ネパール評論

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ネパール人労働者激増,福岡県

西日本新聞(3月1日)と毎日新聞(3月2日)の記事によれば,福岡県における外国人労働者は26,323人で,過去最高。国別最多は中国の9,459人(全体の35.9%)。

二番目に多いのはネパール人で,5,353人(全体の20.3%)。前年比70.8%増だというから,すさまじい。

これで,ネパールにおける日本語学校人気復活の理由が,よくわかった。一時,日本語は人気を失い,宣伝看板も次々と韓国語などに書き換えられていた。ところが,数年前から徐々に復活,いまや少なくとも看板では英米語の次くらいの人気だ。

日本は少子高齢化。日本政府の「外国人労働者」積極的受け入れへの政策転換もあり,ネパール人労働者は今後もさらに増加していくだろう。日本において,彼ら,彼女らが,労働者として公正に処遇されることを願ってやまない。

【参照】
ネパール人研修労働者の大量採用:日ネ関係は新時代へ 
ネパール人労働者の対日輸出 
3 teenagers arrested for hurling eggs at Nepalese student 
搾取・虐待される出稼ぎ労働者 
研修生仲介業ガイドラインの改定,ネパール労働省 
外国人研修生の過労死,朝日社説が告発 
韓国語検定に受検者殺到 
外国人研修実習制は奴隷制:国連調査報告 
⇒⇒外国人研修労働
外国人労働者受け入れを問う (岩波ブックレット)
外国人実習生―差別・抑圧・搾取のシステム(学習の友社 2013/01)

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2016/03/04 at 19:29

ネパール人労働者の対日輸出

輸出(export)」とはあまりにも即物的だが,これは私自身の用語ではなく,リパブリカ紙記事「ネパール人労働者対日輸出に向け,政府は努力」(a)のもの。

記事によれば,ネパール政府は,日本を,ネパール人労働者にとって「最も儲かる国(the most lucrative destinations)」の一つに加えた。政府が儲かるというのだから儲かるのだろうが,実際に儲かるのは労働者本人というよりはむしろ,政府や業者。しかし,このような人間の輸出で金儲けをして,本当によいのだろうか? あるいはまた,日本も安価な人間の輸入を必要としており,それで儲けるわけだが,これは国として本当に名誉なことであろうか?

ネパール政府筋によれば,老齢化大国・日本が求めているのは,「半熟練(semi-skilled)労働者」。JITCO(国際研修協力機構)経由で日本企業や事業主に雇用される。外国労働推進局ラグー・カフレ局長は,「日本政府の担当官によれば,ネパール人が日本で働くのに,言葉は障害とはならない。ネパール政府が少し準備さえすれば,この事業の実施は可能である」と語っている。ただし,日本政府からは,研修労働期間満了後,ネパール人労働者は日本に居残るな,ときつく言われており,それを日本政府に保証するのが難題だという(a)。

ネパールの海外出稼ぎは多い。毎日,1700~2000人の青年労働者が,マレーシアや湾岸諸国に向け出国しているという。まさか(!)と思われるかもしれないが,空港に行けば,ウソでも誇張でもないことが,すぐわかる。飛行機はおろか,列車にすら乗ったことのなさそうな青年たちが,長蛇の列をなし,搭乗を待っている。「人材」という言葉がある,たしかに彼ら青年たちは,便利で安上がりな雇用人間「材」であり,また仲介取引で儲けるための人間「財」でもあり,だからこそ,こうして輸出され,輸入されるのだ。

そのネパール「人材」が,本格的に日本に輸入され始める。日本では,安倍政権の円安(日本たたき売り)政策により,中国や東南アジアの労働コストが急上昇した。その結果,まだ相対的に割安のネパール人労働者が,日本の企業や事業者にとって魅力的となってきた。したがってこれから先,ネパール人労働者の輸入が大幅に増加すると見て,まず間違いはあるまい。

