ネパール評論

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チベット青年,ボダナートで焼身抗議

ボダナートで中国政府への焼身抗議をはかった青年(ツンドゥプ・ドプチェンさん?)が,2月13日夜,搬送先の病院で死亡した。ネパールでの焼身抗議死は初めて。

青年は,ボダナートの入口で灯油を浴び,火をつけ,対中国抗議スローガンを叫びながら50mほど走り,ストゥーパの近くで倒れ込んだ。病院に搬送されたが,助からなかった。警察によれば,青年はインドから来たらしい。

ネットには,誰が撮ったのか,炎に包まれ倒れ込むまでの写真が何枚も掲載されている。目を背けたくなるが,青年は世界に向け,炎に包まれ抗議する自分を見よと訴えている。辛くとも,目を背けてはならないだろう。

ネパールでの自由チベット運動については,中国がネパール政府に圧力をかけ,弾圧させてきた。これは,マオイストが地上に現れ,選挙で大勝し,最大の政治勢力になってからの方が,むしろ激しい。

マオイストは,人民戦争中は中国政府と敵対関係にあったが,停戦和平後は,中国に急接近した。いまや,中国政府に最も近いのはマオイストだといっても言い過ぎではあるまい。

ネパールにおける自由チベット運動弾圧については,以下参照。

ネパールにおける自由チベット運動弾圧
 2012年1月13日:バブラムバタライ首相(マオイスト),自由チベット運動弾圧
 2011年10月31日:亡命チベット人100人以上を逮捕
 2008年7月:自由チベット運動弾圧
 2008年3-4月:チベット系住民への性的虐待
 * その他,多数。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2013/02/14 at 19:11

カテゴリー: 外交, 民族, 中国

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「白亜のゴンパ」と花のイチャング

1.「白亜のゴンパ」
11月24日、カトマンズ西方の丘の上にある「白亜のゴンパ(Druk Amitabha Mountain)」に行った。街からもよく見える巨大なゴンパであり、いったいどのようなものなのか気になっていた。

キルティプールからタクシーで環状道路のカランキ交差点の先、スワヤンブーの手前を左折、少し登ったところを右折し、イチャングに行く道にはいる。狭いでこぼこの田舎道を少し行き左折すると、「白亜のゴンパ」への登山道路となる

この道路は完全舗装。いったん停車したら再発進できないのではと思うほどの急勾配。タクシーはおんぼろマルチスズキだったが、その急峻な登山道をエンストすることなく登り切った。スズキは、本当にエライ! どのような悪路でも平気でこなす。頑丈でメンテナンスが楽なのだろう。インド・ネパール向きだ。

2.城のようなゴンパ
丘の上に出ると、そこには巨大な「白亜のゴンパ」が、周囲を威圧するかのように、そびえ立っていた。チベット仏教のゴンパで、ダライ・ラマ系。

それは、まるで山城。あちこちに出城らしきものもあり、ネパール国軍が攻めてきても、容易に落城はしないだろう。中国人民解放軍であっても、手こずるに違いない。それほどすごいものだ。

  ■「白亜のゴンパ」と参拝者

3.レジャーランドとしてのゴンパ
「白亜のゴンパ」は、土曜日には一般開放されており、ものすごい数の善男善女が、ヒンドゥー教徒もマオイストも参詣に訪れていた。

外には巨大大仏と極彩色壁画。本堂内も極彩色で、ご本尊様はピカピカ電飾で飾られている。ワビサビの日本人の趣味には合わないが、これがたいへんな人気、ヒンドゥー教徒やマオイストも畏敬の念を禁じ得ない様子だった。

改宗は、憲法により強要を禁止されているが、極彩色諸仏の偉大を見せて、自発的改宗に導くのはおそらく違憲ではあるまい。

しかしながら、「白亜のゴンパ」は、罰当たり不信心者には、まるで「仏教レジャーランド」のようにみえる。老人ばかりの日本の寺とは異なり、無数の青年男女がバイクや徒歩で訪れ、デジカメで記念写真を撮りあっている。ここは、いまやネパール最大のパワースポットのひとつといってもよいだろう。「白亜のゴンパ」は、特に青年男女に、現世御利益を恵んでくださっているようだ。

