423150423a
 ■協会マーク(米軍FB)/協会会合(米軍FB)

3.消防協定
その数日後の4月21日には,京丹後市が,「在日米陸軍基地管理隊緊急業務局統合消防本部」という,いかにもおどろおどろしい米軍機関との間で,消防協定を締結した。

「協定書」はまだ未見だが,報道によると,米軍基地で火災が発生した場合,米軍の要請を受け,市の消防隊が消火にあたるのだそうだ。

大丈夫かな? 基地内は日本の治外法権。しかも,危険物ごろごろ。一応,燃料タンクなどの情報は提供されるそうだが,本当に危険なもの,つまり軍事秘密であり「特定秘密」でもありうる恐ろしい危険物の情報など,ちっぽけな自治体の消防になど教えるはずもない。

それなのに,中山市長は満面の笑みをたたえつつ,米軍統合消防長と固く握手し,「協定書」を取り交わした。市長によれば,「今回の協定によって、米軍の安全と同時に市民の安全も守れることにつながる」(NHK京都4月21日)という。

どうして? 危険きわまりない外国軍基地の火災現場に突入し,滅私奉公させられるのは,市長ではなく,市民を守るはずの消防隊員なのに。

150423b■協定書交換(米軍FB)

150423d150423e
 ■協定書交換(NHK京都)/米軍責任者(NHK京都)

4.エルモ京丹後支部
独立行政法人「駐留軍等労働者労務管理機構(エルモ)」も,たぶん4月上旬に,開設。「経ヶ岬通信所の日本人雇用者のため」だそうだ。それにしても,「エルモ」とは,ちょっと気恥ずかしくなるような,が,いかにもそれらしい,名称ではある。

150423c■開設文書交換(?)(米軍FB)

*「レーダーサイト火災時の消火協力 京丹後市と米軍が協定 消火設備の事前点検も」産経ネット版,2015.4.22
*「米軍基地と京丹後市が協定」NHK京都ネット版,2015.4.21
*14th MDB,FB

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/23 at 18:43

ヒマラヤンに警告表示

数日前から,ネット版ヒマラヤンタイムズ(http://www.thehimalayantimes.com/)に警告表示が出るようになった。

150422■グーグル警告画面

ヒマラヤンタイムズは,この警告が出るはるか以前(1年くらい前)から,読み込みに時間がかかり,変だなとは感じていた。IT素人には,HP構築の単なる不都合なのか,あるいはウィルスか何か危険なものがあるのか,それとも閲覧ソフト(グーグル)またはアンチウィルス・ソフト(マカフィー)の誤作動なのか,全く見当もつかない。

不思議なのは,おそらく,こうした異常はわかっていたはずなのに,ずっと放置されてきたこと。

いずれにせよ,素人は,危なそうなところには近づかないに限る。しばらく様子を見て,警告が出なくなってから,読むことにしよう。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/22 at 08:55

カテゴリー: 情報 IT

Tagged with

プラ袋禁止,カトマンズ盆地

ネパール新年の4月14日,「カトマンズ盆地プラ袋禁止」が宣言され,盆地内ではプラスチック袋の使用が禁止されることになった。(日本では「ポリ袋」が一般的だが,ネパールでは「プラスチック袋」と呼ばれているようなので,略して「プラ袋」と記す。)

根拠は,「プラ袋規制令2068(2011)」。原典がないので報道からの孫引きだが,これが3月に改正され,4月14日からの施行となった。
 ・カトマンズ盆地内:厚さ40ミクロン未満のプラ袋禁止
 ・カトマンズ盆地外:厚さ30ミクロン未満のプラ袋禁止
 ・罰則:5万ルピー以下の罰金または/および2年以下の投獄

