ネパール評論

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ネパール人労働者,韓国で自殺

韓国紙『ハンギョレ』が8月15日,社説「移住労働者の死を呼んだ「雇用許可制」、廃止を議論すべき」において,ネパール人労働者ケシャブ・シュレスタさん(27歳)の自殺問題を取り上げ,韓国の「雇用許可制(Employment Permit System)」を厳しく批判している。

韓国は,労働力不足に迫られ1993年,「産業研修生制度」を制定したが,これは劣悪な「研修労働」をはびこらせ,内外から「現代版奴隷制度」と非難されることになった。そのため,これに代わる「雇用許可制」を制定し,2004年8月から施行している。

「雇用許可制」は,政府が送り出し国との間で二国間協定を結び,その国からの労働者の受け入れを入国から出国まで一元的に管理する制度。企業は,政府から雇用許可書を取得し,受け入れ外国人労働者の中から必要人数を雇用する(EPSホームページ参照)。

外国人労働者の待遇
 ・雇用期間は4年10か月。再雇用は,3か月の出国後,さらに4年10か月可能。(EPSホームページでは,雇用期間3年,6か月の出国後,再雇用3年となっている。)
   *合法滞在が連続5年以上となると永住権取得申請が可能。
 ・労働条件は韓国人労働者と同等。労働三権,最低賃金,健康保険,雇用保険,産業災害保険など。
 ・転職は3回まで可能。

韓国の「雇用許可制」は,このように政府が外国人労働者の受け入れにつき全般的な管理責任を持ち,しかも外国人労働者の権利を広く認めるものと思われたので,当初,国際社会の評価はきわめて高かった。国連は「公共行政大賞」を授与したし,ILOや国際移住機構(IMO)も先進的なモデルと称賛した。

EPS HP(ネパール語版あり)

しかしながら,この「雇用許可制」も,韓国人が嫌がる危険で過酷な仕事を低コストで雇用期間限定の外国人労働者にやらせることを目的とする点では,「研修生制度」と本質的には変わりはない。外国人労働者は家族の呼び寄せはできないし,雇用主の同意がなければ,事実上,転職もできない。万が一,解雇され,無登録滞在ともなれば,巨額の保証金を没収されてしまう。そのため,たとえ低賃金や過酷労働であっても一人で耐え忍ぶほかない。外国人労働者の処遇は,事実上,雇用主が握っているからだ。

『ハンギョレ』社説が取り上げたケシャブ・シュレスタさんも,このような「雇用許可制」の犠牲者の一人である。ケシャブさんは,部品製造工場で昼夜12時間・2交代制で働かされたため,不眠症となった。転職は困難だし,一時帰国しての治療も許されない。追い詰められ,結局,彼は自殺してしまった。

同様のネパール人労働者の死が,この数年で数件あるという。転職できずに自殺2人,夜間心臓麻痺で死亡1人,養豚場浄化槽で中毒死2人,工場4階から転落死1人など。

「日経新聞」(2017年3月22日)によれば,韓国の「雇用許可制」による外国人労働者は26万人,日本の外国人技能実習生は21万人。人口比では,韓国の方が倍以上,多いことになる。

外国人労働者を受け入れるための制度としては,韓国の「雇用許可制」の方が優れていると思うが,たとえそうだとしても,自国労働者不足の穴埋めのための安上がりの一時的労働力として外国人労働者を受け入れるなら,それも結局は「使い捨て労働者制度」(アムネスティ)と非難されても仕方ないことになってしまうだろう。