■「白亜のゴンパ」入口

 
■大仏/極彩色諸仏

4.花の丘
「白亜のゴンパ」はともかくとして、この周辺は、驚くほど美しい。花いっぱいなのだ。

いたるところマリゴールドだらけ。おそらく出荷用に栽培しているのだろうが、そんな生やさしい数量ではない。とにかく、野山の雑草のごとく、マリゴールドが咲き乱れている。さらに感動的なのが、ラルパテ。ラルパテの赤い花々に埋もれてしまったかのような民家さえあった。

先日行ったコカナやブンガマティも美しかったが、花については、この「白亜のゴンパ」周辺の方がはるかにきれいである。

 ■ラルパテに囲まれた民家

 
■マリゴールド・麦・名称不詳の花々/マリゴールドの中の家

5.チャンを出されて
「白亜のゴンパ」を一通り見学したあと、丘の上をさらに西方まで散策した。民家が点々とあり、いかにもネパール的。十分楽しめる。一巡りして「白亜のゴンパ」にもどり、無数の善男善女とともに徒歩で急坂を下った。

途中で、珍しく柿の木のある茶店があったので、立ち寄り、一休みした。店のおやじさんにお茶(チャイ)を頼んだら、ヤカン半分くらいの容器に入った地酒チャンを持ってこられて、大あわて。周囲の善男善女の失笑を買ったが、日本人珍客だから仕方ないといった様子で、牛乳入り紅茶に換えてくれた。ポゴタ(?)2個とあわせ、25ルピー(23円)。

そこからさらに、躓いたら谷底まで転げ落ちそうな急坂を下り、タクシーで登った舗装道路に出た。

 
■柿・マリゴールド・ラルパテ/雛番の犬

6.イチャング
イチャングからの道と合流するところまで戻ると、イチャング方面からものすごい数の女性たちが歩いてくる。何事かと警官に尋ねると、今日はイチャング・ナラヤンの祭礼だという。

すでに日が落ちかけていたが、せっかくなので、歩いてイチャング・ナラヤンまで行き、お参りの様子を見物してきた。仏様のあと、ヒンドゥーの神々にもお参りしたので、御利益は何倍にもなって返ってくるのではと期待している。

イチャングからは、来た道を引き返し、別の谷への道と合流し道が少し広くなったところでタクシーをひろい、キルティプールに戻った。

この日はほぼ一日中、歩き回ったことになるが、空気も花もきれいで、村にも風情があり、全く疲れなかった。

 
■イチャング・ナラヤン/花のイチャング

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/11/26 at 10:34

米軍「部隊」ムスタン派遣と「蓮の葉」作戦

1.米軍「部隊」ムスタン派遣の報道
にわかには信じがたい話だが,報道によると,9月中旬,米軍「部隊」がカトマンズに入り,ムスタン方面のチベット国境沿いに展開,活動を始めたという。またゴルカでは,「蓮の葉」作戦開始。事実なら,ネパールは大国介入の泥沼紛争に引き込まれる恐れがある。情報源は,スジャータ・コイララ(コングレス党幹部)とA.シュリバスタバ。

▼ “US Soldiers sneak into Mustang in civilian dress, Sujata reveals,” Telegraph Nepal,n.d.(accessed 2012-10-01).

▼Arun Shrivastava, “US Soldiers in Nepal on China’s Tibet Border, On a Reconnaissance ‘Humanitarian Mission’,” Global Research, September 22, 2012.

以下,詳細なシュリバスタバ記事を中心に,紹介する。ただし,同記事の裏付けはまだとれていない。

2.米軍「人道ミッション」部隊
9月第3週初,65人の米兵がカトマンズに入り,カスキ郡ディクルポカリに移動した。その後,「部隊」はムスタン郡やマナン郡のチベット国境沿いを移動し活動している。65人といえば相当数であり,「部隊」といってよいだろう。(Dhikurpokhari:カスキ郡の千数百戸(約7千人)の町。プラチャンダUCPN-M議長出身地。)

米軍「部隊」の派遣目的は,地域住民の保健衛生の調査であり,「人道ミッション」ということになっている。しかし,もしそうなら,軍人ではなく,文民の保健医療専門家のチームを派遣すべきであろう。

3.先遣偵察隊か?
シュリバスタバによれば「人道ミッション」は偽装であり,米軍「部隊」は,チベット国境沿いの敏感地帯で,地形や補給路,そして住民の動向などを調査することが本当の目的のようである。先遣偵察隊というわけだ。