いつもの通り,大胆かつ先進的な取り組みだ。近隣のインドは2002年,20ミクロン以下のプラ袋製造禁止。中国は2008年,極薄プラ袋使用禁止。ネパールでも,2011年には前述の「プラ袋規制令(2068)」が制定され,以後何回か施行が試みられたものの,そのつど業界団体などが反対,2012年(2013年?)には最高裁が「プラ製造業協会(NPMA)」の施行停止請求を認め,禁止命令は停止されてしまった。

これに対し,議会の環境委員会は2014年8月25日,2015年新年(4月14日)からのプラ袋禁止実施を決め,関係機関に通達を出した。今回も「プラ製造業協会」は2015年3月26日,最高裁に施行停止請求を出したが,最高裁は4月7日,この請求を棄却し,その結果,プラ袋禁止が4月14日から実施されることになったのである。

「プラ袋禁止」の管轄は,「科学技術環境省」で,大臣はコイララ首相が兼任している。直接実施に当たるのは,「環境局」。なかなか元気がよい。新年初日には,はなばなしく「プラ袋禁止行進」を敢行し,スンダラやニューロード沿道の人々に代替紙袋を配布した。また,環境局と警察の合同監視団が巡回し,違反を摘発し始めた。
 ・カリマティでプラ袋280kg押収(3月11日)
 ・アサン,ラリトプル,カリマティの23卸売店等からプラ袋400kg以上押収
 ・盆地入口のタンコット等で検問,プラ袋200kg押収

たしかに,ネパールのプラ袋ゴミ問題は深刻だ。様々な数字が報告されている(数値は記事のまま)。
 ・カトマンズのゴミの10%はプラ袋
 ・ネパールのプラ袋使用量300トン/日(?),カトマンズ470万袋/日
 ・プラ袋製造所300~500,プラ袋3万トン製造
 ・バクマバティ川清掃運動でプラ・ゴミ5千トン回収

ネパールのゴミ問題については,このブログでも繰り返し取り上げてきた。自然素材のゴミなら,道ばたや川に捨てても,しばらくすれば腐り自然に戻っていく。ところが,プラスチックはいつまでも分解せず,堆積し,環境を悪化させる。都市部もそうだが,むしろ悲惨なのは郊外。ちょっと人通りのあるところは,プラ・ゴミが散乱し,美観を著しく損ね,衛生状態を悪化させている。

特にショックだったのは,市街でも郊外でも,聖牛たちが生ゴミと混ざったプラ袋をあちこちで食べているのを見たとき。あまりの悲惨,バチ当たりに涙せざるをえなかった。インドが2002年にプラ袋を禁止した理由の一つも,聖牛が食べて病気になったり死んだりしたからだった。この問題については,参照:ゴミと聖牛火に入る聖牛の捨身救世ゴミのネパールゴミと糞尿のポストモダン都市カトマンズゴミまみれのカトマンズ

121130cゴミと糞尿のポストモダン都市カトマンズ

150420a■プラ袋ゴミを食べる聖牛

しかしながら,プラ袋禁止の実行はなかなか難しい。政府は,紙袋,布袋,ジュート袋を使用せよと呼びかけているが,使用勝手とコスト(5~70ルピー)に難がある。これらの袋では,肉や魚,あるいは水分の多い他の物品を包み保存したり運んだりするのは難しい。また,コストの面で商店や買い物客にとって負担が大きいのは,いうまでもない。

さらに,環境に対して,本当によいのかどうかも,議論の余地がある。特に紙は,製造に多くの水やエネルギーを必要とし,耐久性もなく,ゴミとして処分するとき大気を汚染する。

日本でも,たしか20年ほど前,ゴミ袋をポリから紙に替える運動があり,自治体が配布したりもしたが,ほんの1年ほどしか続かず,またもとのポリ袋に戻ってしまった。十分な説明なし。それほど,ポリ袋廃止は難しい。

ネパールの今回のプラ袋禁止は,条件付きであり,また禁止基準もあいまいだ。カトマンズ盆地内は40ミクロン未満禁止だが,それ以外では,30ミクロン未満禁止。こんな条件付き禁止の遵守は,実際上,難しいであろう。