しかもその際,必要とされるのは,文句を言わず3K業務を担う単純労働者。「半熟練労働者」とは,要するに,そういうことだ。しかも,日本語能力も事実上不問となるらしい。これからやってくるのは,そうした満足な事前準備・事前学習なしのネパール人労働者なのだ。

彼らを輸入する日本。それは世界に冠たる排外的閉鎖社会であり,人種差別が最も激しい国の一つだ。そこに大量のネパール人単純労働者がやってくれば,いったい何が起こるか? 考えたくもないが,目をふさいでいることは許されないだろう。

150113b(JITCO HP)
150113a(JITCO HP)

[参照]
(a)”Govt Working To Export Nepali Workers To Japan,” Republica,2015-01-12
(b)谷川「研修生仲介業ガイドラインの改定,ネパール労働省
(c)関連記事:JITCO研修労働実習生

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2015/01/13 at 15:02

カテゴリー: 経済, 人権

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ネパール人雇用,公平高給の韓国

韓国外国人雇用制度(EPS)にもとづく韓国語能力試験が,8月13-14日実施され,4万人が受験した。9月26-27日にも実施され,総計5万5千人が受験の見込み。女性は約10%(ekantipur,2014/8/15)。

韓国EPSは,好評だ。受験料24ドル。学歴不問,39歳以下。選考は公明公正で,コネ不要。非熟練労働で,月給10万ルピー。だから大学新卒や有職者が多数応募する。採用数は,2013年度5234人,2014年度5700人。

韓国は,この外国人雇用問題でも,日本のはるか先を行っている。狡くて卑怯で時代遅れなのが,日本の外国人研修実習制度。こんな公告をこの記事の横に出さざるを得ないのは,そのためではないか?

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谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/08/16 at 14:04

カテゴリー: 経済

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3 teenagers arrested for hurling eggs at Nepalese student

TOSU, Saga — Three teenagers have been arrested for allegedly hurling eggs at a Nepalese student studying at a Japanese-language school here earlier this month, police said.

The three youths….stand accused of assault. Officials of the Japanese-language school say 19 of its students from Nepal, Vietnam and Sri Lanka, have been targeted in similar attacks since December last year….(May 27,2014, Mainichi Japan)

これは,5月20日夜のネパール人留学生襲撃事件を伝える英字新聞だ。生々しい。

佐賀県鳥栖市では,昨年末頃から外国人留学生に生卵を投げつけたり,マヨネーズをかけたり,さらにはエアガンで撃ったりする事件が,続発していた。被害学生は,ネパール人,ベトナム人,スリランカ人ら19人で,なかには国籍を確認してから襲撃した事件もあったというから,悪質だ。

鳥栖署は5月26日,ネパール人留学生襲撃容疑で少年3人(18-19歳)を逮捕し,6月13日,佐賀地裁に送致した。

このアジア人留学生襲撃事件の背後には,嫌韓,嫌中などアジア人蔑視,アジア人差別の風潮の蔓延があると見てよいであろう。自分もアジア人のくせに,日本人は別格,「名誉白人」らしい。

この風潮を暗黙裏に応援しているのが「外国人実習(研修)制度」。外国人を安上がりの使い捨て労働者として酷使し,しかも国内に居着かれると困るので数年で国外に追い返す。

日本政府が公正な扱いをしようとしないので,当然,いわゆる「不法就労」が増える。そこで,たとえば,このような警告が出されることになる。

     外国人の不正就労防止にご協力ください [佐賀県警]
不法就労活動とは 在留資格を持って在留する外国人が資格外活動許可を得ることなく行う活動です。・・・・
140720c

むろん佐賀県警は,規則に則り善意で作成し掲示しているのだろうが,情緒的排外主義の高まりの中で,このような広報が愛国青少年の愛国心を刺激することは避けられまい。

また,鳥栖市の方も,どこまで本気で外国人差別問題と取り組むつもりか疑わしい。ネパール人襲撃事件を受け作成され配布されたとされるチラシが,これ。(⇒原本pdf)

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【参照】毎日5月27日;朝日デジタル6月11日;朝日7月19日;読売6月14日;西日本新聞5月28日,6月17日;佐賀新聞7月15日