ネパールのチベット国境沿い付近では,以前から,CIA要員が諜報活動をしているといわれてきた。何人かは,退役後,諜報活動をしたと自ら語っている。

このところ,僧侶の焼身抗議などでチベット情勢が緊張してきている。また,国境付近は,ジャナジャーティ(少数諸民族)運動によりネパール政府の監視も行き届かなくなっている。米軍「部隊」派遣は,そうした状況を捉えての偵察作戦といってよいであろう。

4.欧米の途上国援助の目的
シュリバスタバによれば,もともと欧米の諸機関やNGOなどの途上国援助は,欧米にとって不都合な指導者たちを排除し,混乱を引き起こし,欧米に好都合な体制を作ることを暗黙の目的にしている。

ネパールについても,ジャナジャーティに関するあらゆるデータが,それらの援助機関やNGOあるいはキリスト教会などにより収集され,すべてCIAなどに引き渡されているという。米国は,そうした援助やデータを利用して混乱を引き起こし,介入し,ネパールに地歩を築こうとしているという。

5.「蓮の葉」作戦
この目的のため,米国はゴルカに「蓮の葉」を設置したか,あるいはこれから設置する。はっきりしないが,おそらく,すでに設置されているのだろう。「蓮の葉(lily pad)」とは何か?

▼ David Vine,”Expanding US Empire of Bases: The Lily-Pad Strategy: How the Pentagon Is Quietly Transforming Its Overseas Base Empire and Creating a Dangerous New Way of War,” Frontlines of Revolutionary Struggle, July 15, 2012.

バインのこの記事によれば,「Lily Pad」とは,蛙が獲物を狙って潜んでいる池の水面上にポツリポツリと浮かぶ「蓮の葉」のような,小さな軍事基地のことである。武器・弾薬を備え,ごく限られたスタッフのみが関与する秘密基地。

米軍は,冷戦型大規模基地を縮小し,この21世紀型「蓮の葉」基地の世界ネットワークを拡大している。2000年以降,すでに50カ所に設置されたという。

「蓮の葉」は,秘密裏に展開され,柔軟かつ迅速に事態に対応できる。しかも,単に軍事行動だけでなく,地域の政治や経済に介入し,親米の環境をつくり出していく。

バインによると,このような「蓮の葉」作戦は,特に途上国にとって危険だという。第一に,小規模秘密基地というが,いったん設置されると,ビヒモス(怪獣)となる。第二に,民主化といいつつも,実際には地域の専制や腐敗を助長する。第三に,紛争の平和的解決への意欲をそぎ,世界を軍事化する。

たしかに,バインのいうように,「蓮の葉」作戦は危険である。アメリカが途上国に「蓮の葉」をつくれば,当然,ロシアや中国もそれぞれの「蓮の葉」をつくる。こんなことになれば,草の根からの世界の軍事化は避けられない。

しかも,グローバル化時代の「新しい戦争」に対応するため,「蓮の葉」は地域の政治や経済にも介入する。軍民分離の大原則は否定され,軍民協力による地域の軍事化が止めどもなく進行する。

ネパールにとって,この米軍「蓮の葉」作戦が極めて危険なのは,もし米軍が「蓮の葉」をネパールのあちこちに浮かせるなら,当然,中国も同じことをして対抗するからである。

米国「部隊」が,ムスタン郡やマナン郡で「人道ミッション」として活動し,またゴルカ郡に「蓮の葉」を浮かべたのは,いうまでもなく中国・チベットの動向をにらんでのことである。

そして,もし米国がチベット国境沿いで地域のジャナジャーティ(少数諸民族)に働きかけ親米化しようとするなら,当然,中国も彼らに働きかけ反米・親中としようとするであろう。国内のジャナジャーティ紛争のはずが,そこに米中が介入すると,紛争を激化させ,ついには自分たちでは解決できないほど事態を悪化させ泥沼化させる恐れが多分にある。

ところが,バブラム・バタライ首相は,米国「部隊」の入国・移動・活動を黙認し,また国軍高官を同行させたりしているという。シュリバスタバはこう糾弾する。

「現在の指導者たちや民族連邦主義NGOが安定した民主的政府を実現してくれると期待し黙って待っているのは,ネパール国家国民の自殺だ。欧米諸機関を信用し援助を期待するのは,それ以上に愚かなことだ。」