 ■梁山市外国人労働者の家FB

【参照】
*1 ネパール人雇用,公平高給の韓国
*2 韓国,ネパール人労働者5700人受け入れ
*3 韓国語検定に受検者殺到
*4 佐野孝治「韓国の「雇用許可制」と外国人労働者の現況」,『福島大学地域創造』第26巻第1号,2014.9
*5 「[社説]移住労働者の死を呼んだ「雇用許可制」、廃止を議論すべき」,『ハンギョレ』2017.08.15
*6 「「通帳に残った31万円は妻と妹に…」あるネパール移住労働者の死」,『ハンギョレ』 2017.08.10
*7 「外国人の雇用許可制 曲がり角の「韓国モデル」 」,『日本経済新聞』,2017/3/22
*8 「韓国「雇用許可制」が半数 留学生バイト少なく」,『日本経済新聞』2017/3/22
*9 チョン・ヨンソプ(移住労働者運動後援会事務局長)「移住労働者雇用許可制10年、奴隷許可制だった」,『レイバーネット』,2014.08.14

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2017/08/16 at 13:39

カテゴリー: 経済, 人権

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ネパール人労働者激増,福岡県

西日本新聞(3月1日)と毎日新聞(3月2日)の記事によれば,福岡県における外国人労働者は26,323人で,過去最高。国別最多は中国の9,459人(全体の35.9%)。

二番目に多いのはネパール人で,5,353人(全体の20.3%)。前年比70.8%増だというから,すさまじい。

これで,ネパールにおける日本語学校人気復活の理由が,よくわかった。一時,日本語は人気を失い,宣伝看板も次々と韓国語などに書き換えられていた。ところが,数年前から徐々に復活,いまや少なくとも看板では英米語の次くらいの人気だ。

日本は少子高齢化。日本政府の「外国人労働者」積極的受け入れへの政策転換もあり,ネパール人労働者は今後もさらに増加していくだろう。日本において,彼ら,彼女らが,労働者として公正に処遇されることを願ってやまない。

【参照】
ネパール人研修労働者の大量採用:日ネ関係は新時代へ 
ネパール人労働者の対日輸出 
3 teenagers arrested for hurling eggs at Nepalese student 
搾取・虐待される出稼ぎ労働者 
研修生仲介業ガイドラインの改定,ネパール労働省 
外国人研修生の過労死,朝日社説が告発 
韓国語検定に受検者殺到 
外国人研修実習制は奴隷制:国連調査報告 
⇒⇒外国人研修労働
外国人労働者受け入れを問う (岩波ブックレット)
外国人実習生―差別・抑圧・搾取のシステム(学習の友社 2013/01)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/03/04 at 19:29

ネパール人労働者の対日輸出

輸出(export)」とはあまりにも即物的だが,これは私自身の用語ではなく,リパブリカ紙記事「ネパール人労働者対日輸出に向け,政府は努力」(a)のもの。

記事によれば,ネパール政府は,日本を,ネパール人労働者にとって「最も儲かる国(the most lucrative destinations)」の一つに加えた。政府が儲かるというのだから儲かるのだろうが,実際に儲かるのは労働者本人というよりはむしろ,政府や業者。しかし,このような人間の輸出で金儲けをして,本当によいのだろうか? あるいはまた,日本も安価な人間の輸入を必要としており,それで儲けるわけだが,これは国として本当に名誉なことであろうか?

ネパール政府筋によれば,老齢化大国・日本が求めているのは,「半熟練(semi-skilled)労働者」。JITCO(国際研修協力機構)経由で日本企業や事業主に雇用される。外国労働推進局ラグー・カフレ局長は,「日本政府の担当官によれば,ネパール人が日本で働くのに,言葉は障害とはならない。ネパール政府が少し準備さえすれば,この事業の実施は可能である」と語っている。ただし,日本政府からは,研修労働期間満了後,ネパール人労働者は日本に居残るな,ときつく言われており,それを日本政府に保証するのが難題だという(a)。

ネパールの海外出稼ぎは多い。毎日,1700~2000人の青年労働者が,マレーシアや湾岸諸国に向け出国しているという。まさか(!)と思われるかもしれないが,空港に行けば,ウソでも誇張でもないことが,すぐわかる。飛行機はおろか,列車にすら乗ったことのなさそうな青年たちが,長蛇の列をなし,搭乗を待っている。「人材」という言葉がある,たしかに彼ら青年たちは,便利で安上がりな雇用人間「材」であり,また仲介取引で儲けるための人間「財」でもあり,だからこそ,こうして輸出され,輸入されるのだ。