事実,コスト高や不便さもあり,いまのところ,プラ袋禁止はほとんど守られていないようだ。政府は,徐々に取り締まりを強化し,禁止の全面実施を実現する計画のようだが,実際には逆に,いつものように,鳴り物入りで華々しく開始されても,あまり守られず,いつしか元に戻ってしまう可能性の方が大きいのではないだろうか。

しかしながら,プラ袋ゴミをこのまま放置しておいてよいわけではない。ゴミの回収・処理を高度化する一方,プラ袋の原材料そのものを植物系に替えていく努力をすべきだろう。もし植物系プラスチック(バイオプラスチック)が普及すれば,たとえ道ばたや川に捨てられても,環境への害は少なく,いずれ分解され自然に戻っていくであろうからである。

150420Plastic bags banned; A tax on some plastic bags; Partial tax or ban (Wiki: Phase-out of lightweight plastic bags)

* Republica,3,11 & 23 Mar,14,16 & 19 Apr 2015
* Nepali Times, #754, 17-23 Apr 2015 & 23 Mar 2015
* Kathmandu Post, 7 Apr 2015
* New Spotlight, 10 Apr 2015
* China daily, 15 Apr 2015

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/04/21 at 10:07

カテゴリー: 経済, 自然, 行政

Tagged with , , ,

女生徒4人,成績苦に自殺

ネパール極西部,インド国境沿いのダトゥ村で4月13日,女生徒4人が,学年末試験「不合格」(詳細未確認)」を苦に自殺した。6年生(12歳)2人,7年生(13―14歳)2人。

4人の通う中学校で学年末試験(Final Exam)の成績が発表され,70人が「不合格」。その成績発表後,4人は下校し,途中のマハカリ河畔で,ショールで身体を結び合わせ,飛び込み,4人とも死亡した。近くのインド側から住民が目撃しており,遺体もインド側で発見された。家族の叱責を恐れたからだろうといわれている。

 150417■Dattu(Daktu)村(Google)

ネパールの学校は,一般に,丸暗記・ペーパー試験偏重であり,競争は過酷だ。特に初等5年,中等5(3+2)年の終了後に実施される全国統一学力試験(SLC: School Leaving Certificate)は,その成績により進学・就職が左右されるだけに,親族からの期待もあり,生徒にとっては大変な重圧となり,毎年のように生徒が成績を苦に自殺している。

一方,ペーパー試験偏重と対になっているのが,想像を絶する学歴第一主義。エリート教育をウリとする私学が,親族の期待を背に,それこそ託児所から英語で訓練し,有名小学・中学へと進学させる。授業料は高い。

Lincoln School(2011年)
 入学金 $450, 登録料 $3,000
 授業料(年) $11,860(1-5年生),$13,200(6-8年生),$14,700(9-12年生)

British School (1-6年生,2011年)
 登録料 125ポンド,Capital Development(?) 1,575ポンド,預託金 1,035ポンド
 授業料(年) 4,140ポンド [2015年の授業料 1,800-8,520ポンド]  

政府認定 A~Cグレード私学 授業料(月,2015年)
 Cグレード校 Rs.1,342(1-5年生),1,525(6-8年生),2,074(9-10年生)
 Bグレード校 Cグレード校の25%増し
 Aグレード校 Cグレード校の50%増し

ネパールの学校教育には,未就学に加え,ペーパー試験偏重,学歴至上主義の問題もある。このところ後者の深刻さの方がむしろ目立つようにさえなりつつある。

150416a150416■ネパールの現行教育制度/改正案

*Ekantipur,2015-04-13&14; Republica, 2015-04-13 & 2011-03-05

谷川昌幸(C)

 

Written by Tanigawa

2015/04/17 at 14:38

カテゴリー: 教育

Tagged with , ,