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2014/07/20 at 18:55

ネパール人研修労働者の大量採用:日ネ関係は新時代へ

谷川昌幸(C)
1.研修労働者の大量派遣
ネパール訪問中の国際研修協力機構(JITCO)副理事長ツズキ・ケンスケ氏が2月3日,新聞インタビューに応じ,研修労働者の派遣国を中国からネパール(およびバングラディシュ,モンゴル)に切り替える,と説明した。
 
「ネパール,バングラディシュ,モンゴルは,日本の技術インターン制度にとって最も適切な,優先すべき国である。」
 
ネパール研修労働者は,今年は500人受け入れ,以後,徐々に増やしていく。主な雇用先は農業,食品加工業だという。これまでの受入はわずか6人だったから,これは激増であり,明確な政策転換である。
 
ネパール側仲介業者(人材派遣業者)は172社認められた。仲介業者の義務は――
 ・研修生を,期間満了後,帰国させる
 ・研修生は,18-40歳
 ・保証金を積む(300万ルピー+α)
 ・事前研修,健康診断を受けさせ,保険をかける
これらの義務を果たさなければ,たとえば研修生が他の仕事に移ったり,帰国しなかった場合は,仲介業者は日ネ両当局により処罰される。
 
この案によれば,働き盛りのネパール人を,日本・ネパール両国政府の管理の下,仲介業者の口利きで,大量に日本に送り込む。送り出しまでに,仲介業者はかなりの費用を負担する。本当に大丈夫か? 日ネ政府管理の債務外国人労働者制度になりはしないか?
 
2.IT技術者500人採用
これは研修労働者制度ではないが,昨年秋,ネパール人IT技術者500人が特別ビザを取得し,日本で働くことになった。これまでに何人来日したかは分からないが,これも仲介業者によるものだ。
 
IT技術は専門職であり,月給は50~200万円だという。本当かなぁ? 夢のようだ。まさか,外国人労働者派遣業者の誇大広告ではあるまいな?
 
3.マレーシア,ネパール人10万人雇用
一方,ネパール人労働者は,マレーシアにも大量に出稼ぎに行っている。マレーシアでのネパール人労働者の月給は1万1千ルピー~1万7千ルピー。その中から,月150ドルをネパールの家族に送金している(少し計算が合わないが,新聞にはそう書いてある)。
 
マレーシア政府は,今回10万人のネパール人労働者にビザを出すという。仲介業者によると,マレーシアに出国するまでの事前経費は4~8万ルピー。仲介業者の儲けも大きいはずだ。
 
また,そうなれば,月1500万ドルがネパールに送金されることになり,ネパール政府も大喜びだそうだ。
 
こうアケスケにいわれると,ネパール政府と仲介業者が人材輸出,人民輸出でぼろ儲けをしていると書いても,文句を言われることはあるまい。政府も業者も認めているのだから。
 
日本政府のネパール人研修労働者大量受け入れへの政策転換も,このような文脈のなかで分析・評価されなければならないだろう。
 
4.ネ・日関係の新時代
いずれにせよ,ネパールの新聞報道が本当だとすると,ネパール人労働者の大量来日で,ネ・日関係は激変する。現状では,問題噴出は避けられない。古き良き日ネ友好の時代はまもなく終わるであろう。
 
* "Japan mulls replacing Chinese workers with Nepalis," Republica, Feb4, 2010
* "Nepali IT brains may find jobs in Japan," Republica, Oct12, 2009
* "Gov readies guidelines to send interns to Japan," Republica, Nov2, 2009
* "Malaysia demands 100,000 Nepali workiers, " Republica, Feb5, 2010

Written by Tanigawa

2010/02/05 at 21:35

外国人研修労働の違法性認定:熊本地裁

谷川昌幸(C)
熊本地裁は,1月29日,外国人研修・実習生の中国人女性4人を働かせていた天草市の縫製工場主と仲介機関に対し,過酷な違法労働をさせたとして,慰謝料などの支払いを命令した(朝日,1/30)。
 