そのネパール「人材」が,本格的に日本に輸入され始める。日本では,安倍政権の円安(日本たたき売り)政策により,中国や東南アジアの労働コストが急上昇した。その結果,まだ相対的に割安のネパール人労働者が,日本の企業や事業者にとって魅力的となってきた。したがってこれから先,ネパール人労働者の輸入が大幅に増加すると見て,まず間違いはあるまい。

しかもその際,必要とされるのは,文句を言わず3K業務を担う単純労働者。「半熟練労働者」とは,要するに,そういうことだ。しかも,日本語能力も事実上不問となるらしい。これからやってくるのは,そうした満足な事前準備・事前学習なしのネパール人労働者なのだ。

彼らを輸入する日本。それは世界に冠たる排外的閉鎖社会であり,人種差別が最も激しい国の一つだ。そこに大量のネパール人単純労働者がやってくれば,いったい何が起こるか? 考えたくもないが,目をふさいでいることは許されないだろう。

150113b(JITCO HP)
150113a(JITCO HP)

[参照]
(a)”Govt Working To Export Nepali Workers To Japan,” Republica,2015-01-12
(b)谷川「研修生仲介業ガイドラインの改定,ネパール労働省
(c)関連記事:JITCO研修労働実習生

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/01/13 at 15:02

カテゴリー: 経済, 人権

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没収地返却拒否,マオイスト反主流派

各紙報道によると,マオイストのタパ書記長は,没収分配土地は十分な補償なしには返却しない,と語った。「土地を耕作者に!」は,人民戦争のスローガンであった。プラチャンダ議長やバブラム首相は,この革命の大義に背いているというのだ。

その一方,バイダ派は,新たに地主土地の没収も始めたらしい。ヒマラヤン(22日)によると,コングレスのカリコット郡代表の土地をバイダ派が没収したが,警察は傍観しているだけだったという。

バイダ派地区代表によると,彼らは,人民が収穫した米の半分を持ち帰った地主から,それを人民に返させただけだという。そうかもしれないが,収穫米の全部を耕作者のものとするのであれば,土地没収と結果的には同じだ。

この説明が事実だとすると,収穫米の半分を年貢として取り上げる地主に対し,マオイストが小作人の側に立ち闘っていることになる。

収穫の半分が年貢! 日本の小地主の一人としては,何ともうらやましい話しだ。わが村では,からり以前からマイナス地代(礼金を払って耕作していただく)となっている。こんなことなら,政府肝いりの「研修労働者制度」によりネパールから農民を招き,わが田畑を耕作していただいた方がはるかにましだ。年貢は10%程度でよい。50%もとられるネパールに比べたら,はるかに有利だ。今度ネパールに行ったら,「日本で農業を!」と大々的に宣伝してみるつもりだ。

いずれにせよ,バイダ派は耕作農民のために,年貢50%を取っているらしいコングレス派地主と闘っている。10数年前と同様,その限りではバイダ派に正義がある。新人民戦争が始まるかもしれない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/11/23 at 12:00

ネパール国際養子、または子供売買?

1.アメリカ政府のネパール養子禁止
ekantipur(18 Feb)が、米国のネパール養子禁止継続を伝えている。記事によれば、米政府は、「2010年2月ハーグ国際養子条約ネパール調査団報告書」に基づき、2010年8月、ネパールからの子供養子を禁止した。正確な実態は不明だが、ネパール女性子供社会福祉省(MoWCSW)によると、2000年以降の欧米諸国へのネパールからの養子は2400人だという。米国への養子手続き中は、現在、80人。これは表に現れた数字であり、実際にははるかに多いと思われる。

国際養子縁組は、養子・養父母とも幸せなケースもむろんたくさんあるだろうが、用心しないと、子供売買(人身売買)となりかねない。特にネパールと欧米のように、目もくらむような経済格差がある国家間では、国際養子は、極論すれば、ペットショップで子犬を品定めし買い求めるのと大差ないことになりかねない。この問題については、以前にも何回か言及した。