6.ネパール政治の混乱と外国介入
それにしても,これはいったい全体,どういうことなのであろうか? 偶然の一致というには,できすぎている――

■米国が「蓮の葉」秘密基地を設置したゴルカは,バブラム・バタライ首相の地元。
■米軍「部隊」のカトマンズからの移動先のディクルポカリは,プラチャンダUCPN-M議長の出身地。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/10/03 at 10:42

中国首相の訪ネと自由チベット弾圧

さすが中国,外交がうまい。たった5時間足らずの立ち寄り訪ネで,1つの中国確認,自由チベット弾圧,経済権益拡大を一挙に実現してしまう。

1.サプライズ訪ネ
温家宝首相の訪ネは,昨年12月20日に予定されていたが,ネパール側要人らが「オレがオレが」と訪ネ実現の手柄を吹聴し,情報じゃじゃ漏れだったため,怒った中国が突然キャンセルし,ネパール側を震え上がらせた。

これに対し,今日の訪ネは完全なサプライズ。午前11時着(1時間遅延で間もなく到着予定),バブラム首相,ヤダブ大統領,そしてもちろんプラチャンダ議長とも会ってやり,午後5時には,本来の訪問先,湾岸諸国に向かって飛び去る。

イラン危機の最中,湾岸諸国訪問がいかに重要かはいうまでもない。そこに行くついでに,ちょっとカトマンズに立ち寄り,ネパールに中国の偉大を見せつけてやるわけだ。

神にせよ仏にせよ,偉大なものは隠されてある。温家宝首相の訪ネも,今回は完全なマル秘。政府高官も,政党やメディアも,何も知らされていなかった。

政府御用紙ライジングネパールによれば,9日の時点でも,NK.シュレスタ副首相兼外相は,議会委員会で中国首相の訪ネ実現に努力する,と答えている。隠していたのではなく,本当に知らなかったのだろう。

2.自由チベット弾圧
一方,偉大な中国首相の来訪を仰ぐネパールは,最大限の貢ぎ物を差し出す。

第一に,自由チベットの弾圧。1月13日,インドからネパールに戻ったチベット人207人(女性81人)が警察に拘束された。詳細は不明だが,いずれにせよ,これが温首相歓迎のための貢ぎ物であることは明らかである。また,自由チベット弾圧と同時に,ネパール政府が「1つの中国」を繰り返し唱え,中国政府に忠誠を誓っていることはいうまでもない。

暫定憲法に民族自治,包摂参加を高らかに書き込んでいることなど,全く意に介さない。憲法も人権もそっちのけ,自由チベットを弾圧し,「1つの中国」の呪文を唱えなければ,偉大な中国首相にはおいでいただけないのだ。

 拘束されたチベット人(Republica2012-1-14)

3.経済権益の提供
またネパールは,温首相の訪ネを歓迎し,中国の要求する経済権益も,大幅に容認するだろう。
  ・ポカラ空港を国際空港に拡張・・・・1.5億ドル(事業総額,以下同様)
  ・リング道路改良・・・・5千5百万ドル
  ・大規模ダム・水力発電所(3カ所)・・・・37億ドル
  ・パンチカール経済特区設置
  ・ルンビニ開発

どこまで信用できるか分からないが,事業総額80億ドル以上ともいわれている。目もくらむ大金だ。いまや,インフラ整備も教育文化支援も,中国にシフトしつつある。巧みな外交と,有り余る資金の中国。

ネパールは,国際会議においてイザとなれば必ず中国(またはインド)に1票を入れる。決して日本には入れない。これまでもそうだったし,これからはこれまで以上に日本は軽視され無視される。ネパールの友人は中国(またはインド)であって日本ではない。もはや,日本に出番はない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2012/01/14 at 16:05

カテゴリー: 経済, 外交, 中国

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青蔵鉄道のルンビニ延伸計画

青蔵鉄道をチベット・ラサからカトマンズ経由でルンビニまで延伸する計画については,ネパール国内よりもむしろインドで大きく報道されてきた。それを受けてであろうが(直接参照は29日付レパブリカ記事),朝日新聞がニューデリー武石特派員の関連記事を図解入りでかなり大きく掲載している。