判決によれば,「午前3時頃まで就労させ」,「残業代は時給300円」だった。そして,「縫製作業は研修とは名ばかりの労務の提供」であった。
 
研修実習生は,パスポートや預金通帳を取り上げられ,法定労働時間を大幅に上回る過酷な労働をさせられており,「奴隷」(原告)のような状態だったという。熊本地裁判決は,縫製業者だけでなく,仲介機関の「協同組合」の不法行為責任をも認めた。
 
原告は,国際研修協力機構(JITCO)に対しても賠償を要求したが,判決では「協力機構に法的義務はない」とされた。しかし,直接的な法的責任は認められなかったとはいえ,JITCOに政治的・道義的責任があることは明白である。
 
先に述べたように,ネパール側報道によれば,まもなくJITCOは職員をネパールに派遣し,ネパール側と研修労働者派遣について協議するらしい。しかし,いまの外国人研修・実習制度のままだと,問題が起こる危険性が極めて高い。
 
日ネ友好を大切に思うなら,われわれは,外国人研修・実習制度のこうした実態をネパール側に伝えるべきであろう。日本では,テレビや新聞で繰り返し報道され,告発本も何冊も出され,しかも裁判所ですらこの制度による「違法労働」「人格権の侵害」の事例を認めたのだ。知らないのは当事者のネパール人民だけ,というのではあまりに信義誠実に反する。
 

2010/01/20 ネパール人研修労働者受入  
対日ネパール人輸出,あるいは新三角貿易  
拝啓 マオイスト労相殿: これが研修奴隷だ! 
共産革命と対日「人民」輸出

Written by Tanigawa

2010/01/30 at 21:50

カテゴリー: 経済, 人権

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ネパール人研修労働者受入

谷川昌幸(C)
ネパール労働省は1月初旬,国際研修協力機構(JITCO)プログラムにより渡日するネパール人研修労働者のための事前教育プログラムを決定した。詳細は,2月初旬のJITCO職員訪ネの際,決定するという。ネ日研修生協定は,2003年12月3日に調印されている。
 
 ●事前研修(ネパール)
  日本語=読み書き:60日(90時間) ,会話:60日(90時間),専門用語:6時間/3日
  日本文化=30時間(10日),日本の食事=30時間(10日)
  受講料=7000ルピー,研修生斡旋=172業者
 ●来日後の研修
  職業研修=1ヶ月
 
外国人研修労働制度は,以前は「現代の奴隷制」と呼ばれるほど劣悪な労働条件であった。その後,批判され改善されたと聞くが,実態はどうであろうか?
 
研修生,雇用主夫婦を殺害し自殺(2009.11.12)
熊本県で,中国人研修生が研修先の農家の夫婦を殺し自殺。農繁期には朝5時から深夜まで働かされていたという。
 
外国人研修生の死者33人(2008)
交通事故4,漁船1,仕事中6,自殺1,病気15,その他6。研修生は20-30代であり,過労が主な原因と見られている。
 
研修生の労働条件(日弁連)
平均時給:300-500円,残業時間(月):80時間以上。100時間以上も少なくない。
 
韓国では研修労働制,廃止
宣元錫氏(朝日1/9)によれば,韓国では日本をモデルにした外国人研修制度は問題が多いためすでに廃止し,正規労働者として受け入れる雇用許可制にした。1月18日,韓国とネパールは,この労働者受入協定を2年更新した。韓国は,制度的にも多くの点で日本を追い越し,日本は変化に対応できない極東の後進国として取り残されつつある。
 
 ――いま日本企業がネパールに目を向け始めたのは,おそらく中国や東南アジアの人件費が上がり始めたからであろう。劣悪な労働条件に耐えられる勤勉な労働者を捜していたら,ネパールがあったというわけだ。これは,研修労働者ではないが,1月12日,長崎の漁船が転覆し,乗組員10人が行方不明になった。そのうち6人は中国人労働者。これを見ても,日本の工場,農漁業などの労働現場で外国人労働者がいかに必要とされているかがよく分かる。
 