(参照) ネパール養子,サンタにもらわれアメリカへ

2.ハーグ国際養子条約
米国政府がネパール養子禁止の根拠にしているのが、次の報告書である。

Hague Conference on Private International Law, “Intercountry Adoption Technical Assistance Programme, Report of Mission to Nepal 23-27 November 2009”, 4 Feb. 2010

これは、ハーグ国際私法会議の「ネパール国際養子調査団報告書」である。ネパールは、2009年4月24日、「ハーグ国際養子条約」に署名しており(批准未完)、これにより実地調査を受けることになったのである。

3.国際養子の原則
「ハーグ国際養子条約」は、養子縁組の条件を明確に定めている。

(1)子供本位の原則:子供本人の利益が第一。
(2)自国養育の原則:国内養育の手だてを尽くすこと。
(3)公認機関の原則:有資格の公認機関による養子仲介。特に金銭の支払いは透明化。

いずれも、もっともな原則であり、もしこれらが守られなければ、いくら善意であろうと、子供売買となる。たとえば、ヒンドゥー教徒の見栄えのよい子供をもらい受け、アメリカで善良なクリスチャンに育て上げ、宣教に利用するといったことが、もし万が一、行われでもしたら、それは「ハーグ国際養子条約」違反である。

4.ネパール国際養子への警告
では、ネパールの子供の国際養子縁組はどうか? ネパール調査団報告によれば、ネパール政府は調査に非協力的であったばかりか、ネパール養子の現状も「ハーグ国際養子条約」の原則からかけ離れたものであった。

(1)国際養子縁組規則の欠陥
ネパールには、「外国人によるネパール子供養子縁組の承認にかかる要件と手続き」(2008)という規則がある。しかし、このネパール国際養子縁組規則は欠陥だらけだという。

1)子供本位の原則なし
2)養子適格の判断基準・適正手続きの規定なし
3)自国養育の原則なし
4)生みの親への支援なし
5)養育専門家の関与なし

これは手厳しい。全面否定だ。

(2)養子適格審査書類の偽造
書類偽造は常態化しているという。恐ろしい。

(3)金銭授受の不透明さ
養子の見返りに金銭がネパール政府や関係機関に支払われているが、その授受が不透明。

養子縁組希望者は、年1万ドル(のち5千ドルに値下げ)の登録料を仲介機関に支払い、ここからカトマンズの孤児養育施設に報酬が支払われる。ぼろ儲けできるので、仲介機関も孤児養育施設も増える一方。子供本人のための他の養育施設は無視されている。とにかく国際養子は儲かるらしい。恐ろしい。

(4)子供養育のための他の政策なし。

(5)子供の選別・紹介
健康で適齢の子供だけが選別され、カトマンズの養育施設に送られ、養子引き受け希望外国人に紹介される。不健康な子供、大きくなりすぎた子供は、地元に放置されている。

つまり、もっとも養育が必要な子供を放置し、見栄えのよい養子縁組適齢の子供だけを選別し、外国人にとって便利なカトマンズの養育施設に送り込む。恐ろしや。

以上は、権威あるハーグ国際私法会議ネパール調査団の報告書の要点である。多少分かりやすく表現し直したが、根も葉もない捏造ではない。

5.アメリカ国務省の警告
この調査団報告書に基づき、アメリカ国務省・大使館が、信じられないほどの厳しい言葉で、ネパール養子縁組に対し、警告を発している。

US Department of State, “Caution about Pursuing Adoption in Nepal,” May 26, 2010

「米国務省は、養子縁組希望者がネパールから養子を取らないよう強く警告する。ネパールの養子制度は信用できず、子供に関する公文書も信用できないからだ。また[米国の]養子仲介機関に対しても、・・・・ネパール国際養子縁組みに関与しないよう強く警告する。現行制度では、反倫理的行為あるいは違法行為があり得るからだ。」