青蔵鉄道ルンビニ延伸計画は,いうまでもなくプラチャンダ議長(ルンビニ開発国家指導委員会委員長)のルンビニ開発計画の一環であり,もしこれが実現すれば,ネパールは北方経由の物流網を確保し,インドの軛からの脱却に向け大きく一歩前進する。

中国にとっても,開発余地の大きいタライや,その先のインド巨大市場への橋頭堡となり,経済的,政治的,軍事的メリットは大きい。

ルンビニ開発は,ネパールと中国の双方にとって利益があり,しかもどうやらアメリカ,韓国,そして国連すらもそれぞれの思惑で加担しているようなので,実現の可能性は十分にある。

これに危機感を募らせるのが,インド。今後のネパール情勢にとっては,人民解放軍解体と没収土地返却で体制内化へ雪崩を打つマオイストよりも,むしろインドの出方の方が要注意であろう。インドはどう動くのか?

 朝日新聞2011.11.30

【参照】
2011/10/19 ルンビニ開発とプラチャンダと中印米権力政治
2011/10/26 プラチャンダのルンビニ開発とバブラムのBIPPA,または中印覇権競争
2011/10/27 プラチャンダのルンビニ開発,国連をも取り込む
2011/11/04 ルンビニを国際平和都市に,プラチャンダの野望
2011/11/05 ルンビニ開発に2百万ドル拠出,韓国
2011/11/06 ルンビニ開発と国連事務総長選挙
2011/11/09 ルンビニ開発も新国際空港も韓国
2011/11/11 国連に赤旗,プラチャンダの勝利

谷川昌幸(C)

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2011/11/30 at 10:07

ルンビニ開発と国連事務総長選挙

共産中国の新華社記事(ネット版)は,即物的,唯物論的で面白い。ルンビニ開発問題でも,アッサリこう書いている。

1.国連工業開発機関・パラス・プラチャンダ
新華社記事(7月18日)によれば,「アジア太平洋交流協力基金(APECF,執行共同議長Xiao Wunan)」は6月,ルンビニ開発に関する覚え書きをネパール政府との間で締結した(当時の首相はUMLのカナル)。

つぎにAPECFは7月15日,ルンビニ30億ドル開発計画に関する覚え書きを「国連工業開発機関(UNIDO,中国投資・技術移転促進事務所所長Hu Yuondong)」との間で締結した。

このAPECFの共同議長団は「興味深い背景と利害の混合」を見せている。スチーブン・C・ロックフェラーJr,J・ローゼン(米ユダヤ協会議長),L・H・チャーニー(不動産業,米大統領元顧問),そして「UCPN-M指導者にしてネパール元首相のプラチャンダ,およびプラチャンダにより打倒された国王を父とするネパール元皇太子のパラス」である。

APECFのXiao Wunan執行共同議長はこう語っている。「大乗仏教,小乗仏教,そしてチベット仏教諸派を始め,世界中の仏教高僧たちが,このルンビニ開発への大きな期待を表明した。」

これは実に即物的。非常に興味深い記事だ。

2.国連事務総長選挙とルンビニ開発
また別の新華社記事(6月13日)によれば,ネパールはパン・ギムン国連事務総長の再選を強く支持した(再選決定は6月21日)。ネパール首相外交顧問のミラン・トゥラダールはこう述べた(当時の首相はUMLのカナル)。

「パン氏は個人的に,特に平和プロセスに関して,ネパールときわめて親密であった。12項目合意からUNMIN設立にいたるまで,彼はネパール平和プロセスに深く関与された。彼の再選を願っている。・・・・パン氏はまた,仏陀生誕地ルンビニ開発にも特別の関心を示し,指導力を発揮してこられた。彼は,ネパール首相に,2012年にルンビニを訪問すると語った。」

これまた即物的な記事。この記事によれば,少なくともネパール側は,パン事務総長再選支持の見返りとして,ルンビニ開発への国連支援を求め,事務総長側からも肯定的な反応を得たという感触をもっているのである。