しかし,ネパール人研修労働者を受け入れるのであれば,制度を整え,日本人労働者と同等の権利をきちんと保障すべきだ。「研修」名目で低賃金を正当化するような姑息な利己主義でネパール人研修生を大量に受入始めたら,必ず問題が生じる。日ネの友好関係も瞬く間に破壊されてしまうだろう。
 
(参照)

Written by Tanigawa

2010/01/20 at 09:19

ネパール労働者の対日輸出:ネパール労働省

谷川昌幸(C) 
ネパール労働省が,ネパール人労働者の対日輸出(export)促進を働きかけている。以前批判したように,これは「現代版奴隷労働」とさえいわれており,民主共和国はこのような売国的政策をとるべきではない。
 
Bishal Bhattarai,"Trainee export to Japan,"(ekantipur,Jul.15)によれば,ネパール労働省が日本国際研修協力機構(JITCO)と協定を締結したのが2003年12月3日。ところが,これまで日本に「輸出」できたネパール人はわずか63人。労働省のバッタライ氏は,これに不満を持ち,ネパール労働者をもっと日本に輸出せよと主張されるのだ。
 
いまの労働大臣はコングレスのMohammad Aftab Alam 氏。しかし,労働者「輸出」政策は,マオイスト政権の時も強力に推進されており,コングレスの「反人民性」のゆえではない。ネパール政府は一貫して労働者を商品とみなし,「輸出」促進を図ってきた。 ネパール労働省が日本の研修労働の実態を知らないはずがない。よく知っていながら,自国人民を研修生として日本に「輸出」するというのだ。
 
このところ,外国人研修生に限らず,日本の非正規労働は常軌を逸している。大学生向けの職場体験制度(インターンシップ)も,夏休み2ヶ月,びっちり働かされるようなものが少なくない。安上がりの補助労働だ。大学はますます企業の下請け機関となりつつある。就職には何の役にも立たない教育,世間から隔離された修道院のような大学こそ,これからは目指されるべきだ。
 
ネパールの労働者も日本の学生も,多少苦しくとも,資本に拝跪し「現代版奴隷労働」に甘んずるようなことは拒否すべきだろう。
 

Written by Tanigawa

2009/07/18 at 10:49

カテゴリー: 経済, 人権

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拝啓 マオイスト労相殿: これが研修奴隷だ!

谷川昌幸(C)

マオイスト労相殿は,失業対策として「人間資源」の対日輸出に鋭意取り組んでおられるようですが,日本労働市場はネパール人民の輸出先としてはあまり有利ではありません。全部とはいいませんが,外国人研修生は「現代の奴隷」と批判されています。今日(2/4)の朝日新聞記事「中国人研修生『18時間労働』」は,その実態を次のように暴露しています。

  研修生:中国人女性6人
  勤務先:大分の縫製会社
  勤務時間:午前8時~翌日午前3時
         休憩:昼食15分,夕食30分
  月給:3万円余(下記諸費差引後)
      寮費・光熱費:2万円
      管理費:3万円
      強制貯金:4万円
  中国側仲介保証金:60万円

すべてが事実かどうか分かりませんが,取材し記事にしているので,大筋ではこの通りだと思います。そして,このような研修労働が,他にも少なくないといわれています。

研修生たちによれば,「中国人は馬鹿だ」「強制帰国させる」と脅されていたそうです。若い女性たちが,60万円あまりで日本に売られ,半強制労働させられていたのです。月給3万円(強制貯金を入れても7万円)で,18時間労働! 「現代の奴隷制」といわざるをえません。

マオイスト労相殿,マオイスト首相殿,ネパールの人民同志をこのような「現代の奴隷」として日本に輸出してよいものでしょうか?