これは厳しい。なぜか? おそらく、アメリカ人がこれまで現実に、そうした反倫理的ないし違法な国際養子縁組をやってきたからだろう。米国務省はこう述べている。

「カトマンズの米大使館は、養子に出された子供が実際には孤児ではなく、実の両親が必死になってその子供を捜しているケースがあったことを把握している。」

このケースの養父母の国籍は明示されていないが、米国務省が言っているのだから、おそらくアメリカ人夫婦であろう。さらにこんな警告さえ出している。

「(ネパール女性子供社会福祉省に養子申請している)両親には、希望国の変更を強く勧告する。」

アメリカはエゲツナイ国であり、ネパール人養子をまるでペットのように得意げにネット公開している養父母さえいる。しかし、だからこそ、アメリカは人権には敏感であり、人権のためには戦争さえ躊躇しない。ネパール国際養子に対するアメリカ政府の怒りは本物である。

6.日本の人権感覚?
では、日本はどうか? ネパールから養子を受け入れてはいないのか? 日本は、現代の奴隷制とさえ呼ばれている外国人研修生をネパールからも受け入れ始めた。人権感覚は、欧米よりも格段に低い。ネパールからの子供輸入はやっていないのか?

実は、日本は、「ハーグ国際養子条約」を批准していない。日本の子供(特に少女出産の子供など)の海外輸出を促進するためか? あるいは国際結婚破綻後の日本人妻の子供を強制送還から守るためか? そこはよく分からないが、ここでの問題は、むしろ日本が加害者になってはいないのか、ということ。

「ハーグ条約ネパール調査団報告書」付属の「口上書(Note Verbale)」はドイツ(代表執筆)、ベルギー、デンマーク、フランス、イタリア、ノルウェー、スイス、イギリスが作成し、オーストラリア、カナダ、アメリカが支持した。

日本は、最大のネパール支援国の一つなのに、カヤの外だ。人権、平和、民主主義が問題となると、いつもこの調子。こんな外交でよいのだろうか?

(参照)

外国人研修生の過労死,朝日社説が告発 ネパール人研修労働者受入 外国人研修制度の欺瞞性:報道ステーション 研修実習生,長崎でも提訴 外国人研修労働の違法性認定:熊本地裁 ネパール研修生仲介業者の大宣伝開始 ネパール人研修労働者の大量採用:日ネ関係は新時代へ 拝啓 マオイスト労相殿: これが研修奴隷だ! 対日ネパール人輸出,あるいは新三角貿易 外国人債務研修・実習制度の実態 信仰の自由なき研修実習生 外国人研修実習制は奴隷制:国連調査報告 韓国語検定に受検者殺到

(C)谷川昌幸

Written by Tanigawa

2011/02/21 at 11:08

研修生仲介業ガイドラインの改定,ネパール労働省

ネパール労働省は12月26日,JITCO(日本国際研修機構)研修労働者仲介業のガイドラインを改訂した。現在の155業者に加え,さらに新規参入を認めるとのこと。

現行ガイドラインでは,研修労働希望者から徴収できる訓練費は1人5万ルピー。かなりの大金だが,それでも仲介業者たちは,足らないからもっとよこせ,20万ルピーにせよ,と要求している。

事前訓練費が20万ルピーにもなれば,あるいは5万ルピーでも裏金が必要なら,ネパール人研修労働者の多くが債務奴隷状態となり,日本に送られることになる可能性が高い。

いま,JITCOからのネパール人研修労働者の求人が,かなりあるらしい。日本の中小企業や農漁業にとって,ネパール人研修労働者の雇用は魅力的なようだ。それらの職種のため,どのような事前訓練が必要で,日本での研修労働により実際にどのような技術が身に付くかは,わたしには皆目見当もつかないが。
【参照】
研修実習生,長崎でも提訴
ネパール研修生仲介業者の大宣伝開始
ネパール人研修労働者の大量採用:日ネ関係は新時代へ
外国人研修労働の違法性認定:熊本地裁
外国人研修制度の欺瞞性:報道ステーション
ネパール人研修労働者受入
ネパール労働者の対日輸出:ネパール労働省
対日ネパール人輸出,あるいは新三角貿易