Written by Tanigawa

2011/11/06 at 11:43

中国「軍事援助」と自由チベット・デモ逮捕

中国人民解放軍は10月31日,ネパール国軍に6億ルピーの援助を約束した。ただし,ビレンドラ軍病院向け。軍事援助のようで,そうでもない。さすが中国,芸が細かい。

その翌日の11月1日,ネパール警察がパタンで自由チベットを叫ぶ亡命チベット人100人以上(nepalnews.comでは35人以上)を逮捕,拘留した。

軍事援助と自由チベット弾圧――絶妙のタイミングだ。お見事というほかない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/11/01 at 19:44

カテゴリー: 中国, 人権

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中国版「チベット今昔」の面白さ

ネットの「チベット今昔」をちらっと見たら,これがなかなか面白い。

「新チベット」スライドと「旧チベット」スライドが上下に配され,右から左に流れていく。50年前の悲惨と現在の幸福が一目瞭然だ。旧チベットの特権階級は打倒され,被搾取農民・労働者は解放された。

このHPには,同趣旨の記事や写真が満載されており,確かにそうだ,その通り,と大いに納得させられた。よくできたホームページだ。

在ネ中国大使館のHPが入口。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/10/28 at 10:33

カテゴリー: 外交, 中国, 人権

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中国系NGOのルンビニ開発計画

中国が、政治,経済,文化など、あらゆる分野でネパール攻勢を強めている。

1.中国政府系チベット書店
以前,タメルに出来た中国政府系とおぼしき中国書店について書いたことがある。
 ▼中国書店 2010.09.03

妙だと思ったのは私だけではないらしく,ネットにこんな記事が出ていた。
 ▼Warring Tibetan Bookstores: A Glimpse of Nepal Between Great Powers

記事によると,この中国系チベット書店は,「自由チベット運動系チベット書店に対抗するため」,つまりダライ・ラマ=チベット自由運動「支持派を切り崩すため」,宣伝としてつくられた。

この記事の著者は,3回書店に行ってみたが,店はお役所的で,「店内には1人も旅行者はいなかった」。中国筋は本や宗教のことなどどうでもよく,本当の目的は,改革開放後中国の宣伝だというのである。

この記事は,1年前の私の記事と実によく似ている。書店があまりにもユニークなので,誰でも同じような印象を持つことになるのだろう。

2.ルンビニ開発計画
もう一つ,中国援助のルンビニ大開発計画も注目される。
 ▼In the land of the Buddha
 ▼Lumbini as geopolitical ping pong

ルンビニ開発には,丹下健三氏が関わったユネスコ計画がある。1980年完成予定だったそうだが,例のごとく完成はしていないらしい。そこに,香港のAsia Pacific Exchange Cooperation Foundation(APECF)が登場,巨額の投資話が持ち上がった。

そしてまた,ここでもやはり政治家が絡む。それも何と,われらが英雄プラチャンダ議長とそのご令息プラカシ氏だというから,あまりにも出来すぎだ。面白すぎて,今後どうなるか,ハラハラ・ドキドキ。

しかし,穏やかならぬのが,お隣のインド。ルンビニは国境のすぐそば,石を投げれば届きそうな距離だ。そこに中国が,しかもマオイストの親玉父子と組んで,大開発計画を始める。ネ印国境が,中国=マオイスト連合軍で真っ赤に染まってしまう。

中国は,これまでにもタライ方面に孔子学院などを設立し,文化攻勢をかけてきた。その目玉が,このAPECFルンビニ大開発計画になるのではないか?

心配なのは,こうした中国の政治,経済,文化にわたる大攻勢に,インド(とアメリカ)がどう対抗するかだ。ネパール政治は,つねに中印関係と連動している。首相選挙との関連にも要注意だ。
 ▼中国のネパール進出とアメリカ国益
 ▼中国のネパール介入拡大

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2011/08/19 at 20:07

中国がネパール警察買収?: ウィキリークス

ウィキリークス情報を各紙が伝えている。その一つによると,「中国脱出を図るチベット人たちを引き渡してくれる[警察]幹部に中国政府が金銭的報酬を提供している」という。

さもありなん,と多くの人が思っているとはいえ,これは在印米大使館(ニューデリー)発国務省宛公文書であり,重さがちがう。

対抗措置として,米印政府もネパール官憲に様々な恩恵をふんだんに与えている,といった某国公文書がリークされるかもしれない。

谷川昌幸(C)

Written by Tanigawa

2010/12/20 at 12:44

カテゴリー: 外交, 中国

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