ネパールとの古き良き関係を維持発展させるため,「ネパール人間資源の対日輸出」政策の撤回を伏してお願いする次第です。

2009/01/30 共産革命と対日「人民」輸出
2009/01/19 対日ネパール人輸出,あるいは新三角貿易

Written by Tanigawa

2009/02/04 at 10:43

対日ネパール人輸出,あるいは新三角貿易

  谷川昌幸(C)

こんなことを書くと,ネパール人や親ネ邦人にボコボコに叩かれるだろうが,玉砕を恐れていては,新帝国主義戦争は戦えない。いざ出撃!

1.輸出商品としての「ネパール人」
ネパールの最大の輸出商品が労働者であることは,いまや周知の事実。近代化のおかげで,ネパールの人々は労働力を商品化され,価格をつけられ,国内市場はないから,海外市場へと輸出されている。

もちろん都合良く労働力だけを切り取って売るわけにはいかないから,生身の人間を家族や故郷から切り離し,その身体ごと外国に売り渡す。極論すれば,これは「現代の奴隷貿易」だ。

2.労働者輸出で,贅沢品輸入
この労働者輸出により得た外貨で,何を買うか? もちろん特権階級の贅沢品だ。輸出された労働者たちの汗と涙がガソリン・灯油や電気・車になり,特権階級の生活を豊かにする。

あるいは,不動産投資となり,都市バブルをふくらませる。外国に売り飛ばされた同胞の汗と涙が,金に化け,彼らとは無縁の高級マンション,高級分譲地,高級ブランド店となっている。

中東バブルは,石油価格暴落で,はじけた。ネパール・バブルは,輸出向け労働者の枯渇か価格低下で破裂する。これは必然。

3.労働者の対日輸出
それなのに,信じられないかもしれないが,いまネパール人民を「資源」扱いし,「輸出」を推進しようとしているのは,人民の友,マオイスト政府自身だ。

1月17日,レクラジ・バッタ労働大臣(マオイスト)が,ある会合(詳細不明)に出席し,ネパール人労働者の対日輸出の促進を訴えた。カンチプル(1/17)によれば,バッタ大臣はこういっている。

「研修労働者を日本に送る準備はほぼできた。」
「人間資源(human resources)の対日輸出(export)に必要な政令は数日以内に出す。」

これはマオイスト大臣が言っているのだ。コングレスのボスではない。

このネパール人労働者の輸出・輸入に関わっているのが「ネパール商工会議所(FNCCI)」と「日本国際研修協力機構(JITCO)」。いずれの組織のこともよく知らないし,善意は疑わないが,この労働者貿易が要注意であることは間違いない。

非居住ネパール人会のカピル・タパ副会長もこういっている。

「日本は,ネパール人労働者の輸入(import)を待ちこがれている。」

4.研修労働の実態
外国人研修生制度の実態は,専門外なのでよく分からないが,少なくとも新聞報道では,「研修」は名ばかりで,体のよい最低賃金労働,なかにはパスポートを取り上げられ,タコ部屋のような所に監禁され,半強制的に働かされるところもあるそうだ。「現代の奴隷制」という批判もある。

外国人研修制度は,もともと日本の高度な技術を働きながら学ぶという趣旨。その趣旨通り運用しているところもあるにはあろうが,資本主義の倫理と論理からして,そんなことがどこでも実行されているとはとうてい思えない。

いま無慈悲に解雇されているのは,外国人労働者や非正規労働者。外国人研修生は,その彼らよりも下,使い捨て自由の半強制労働,資本家にとっては最も好都合な最下層労働者である。

5.ネパール・日本・中国の新三角貿易
ネパールが労働者の対日輸出(「新奴隷貿易」)を本格化させれば,ここに新しい三角貿易が生まれてくる。

90119

ネパールは日本に「人間資源」を輸出し,その代金で中国から中・低度工業製品(衣料・雑貨・家電など)を輸入する。中国は,その代金で日本から高度工業製品や資本を輸入する。日本はその代金で,ネパールから労働者(人間資源)を輸入する。

こうして,美しい新帝国主義の聖なる三角形ができあがる

Written by Tanigawa

2009/01/19 at 23:21