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/12/30 at 00:39

カテゴリー: 社会, 人権

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外国人研修生の過労死,朝日社説が告発

谷川昌幸(C)
7月14日付朝日社説が「外国人過労死,『実習』という名の『労働』」というタイトルで,外国人研修・技能実習制度を取り上げ,これを「『国際貢献』をうたう制度の欺瞞性」とし,「実態は『労働』なのに研修や実習などとごまかすのは,もう止めるべきだ」と厳しく断罪している。
 
ネパール人研修生は,ネパール・日本研修生協定(2003.12.3)は締結されているものの,これまではあまり多くなかった。ところが,今年に入って具体的な研修プログラムが策定され,ネパール人研修生の大量送り出し・受入に向かって関係者らが動き始めた。これは日ネ友好を願う者にとって憂慮すべき事態である。
 
朝日記事(7/3)によると,外国人研修制度(1981年制定)による来日は2008年度末で8万7千人。現在,日本にいる外国人研修生は,朝日記事(7/14)によると,約20万人。死者は2008年度35人。そのうち過労が原因と思われる脳・心臓疾患が16人となっている。
 
この現代の奴隷制とも呼ばれる外国人研修制度については,内外からの批判が高まり,ついにこの7月2日,労働基準監督署(茨木県鹿嶋)が中国人研修生の死を労災として認定するにいたった。この中国人研修生は月93~109時間の残業をさせられ,タイムカードも偽造され残業代は不払いであった。社長は労基法違反で送検されている。
 
このような外国人差別・人権侵害の欠陥研修生制度のもとでは,ネパール人労働者を受け入れるべきではない。もしこのまま大量受入を始めると,必ず問題が生じ,深刻な紛争となり,長年にわたって築き上げられてきた日ネの友好関係は瓦解してしまうであろう。
 
■関連ブログ記事
 
 ■外国人過労死―「実習」という名の「労働」(朝日新聞社説2010.7.14)
 日本の外国人研修・技能実習制度は、途上国から企業などが人を受け入れ、3年間の職場経験で得た技能を母国で役立ててもらうのが目的、ということになっている。ところが、その制度で来日した中国人男性が死亡したのは「過労死による労災」と労働基準監督署が認定した。
 奇妙な事態があらわにしたのは「国際貢献」をうたう制度の欺瞞(ぎまん)性だ。
 男性(当時31)は2005年12月に来日、茨城県のめっき加工会社で働いていたが、08年6月に亡くなった。直前の3カ月、月93~109時間の残業をしていたという。
 これは氷山の一角とみられる。現在日本にいる研修・実習生は中国などから約20万人。受け入れを支援する国際研修協力機構によると、08年度に35人が死亡した。このうち長時間労働が原因とみられる脳・心臓疾患は16人。09年度の死亡は27人にのぼった。
 「看板」とうらはらに、研修・実習生に、低賃金で過酷な労働を強いたり、残業代を払わなかったりピンハネしたりする事例が後を絶たない。
 さらに08年秋のリーマン・ショック以降は受け入れ先の仕事が激減し、中途解雇が目立ち始めた。新たな受け入れ先も紹介されず、泣く泣く帰国した人は少なくない。
 過労死するほど働かせ、状況が変われば解雇する。こんな「使い捨て」のやり方が許されるはずがない。
 問題点は国も認識はしている。関係法を改正し、来日2年目からだった労働関係法令の適用を1年目からにしたほか、国内の受け入れ機関の責任や罰則を強化した。だが、まだ問題の解決にはほど遠い。
 日本は、外国人労働者の受け入れを専門分野に限っている。これに対し、研修・実習生の受け入れ先は、多くが小規模製造業、水産加工、農業などで、日本人が敬遠する仕事での単純労働力の不足を補ってきた。少子高齢化のなかで、彼らがいなくては成り立たない単純労働の現場があるのだ。
 まず、こうした実態を詳しくつかむことだ。そのうえで、制度を根本的に再検討すべきである。実態は「労働」なのに研修や実習などとごまかすのは、もうやめるべきだ。
 当然、受け入れる限り、労働者を「使い捨て」にしてよいわけがない。日本社会のなかできちんと位置づけるべきだろう。生活、教育、福祉などの基盤整備や安全網を、どのように組み立てるのかなど、課題は多い。
 「実習生」などと言い換えるのは外国人労働者受け入れへの警戒感に配慮したためかも知れない。だが、まやかしの名前で呼び続けても、外国人労働者が日本にいないことにはならない。現実から目をそらし、日本の社会に必要な議論を先送りするだけだろう。

Written by Tanigawa

2010/07/15 at 12:01

カテゴリー: 経済, 人権

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韓国語検定に受検者殺到

谷川昌幸(C)
KOL(6/15)によれば,韓国語検定試験申込書配布が15日から始まり,数千人の若者がこれに殺到した。前回の検定では,合格者6586人のうち6044人に求人があったという。韓国出稼ぎがほぼ確実となれば,語学検定に受験者が殺到するのも当然だ。
 
韓国は,すでに多くの点で日本を追い抜いた。わが大学にも韓国から短期,長期留学の案内がたくさん来る。滞在費無料など,ビックリするような好条件のものも少なくない。数年もすれば,日本の若者たちも韓国の大学,韓国の企業を第一志望とすることを考え始めるにちがいない。いや,それよりも先に,韓国の大学に優先的に求人票をだす日本企業が増加するであろう。
 
日本も,外国人を雇用するのであれば,韓国のような明確な雇用規則(Employment Permit System)に従って雇用すべきだ。日本のような「研修」を名目とした外国人差別・搾取労働は,反日外国人を大量に生み出すばかりか,日本人全体の労働条件をも劣化させるだけだ。
 
語学検定に優秀なネパール青年が殺到する韓国。日本は謙虚に韓国から学ぶべきだ。
 
Job seekers queue up to get forms for the Korean Language test to qualify for employment in South Korea under the Employment Permit System (EPS) at Tripureshwor in Kathmandu on Tuesday. Photo: Bikas Rauniar (KOL,15 Jun)
 
【参照】
 

Written by Tanigawa

2010/06/16 at 09:49

カテゴリー: 社会

ネパール人研修労働者の大量採用:日ネ関係は新時代へ

谷川昌幸(C)
1.研修労働者の大量派遣
ネパール訪問中の国際研修協力機構(JITCO)副理事長ツズキ・ケンスケ氏が2月3日,新聞インタビューに応じ,研修労働者の派遣国を中国からネパール(およびバングラディシュ,モンゴル)に切り替える,と説明した。
 
「ネパール,バングラディシュ,モンゴルは,日本の技術インターン制度にとって最も適切な,優先すべき国である。」
 
ネパール研修労働者は,今年は500人受け入れ,以後,徐々に増やしていく。主な雇用先は農業,食品加工業だという。これまでの受入はわずか6人だったから,これは激増であり,明確な政策転換である。
 
ネパール側仲介業者(人材派遣業者)は172社認められた。仲介業者の義務は――
 ・研修生を,期間満了後,帰国させる
 ・研修生は,18-40歳
 ・保証金を積む(300万ルピー+α)
 ・事前研修,健康診断を受けさせ,保険をかける
これらの義務を果たさなければ,たとえば研修生が他の仕事に移ったり,帰国しなかった場合は,仲介業者は日ネ両当局により処罰される。
 
この案によれば,働き盛りのネパール人を,日本・ネパール両国政府の管理の下,仲介業者の口利きで,大量に日本に送り込む。送り出しまでに,仲介業者はかなりの費用を負担する。本当に大丈夫か? 日ネ政府管理の債務外国人労働者制度になりはしないか?
 
2.IT技術者500人採用
これは研修労働者制度ではないが,昨年秋,ネパール人IT技術者500人が特別ビザを取得し,日本で働くことになった。これまでに何人来日したかは分からないが,これも仲介業者によるものだ。
 
IT技術は専門職であり,月給は50~200万円だという。本当かなぁ? 夢のようだ。まさか,外国人労働者派遣業者の誇大広告ではあるまいな?
 
3.マレーシア,ネパール人10万人雇用
一方,ネパール人労働者は,マレーシアにも大量に出稼ぎに行っている。マレーシアでのネパール人労働者の月給は1万1千ルピー~1万7千ルピー。その中から,月150ドルをネパールの家族に送金している(少し計算が合わないが,新聞にはそう書いてある)。
 
マレーシア政府は,今回10万人のネパール人労働者にビザを出すという。仲介業者によると,マレーシアに出国するまでの事前経費は4~8万ルピー。仲介業者の儲けも大きいはずだ。
 
また,そうなれば,月1500万ドルがネパールに送金されることになり,ネパール政府も大喜びだそうだ。
 
こうアケスケにいわれると,ネパール政府と仲介業者が人材輸出,人民輸出でぼろ儲けをしていると書いても,文句を言われることはあるまい。政府も業者も認めているのだから。
 
日本政府のネパール人研修労働者大量受け入れへの政策転換も,このような文脈のなかで分析・評価されなければならないだろう。
 
4.ネ・日関係の新時代
いずれにせよ,ネパールの新聞報道が本当だとすると,ネパール人労働者の大量来日で,ネ・日関係は激変する。現状では,問題噴出は避けられない。古き良き日ネ友好の時代はまもなく終わるであろう。
 
* "Japan mulls replacing Chinese workers with Nepalis," Republica, Feb4, 2010
* "Nepali IT brains may find jobs in Japan," Republica, Oct12, 2009
* "Gov readies guidelines to send interns to Japan," Republica, Nov2, 2009
* "Malaysia demands 100,000 Nepali workiers, " Republica, Feb5, 2010

Written by Tanigawa

2010/02/05 at 21:35

外国人研修労働の違法性認定:熊本地裁

谷川昌幸(C)
熊本地裁は,1月29日,外国人研修・実習生の中国人女性4人を働かせていた天草市の縫製工場主と仲介機関に対し,過酷な違法労働をさせたとして,慰謝料などの支払いを命令した(朝日,1/30)。
 
判決によれば,「午前3時頃まで就労させ」,「残業代は時給300円」だった。そして,「縫製作業は研修とは名ばかりの労務の提供」であった。
 
研修実習生は,パスポートや預金通帳を取り上げられ,法定労働時間を大幅に上回る過酷な労働をさせられており,「奴隷」(原告)のような状態だったという。熊本地裁判決は,縫製業者だけでなく,仲介機関の「協同組合」の不法行為責任をも認めた。
 
原告は,国際研修協力機構(JITCO)に対しても賠償を要求したが,判決では「協力機構に法的義務はない」とされた。しかし,直接的な法的責任は認められなかったとはいえ,JITCOに政治的・道義的責任があることは明白である。
 
先に述べたように,ネパール側報道によれば,まもなくJITCOは職員をネパールに派遣し,ネパール側と研修労働者派遣について協議するらしい。しかし,いまの外国人研修・実習制度のままだと,問題が起こる危険性が極めて高い。
 
日ネ友好を大切に思うなら,われわれは,外国人研修・実習制度のこうした実態をネパール側に伝えるべきであろう。日本では,テレビや新聞で繰り返し報道され,告発本も何冊も出され,しかも裁判所ですらこの制度による「違法労働」「人格権の侵害」の事例を認めたのだ。知らないのは当事者のネパール人民だけ,というのではあまりに信義誠実に反する。
 

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Written by Tanigawa

2010/01/30 at 21:50

カテゴリー: 経済, 人権

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